木下

読書めも✍️『ワークショップー住民主体のまちづくりへの方法論』

今回はこちらの本を読んでの読書メモです。

本書では「ワークショップとは集団の力を発揮する方法」と書いてあり、一貫して「集団から創造性が生まれることを信じる、それを発揮する方法としてワークショップがある」という主張が根底にあるという印象を受けました。

まちづくりの領域を中心とした「ワークショップ」について記述されているので、ワークショップ全般・包括的な理論というよりは、まちづくり領域に特化しているが、ワークショップの学術的系譜・国内外での実践の歴史なども書かれているので、アカデミックかつ体系的な理解に役立つ(と思う)

ワークショップの特徴は以下5つ

(安斎(弊社代表)がワークショップに関する講座で話している「ワークショップの特徴」と比較して見て、もちろん被っているところはあるけれど、ちょっとした違いが個人的に面白いなとおもったのでメモ)

・身体性
・協働性
・創造性
・共有性
・過程・プロセス重視

ワークショップの系譜

ワークショップには2つの心理学からの流れがある。それがクルト・レヴィンヤコブ・L・モレノ

クルト・レヴィンはアクション・リサーチという方法論を提唱し、また、小集団の研究からグループ・ダイナミックス研究を展開。
レヴィンらが、集団の人間関係のトレーニングとしてセンシティビティ・トレーニングやTグループを展開していった流れは、のちにグループ経験・リーダー研修へと応用される。

一方、ヤコブ・L・モレノは、心理学・社会劇・ソシオメトリーの創始者。モレノの心理劇も、演劇や心理学関係のみならず、実験的な芸術表現と融合したワークショップやコミュニティ改善に広がりを見せていった。

両者の展開について、それぞれ社会の問題に結びつけて開かれていったところが共通している。

ワークショップは手段

巻末のほうでも「ワークショップをすることで合意形成が図られる」と認識されることの危惧や、ワークショップは(まちづくりへの)参画の道具・方法であるため「ワークショップ=(まちづくりへの)参加」という錯覚が禁物であることの念押しがされている。
加えて、ワークショップ前後の設計のポイントについても触れられており、「ワークショップはあくまで手段である」というのが本書の主張である。

-------

ということで、「市民から意見をもらった」「ステイクホルダーの合意が図られた」といったアリバイ作りのための市民参加型ワークショップではなく、創造的で民主的な方法として、まちづくりの場面でもワークショップの活用が求められることを再確認。

また、初めは「ワークショップ」に特化された本かと思って手に取って読み始めたけれど、まちづくりのプロセスやまちづくりへの考え方にも触れられており、まちづくりに携わる人全員に必見の本では…と思いました。

移動中でざっくり読んでしまったので、またじっくり読みます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?