[知ってて損しないイギリス英語表現 #9] 『上司との交渉メール編』
今回は私が最近上司とやり取りをした交渉メールについて書きたい。
上司との交渉問題は「コロナを受けて業務量の増加」だった。
日本の会社を辞める2年前のあの時の状況(過重労働)に良く似た懸念を抱いた。(その記事は下)
ので、この「危険信号(健康を害するレベル)」を察知し、業務のことで上司に交渉することを決めた。
交渉の際絶対忘れてはいけないこと
「今後もその上司と仕事をしていく」
「喧嘩をしかけるわけではない」
この先も、その上司と仕事を続けていくわけだから、日本の「労働文化」では、なかなか上司に物申すことは難しい環境ではある。しかし、上司に何も意見を言わず、理不尽な要求にも答えていると、何も改善されないで状況は悪化し、自分自身が壊れる最悪の結末を迎える危険性もある。実際、私自身33歳の頃、長年勤めていた会社を過重労働のため退職する決断した経験がある。
今イギリスで働いているが、日本の労働文化より「意見を言う」のは多少オープンであるが、そうは言っても、人間の感情は何人であろうが同じ。だから、イギリスの職場でも、上司に物申す時、やはりそんな単純なものではない。
交渉する際、絶対にしてはいけないこと
では、「上司との人間関係を悪くさせない」で、「ただの文句言いの面倒な部下だと上司に思われない」ようにするために、私がまず気をつけていることは、
「頭が感情に支配されている時は絶対交渉しない」
怒りなどの負の感情が頭の中にある時は、その感情に引っ張られて、「交渉メール」のつもりで書いたのに、読み手には「喧嘩を売るメール」となる危険がある。
どんなに正論を書こうとも、無意識に一語一語にその怒りの感情を入魂し、攻撃的なトーンのメールと読み手は感じる可能性がある。そう読んだ上司の返事が「喧嘩を買ったメール」になったら、はい試合終了、上司との人間関係終わり。
だから、間をおかずすぐに反応し交渉するのではなく、一旦時間を置いて頭を冷やし、心が落ち着くまで待った方がいい。
メールで交渉の術
感情も落ち着き平常心に戻った。さぁどうやってこの状況が変わるよう上司を納得させるか?
ここで、交渉メールを書く際注意したい点が幾つかある。
1.自分の意見を押し付ける言い方をしない
2.自分の意見をはっきり述べる。
3.強すぎる言い方をしない
4.曖昧な言い方をしない
5.相手がその交渉メールを読んで、個人攻撃と捕らえない書き方をする
ポイントを5つ挙げたが、1と2そして3と4は表裏一体だと思うだろう。その通りで、天秤がどちらに偏ってもいけない。この二つの「中庸」となる良い塩梅を探し、その微妙な具合で「交渉」を表現をしていく。
The way of negotiation should be not too strong or aggressive, but being assertive in professional and diplomatic manners.
この言葉は、私のこれまでの経験で学び、「意見を言ったり、異議を申し立てするときに」常に念頭においている姿勢だ。
上司に送った「交渉メール」
それでは、上司との交渉が成功した私の実際送ったメールの一部を紹介したい。
Dear Jenny,
I am emailing you to tell you about my concerns regarding a possible increase in workload due to the move to the new assessment, on top of the increase from the move to online teaching. (イントロで何のメールなのか明確にする。日本語流の長々としてた挨拶等は不要)
As of the close of OMC 20/21, the number of students registered with the modules was 95 in total. I felt I was just able to cope with this but feel with the additional workload from the assessment I would struggle to cope, particularly if we have further students sign up in September.(事実と懸念の関係を客観的に具体的に説明)
Therefore, I would like to suggest these ideas to make things more manageable:
1)
2)(提案した二つの具体的な内容は割愛)
やんわりと解決策も提案:ちゃんと考えています、文句だけ言っているわけではありませんとアピール)
Hope these ideas might become potential solutions. (やんわりと私の提案検討してくださいと最後にも訴える)
Many thanks,
Yumiko
このメールのポイントは
1.数字を入れて事実を述べ、その事実から将来起こるであろう問題を提起
2.ただ問題提起するだけではなく、自分なりに解決策も考えていることを提示
3.最後の文章で"Hope you will consider these ideas."と上司に指図するのではなく、these ideas might become potential solutions. と主語をthese ideas にした。この戦略は、「上司に指図する」といった「押し付け感」を避けることにある。実際の私の心のうちは「この解決策を受け入れて!」なのだが。。。言い方次第で印象がかわる。
この私のメールを受けての上司の返事メールの一部:
Dear Yumiko,
Thank you for your email and for your careful consideration to the challenges to moving online. (your careful considerationの表現から上司は「押し付け感」を感じなかったことが伺える)
I hope the above is reassuring and that once we have had the meeting today with coordinators the nature of the new assessment will not be so daunting.
Please let me know if there is anything I can do for you.
Best wishes
Jenny
私の懸念は上司の耳にちゃんと届き、ある会議でも提案してくれたようだ。Please let me know if there is anything I can do for you. の最後の言葉で、サポートされているのがわかる。
以上の述べてきた交渉術を念頭に入れて、今まで交渉した案件は全て成功した。
交渉がいつも不成功に終わるメールの書き方
一方、いつも交渉が成功しないやり方も反面教師として紹介する。
1.メールがとても長く、簡潔ではない
2.交渉する問題に対して感情的な言葉を使う
3.法律に訴え「脅し」とも捕らえられる表現がある
4.「友好的に解決しようとするメール」ではなく「戦争を勃発させるようなメール」の書き方
番外編だが、ちなみに、無断欠席が多い学生にメールを送る際も、簡潔で押し付け感(非難感がない)がないことを気をつけている。
I am emailing you, because I have not seen you in class. I am wondering if you are all right.
ポイントは、I have not seen you in class. にある。「私は貴方をクラスでしばらく見てないけど大丈夫?」
「You have been absent from class (貴方はクラスを欠席している)」と非難するような表現は絶対にしない。
すると、すぐ学生から、「心配して下さってありがとうございます。連絡もしないで授業を休んですみません」と素直な謝罪の返事が必ず来るのだ。
「ものは言い方次第」
この記事が、誰かの役にたてるなら幸いだ。