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孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム 第1回シンポジウムで考えたこと

 大変光栄なことに、2022年6月21日に、孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム 第1回シンポジウムのパネリストとして呼んでいただきました。せっかく出させていただくのなら、少しでもお役に立てればと、「孤独・孤立」について考えてみました。ここで改めて、考えを整理したいと思います。

孤立・孤独とは何でしょう?

 孤独と孤立は、似ているようでだいぶ違うと思います。
内閣官房孤独・孤立対策担当室の調査にもあるように、孤独というのは、その人の心情であり極めて主観的な「感情」であり、孤立というのは、社会からの繋がりが絶たれている「状況」です。
 気をつけなければならないのは、孤独=孤立でも、孤独→孤立でも、孤独←孤立でもないということです。孤独を感じている人が必ずしも孤立しているわけでは無いですし、孤独を感じると必ず孤立に陥るとか、逆に孤立すると必ず孤独を感じるわけでもないと、私は思います。
 孤独を愛する、という言葉があるように、人との関わりが苦手で、孤独でいる方が楽だったり、好きだったりする人も少なく無いでしょう。
孤独・孤立という言葉が、「孤独=悪」となってしまう、友達がいない人はダメ、恋人がいない人はダメ、家族が仲良くない人はダメ、みたいなことになるのは、非常に恐ろしいことだと思います。


「1年生になったら、友達100人できるかな?」という歌の罪

 当たり前ですが、1年生になっても友達100人できません。大体、6〜7歳の子どもは「友だち」の概念さえわからないであろうに、あたかも小学校に入学すれば、たくさん友達を作るのが当たり前だというような幻想を植え付けるこの歌に苦しんでいる親子は多いのです。
 保育園や幼稚園から環境がガラッと変わって、毎日あたふたなんとかやり終えて家に帰ってくると、お母さんから「お友達はできた?」と毎日プレッシャーをかけられる子どもの身になってみてください。
 「ぼっち飯」などという嫌な現象も、この歌が植え付る「友達がたくさんいるのが普通」という脅迫概念から生み出されたのでは無いでしょうか?一緒にお弁当を食べる友達がいない高校生が、友達がいないことを周囲に知られないために、トイレの個室でお弁当を食べるなどというおかしなことが起こっています。子どもたちを追い詰めるのは、「孤独=悪」という間違った概念です。

 私が運営するキッズドアでは、毎年経済的に厳しい家庭の中学3年生の高校受験指導をして高校に進学させます。無料学習会の修了式などで、子どもたちに話す機会があると私が必ずいうことがあります。

「高校に入っても友達なんて簡単にできないからね。友達がいなくたって全然問題ない。お弁当一人で食べて堂々と過ごしていればいい。あまり気の合わない人と無理をして友達になる必要はない。まずは自分が一人でもいられることが大事。本当の友達はそんなに簡単にできないよ。」

 こういうことを伝えないと、「友達ができないから」と簡単に高校を中退してしまうのです。過度の「孤独」バッシングは避けなければなりません。人は誰でも、孤独な時もそうでない時もあるのだと思います。孤独は極めて主観的な「感情」であり、そこに政治が土足で入り込むことは非常に危険だと感じます。
孤独でいる自由を奪わないで欲しい。それによってますます追い詰められる人が必ずいます。

なぜ、今、孤独・孤立なのか?

 そんな極めて個人的な心情が、なぜ今、政治で取り上げられているのか?私なりに考えてみたのが、こちらの図です。

 孤独・孤立という状態になると、自殺やメンタル疾患の増加、引きこもりや孤独死、非婚や少子化、地域の活力低下など、さまざまな社会的損失が生じます。この社会の困りごとを解決するためには、孤独・孤立を解消しなければなりません。
 では、どうすれば、孤独・孤立を解消することができるのでしょうか?


孤独・孤立に陥る要因

キッズドアが行った食料支援に寄せられたハガキ

 この葉書を見てください。
 このお母さんは、死にたいほどの孤独・孤立を抱えています。その要因は何かというと、「子どもに満足にご飯を食べさせられない」ほど困窮しているということです。チャットや電話で相談にのるよりも、食品を送ってあげる、お米や肉や魚を送ってあげる、毎日必要なものが買える現金を給付することが、何よりの孤独・孤立対策です。


 「孤立・孤独を無くそう!」スローガンにならないように

 「早寝早起き朝ごはん」誰でも聞いたことがあると思います。文部科学省が「早寝早起き朝ごはん」全国協議会を作り活動しています。
 子どもの成長には、早寝早起き朝ごはんが望ましいので、家庭でしっかりやってくださいね、という親へのメッセージです。確かに早寝早起き朝ごはんは大切ですが、やむを得ずそれができない家庭をどうするか?ということへの対策はあまりありません。
 親が夜遅くまで働かなければならない家庭はどうすればいいのでしょう?子どもが起きる前に仕事に出かけなければならないひとり親はどうすればいいのでしょう?
 昨年の夏休み、私たちが困窮子育て家庭に朝ごはんを食べているかどうかを聞いたアンケートに、

「本当は食べさせたいけれど、お金がないので、中学生と小学生の子どもが昼間では我慢できると言ってくれているので朝ごはんは食べさせていない」

という回答がありました。「子どものために早寝早起き朝ごはんをしましょう」というスローガンは、やむを得ずそれができない親を追い詰めてしまうのです。
 今、「20代独身男性の4割がデートの経験がない」などという調査結果をメディアは流していますが、これは単に面白おかしく扱っているだけで何の解決にもなりません。もし、デートをして欲しいなら、デートができるくらいの収入は若者に稼がせてあげる、最低賃金をあげようとか、正規化を進めようとか、そういう個人の困りごとを解決する方向に議論を展開した方が生産的です。

 孤独・孤立プラットフォームが、今、孤独・孤立に陥り、そこから抜け出したいと思っている人々への支援を行なって、社会的損失を軽減していくとともに、ぜひ、孤立・孤独に陥る要因を紐解き、それの改善を関係省庁と連携して進めていくことで、個人の困りごとが解決されて、望まない孤立・孤独に陥る人をできるだけ減らしていく、そんな組織になることを心から願います。


<夏休み緊急食料支援!食べ物が足りません!>クラウドファンディングも実施中です(~2022年8月末まで)
困窮で孤独孤立を抱えるお母さんのためにぜひご協力ださい。