「地毛の黒染め強要指導」裁判の判決に失望と恐れを感じます




「地毛の黒染め強要指導」裁判の判決に失望と恐れを感じます


昨日2021年2月16日に、「地毛の黒染め強要指導」裁判の判決が出ました。

これは2017年10月に大阪府立高校に通う女子生徒が起こした裁判です。もともと地毛が黒いのに、学校から黒染めを強要され、健康被害や精神席苦痛を受けたとして府に約220万円の賠償を求めました。
当時の報道などから整理すると
①地毛は茶色いと生徒も保護者も何度も主張しているのに、「地毛は黒」と学校側が判断
②それを元に黒染めを強要。執拗な黒染め指導で頭皮が荒れるなどの健康被害が出たこともあり、生徒は黒染めをやめる。
③それに対して学校側は2年次の16年9月には黒染めが不十分だとして授業への出席を禁じ、翌10月の修学旅行への参加も認められず、現在(2017年10月時点)も不登校が続いているという。
④学校側は、生徒が不登校になったあと、教室から机を撤去したり座席表や名簿から名前を消すなど、あたかも退学したような扱いを行う

みなさん、どう思われますか?
「あり得ない!!」と私は思いました。なんで地毛が茶色なのに黒く染めさせられなきゃいけないのか?これは人権侵害以外の何物でもないと思いました。


この裁判について、3年4ヶ月の時を経て、昨日判決が出ましたが、私はこの判決にどうしても納得がいきません。

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大阪の府立高校の女子生徒が髪を黒く染めるよう強く指導されたことが原因で不登校になったと訴えた裁判で大阪地方裁判所は「髪の染色や脱色を禁止した校則は学校の裁量の範囲内で、頭髪指導も違法とはいえない」とする判断を示しました。ただ、生徒が不登校になったあとの学校の対応には問題があったとして33万円の賠償を大阪府に命じました。
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この裁判で重要な点は、「髪の染色や脱色を禁止した校則」の是非ではありません。「頭髪指導」の違法性でもありません。地毛が茶色いのに、校則をたてに黒染めを強要する「体罰」があったかどうかの事実認定を行って欲しかったと思います。
なぜなら、この子だけでなく、日本全国で同じように地毛の黒染め強要に苦しむ子どもがたくさんいるからです。

多くの皆さんには信じられないことかもしれませんが、今でも地毛が茶色いのに黒染め指導を強要している学校はあります。染めたくもないのに、黒染めを定期的に行わないと学校に行けない生徒がいるのです。

この判決で私が最も不可解な点は
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教師が髪の根元を見てもともと黒色だと認識していたことなどから「違法とはいえない」と結論づけ、生徒側の主張を退けました。
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生徒の地毛は茶色なのです。そして、地毛は茶色だと生徒本人も保護者もなんども学校に訴えているのです。しかし
「教師が髪の根元を見てもともと黒色だと認識していたことなどから「違法とは言えない」・・・」

なんで教師の話を丸呑みして、生徒側の主張を退けるのでしょう?

自分が親が、地毛は茶色ですよって、主張しているのに、赤の他人に髪の根元見て「あなたの地毛は黒。茶色じゃない」と判断される。それを根拠に黒染めを強要される。これのどこに合法性があるのですか?

「私が黒だと判断したのだから、あなたの地毛は黒なのです。だから茶色い毛が生えてくるのはおかしいから黒く染めなさい。黒く染めないのなら、授業に出ることは許しません。修学旅行にも連れて行きません。頭皮が荒れる?そんなの知りません。黒くしなさい」
そんな無茶苦茶なことがありますか?これのどこが合法なのでしょう?
物理的にも精神的にも立派な体罰だし、傷害罪です。

例えば、これが学校ではなく、家庭で起こったら虐待です。
親が自分の子どもに対して
「あなたの地毛は茶色じゃない。黒なのよ。」
と言って、嫌がる子どもに黒染めを強要し続けたら、頭皮がボロボロになっても黒染めをさせ続けたら虐待です。間違いなく。通報されます。
なんで、学校では、教師では許されるのでしょう?


だいたい「黒だと認識していた」って、おかしいでしょう?
だって、地毛なんだから、黒く染めたところは黒くても、生えてくるのは茶色です。
「じゃあ、ちょっと1ヶ月後に様子を見ましょうか?」
って、1ヶ月待って、何色の髪が生えてくるのか見れば、地毛が茶色いかどうかなんて、簡単にわかります。
一体、いつどういう状況で、髪の根元を見て黒色だと認識したのかわかりませんが、それをたてに、「地毛は黒だと信じきっていたので、黒染め指導を強要したことは許される」って、そんなバカな、と思います。

この学校側のあまりに浅はかな間違いに対して、なんら釘をさすことはなく「合法」というのは、絶対におかしいと思います。
裁判的には、勝訴の形ですが、内容としては大事な争点についてことごとく生徒側の訴えが退けられており、生徒の代理人同様、納得できません。


この裁判がきっかけで、校則に対する社会の意識が高まり、理不尽な校則が改善される動きが出てきました。その意味で、この裁判は非常に影響の大きい裁判です。

最も重要な、「生徒の地毛が茶色なのに学校側が黒染めを強要した」という生徒を苦しめた学校側の過失についてはなんら触れることなく、「髪の染色や脱色を禁止した校則は学校の裁量の範囲内」という一般常識にすり替えて争点をずらし、学校側の過失を認めない判決もまた、大きな影響を及ぼすのではないでしょうか?

この判決を見て、日本全国の学校でまた、地毛が茶色いのに黒染めを強要される生徒が続出するのではないかということを非常に危惧します。

NHKの記事の中にある
”大阪府北部にある府立高校は40年以上前から校則に髪を染めることを禁止する規定を設けていません。
髪を明るい色にしている生徒もいますが、これまで大きな問題は起きていないということです。
校長は生徒指導の方針について「学習環境に影響を及ぼさないようにという指導だけで、頭髪については生徒が自主的に判断している。ルールが厳しいと、守らなければ叱られるという恐怖心から生徒は受け身になってしまう。ルールそのものが何を意図しているのか考えさせるのも高校教育に必要だ」と話しています。”

全ての高校がこのように変わっていくことを心から望んでいます。

文部科学省によると、昨年度、校則といった「学校の決まりなどをめぐる問題」が何らかの要因となり、不登校となった小中学生や高校生はあわせて5500人を超えているそうです。
この判決は、5500人を減らす力にはならないことが非常に残念です。

規則やルールに縛り付ける学校で子どもたちが失っているものの大きさに向き合わなければ、取り返しのつかないことになると強く感じます。


●髪の染色や脱色禁止の校則は学校の裁量範囲内 大阪地裁判決


●「黒染め強要で不登校」生まれつき茶髪の女子高生が提訴