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楽焼

土曜日にうちの町内は地蔵盆をしましたが、昨日日曜日に近所で地蔵盆をしているところが多かったです。お地蔵さんが敷地にあるお家やお地蔵さんの隣のおうちがお世話しているところが多く、特にこの辺りはお地蔵さんの数が多い場所だと思います。うちの町内でも4つもあり、昔は地蔵盆というと忙しく4か所まわったものでした。今はそのうち1っヶ所でしかお経をあげていません。子供も少なくなったからだと思います。

すぐ近所に楽焼をされているお店があります。地蔵盆で提灯をあげられていました。窯元を開いたのが約百八十年前、江戸時代末期 文政年間に始まった京都祇園八坂神社鳥居前茶屋 『短冊楼』で、当窯二代となる七兵衛は、楽焼の研鑽に努め、『楽焼の短冊家』として名を馳せると共に、その後現代まで続く礎を築かれました。大正七年秋、東郷平八郎元帥ご入洛の際、御来遊され、『和楽』なる直筆の号を拝領され、この栄誉をたいそう喜ばれ屋号を『和楽』と改名されたそうです。

楽焼は、茶道のお道具として、桃山時代後期に誕生した焼物です。茶人である、千利休自らが提唱した侘茶の精神を具現化するために、瓦職人である長次郎を指導し楽焼は誕生しました。聚楽第を建造する際に土中から掘り出された土(聚楽土)を使って焼いた「聚楽焼」(じゅらくやき)が始まりとされています。茶道のお道具として発展してきた、楽焼は、とても精神的な焼き物です。装飾を極力排して、成形と釉薬だけで勝負する。また、一品制作品ということも、とても重要な要素であり、同じものが複数存在することはありません。お茶の席では、楽焼茶盌は、他の茶盌とは別格の扱いとされ、とても大切なお道具として、扱われてきました。黒楽と赤楽がその代表で、一般的な焼物と比べて、焼成時間が短いのが特徴です。極力焼成時間を短くすることにより、楽焼独特の柔らかい肌触りを得ることができるのです。

楽焼は不均一の焼き物です。例えば、成形の工程。電動ロクロを使えば、大きさやサイズの揃ったお茶盌を、多数制作することができる。にも拘わらず、あえて電動ロクロは使わないで、手ロクロで制作し、お茶盌全体を削っていく。また、釉掛の作業も刷毛を用いて、幾重にも塗っていくのでどうしても、薄い部分と厚い部分が生まれてしまいます。均一に施釉する方法は他にいくつもあるのだけれど、あえて刷毛塗りをすることにより、不均一を作り出していきます。
窯作業も同じ考え方で、大きな窯で一度に焼成すれば均一な品を焼成できるのだけれど、あえて引出という技法で焼成します。釉薬の調合を揃えても、焼成するたびに、異なった釉性状となる。きっと、窯の持つ熱量や、窯内部の酸素量、空気中の水分量など、作者自身ではコントロールし難い要素により、焼き上がりが決まるのです。

楽焼という焼物の原点には、唯一無二という考え方が強くあり、同じお茶盌が複数生まれることを許さないようです。そしてそれが一番の魅力となっています。

こういった数少ない伝統的なお店が当たり前に近所に残っていてとても素敵に思います。お茶をしていないと関わることがまずない楽焼ですが、興味のある方は八坂神社の南門前にあるのでぜひ訪ねられたらと思います。

今日も良い一日でありますように。8/24

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