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ラブストーリーは突然に①

私と「対話」を巡る思い出話もいよいよ佳境。
2012年5月に福岡市役所は大きな転機を迎えます。
8年前の5月21日,職員の飲酒による不祥事の連続に起因して発せられたいわゆる「禁酒令」が,私たちのオフサイトミーティング「明日晴れるかな」の原点だったという話は,本や雑誌への寄稿など,これまでにあちこちでご紹介させていただいていますが,今回はその経緯を少し詳しくご紹介したいと思います。

2006年8月に海の中道大橋で起きた市職員の飲酒運転による悲惨な死亡事故を受け,福岡市では職員,市民が一丸となって飲酒運転の撲滅に努めてきました。
しばらくは職員による飲酒運転は影を潜めていましたが,その後不祥事は繰り返され,2012年2月には飲酒運転に加えて窃盗事案が発生,市民の信頼が大きく損なわれたことから,同年3月に公募による150 名以上の職員の参加のもと,「飲酒運転等不祥事再発防止に向けた職員検討会」を開催し,そこでの意見やアイデアをもとに,「福岡市飲酒運転撲滅アクションプラン」が策定されました。
まさに,福岡市職員が一丸となって飲酒運転の撲滅にもう一度立ち上がろうとしたその時,再び事件が起こります。

2012年5月,飲酒に起因する職員の暴行などの事件が立て続けに発生しました。
飲酒運転撲滅の新たな取り組みをはじめようとした矢先の不祥事に市民からの信頼は地に落ち,業を煮やした市長は,職員全員に対して,自宅外での飲酒を自粛するよう要請しました。いわゆる「禁酒令」と呼ばれるものです。
禁酒令の発令は正式には5月21日(月)でしたが,5月19日(土)にはマスコミがその情報を掴み,それをネットで知った我々市職員は,驚き,狼狽し,あるいは怒りや嘆き,悲しみといった様々な感情を抱きました。

当時,facebookで開設されていた福岡市職員限定のグループでは,やり場のない感情をぶつける投稿が延々と続き,私もその渦中で長々と誰彼構わずコメントのやりとりをしていました。
そんな複雑な感情が交錯するなかで私がふと思い立ったのが,このweb上でのやりとりではだめだ,直接会って誰かと話したい,この感情を誰かと共有したい,という衝動でした。
今日は,あの日抑えきれない衝動に駆られて私がオフサイトミーティング開催を発案した当時の思いを吐露したfacebookでの投稿をご紹介させていただきます。

<2012/05/20投稿その1>
昨日からここにたくさんのカキコミが集まっています。読めばなるほどという意見も多々あり、自分も励まされました。皆さんに影響されてついつい私もエラソーに熱く語ってしまいましたが、昨日からの流れをざっと振り返り気になる点が二つ。

ひとつめは、ここに参加していない仲間達(市長を含め)とも現状認識や危機感を共有し、どうすればよいのかを自分ごととして考えるようになるために、ここにカキコミをした我々自身が明日以降何ができるか、という点。
もうひとつは、ここが参加者限定のウォールで活発な議論が交わされているということから、この問題が市役所の外、一般市民から見てどう写っているか、そこから出て来るある意味理不尽なご意見にも、我々自身が真正面から受け止めていこうという姿勢が少し希薄かもしれないと感じる点。

自分もそうですが、こういう閉じた世界でああだこうだ言うだけでなく、もっとオープンに意見を出し、批判にもさらされ、そこから上任せ、所管課任せにしないで、自分自身が他を巻き込む行動をどう起こすかを考えなければいけないと思いますし、自分はそうしたいと思います。まだいい知恵はありませんが。

<2012/05/20投稿その2>
まったくの思いつきですが、明日21日の夜、今回の事件について自由に語るオフサイトミーティングをやりませんか?場所も確保していませんし、あらかじめ賛同する人を募ってから発案しているわけではありませんが、とにかくいてもたってもいられないので、提案します。

この土日の間、この場だけでも多種多様な意見が出され、それぞれの思い、悩み、怒り、苦しみが吐露されています。この場に書き込む勇気のない人もたくさんおられるでしょうし、この場でない場所で、思い悩まれている方もたくさんいるでしょう。そういった思いを一つにつなぎ、そこからこの難局を乗り越える知恵を絞りたいと、方法論的には考えますが、なかなか妙案も浮かばず、かといって誰かの指示のもとで組織だって「みんなで考える」のもやらされっぽくてどうも釈然としない。(それはそれでお達しがあるとは思いますが・・・)

というわけで、とりあえず私自身が次の行動に移るための動機づけや方法論についてのアイデアを得るために、個人の意思として企画します。同じように悶々としていて、誰かと話したくて、なんか行動したいけどきっかけがなかったり方法論で行き詰っている同士の方々、明日、どこかで会いましょう。たぶん夜7時くらいから。場所は明日確保したうえで、ここに書き込みます。(職員研修センターの会議室でも借りられないかなあ)

ご賛同いただける方は、とにかく明日の場にお越しください。また、お越しいただけなくても、ここに書き込むだけでも結構です。まずは、自由になんでも語りつくすことから始めたいと思いますので。また、私のこのアイデアに乗っかって、さらにアイデアを出してくれたり、明日のオフサイトミーティングの運営に協力してくれる方も募ります。どこに向かって進むかわかりませんが、とりあえず、なにか始めてみませんか?最少催行人員は2名。私以外に誰か来てくれたら、開催します。まったくの思いつきなので、たぶんぐだぐだになるだろうこと
は、あらかじめお許しくださいませ。

<2012/05/20投稿その3>
「何とかしたい人全員集合!」オフサイトミーティングのご案内
平成24年5月21日(月)午後7時~(9時頃終了予定)
職員研修センター403会議室にて。

一連の職員不祥事を受け、市役所組織がこのままでいいのか疑問、不安に思っている市職員同士で自由に意見を述べ、語り合い、組織として、また個人として今後どうすればいいのかを「自分ごと」として考えるオフサイトミーティングを実施します。市職員であればどんな立場からの参加でもかまいません。今回の件で、土日に悶々としていた方々の参加を心よりお待ちしています。
会の運営については何も決めていませんが、まずはとにかく自由に意見を述べあう場として運営したいと思います。周囲の皆さんもお誘い合わせの上、お越し下さい。<引用終わり>

これが,私が半ば衝動的に福岡市役所でオフサイトミーティングを始めた「言い出しっぺ」の記録です。
当時,福岡市役所には職員が職場や立場を超えて自由に語り合う「オフサイトミーティング」というものは存在していませんでした。
また,私の個人的なつながりでこの呼びかけに賛同してくれる方があらかじめ想定できたわけでもありません。
ただ,私の呼びかけ(上記投稿のその2)に対して,会議室を確保できると申し出てくれた0さんと,場の運営に協力いただけるとお返事をいただいたYさん(彼はこの市職員限定のFacebookグループ管理人でもありました)の協力があって,見切り発車で開催に踏み切ったものです。
この呼びかけに応えてくださった「何とかしたい人」が何を語り,それがどのように展開したのかは次稿以降でご紹介いたします。

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