サミットの奴隷

サミットは私の生活の全てである。

サミットとは東京の西の方に多く分布しているスーパーマーケットのことです。
私は出不精なので、滅多なことがなければ事故物件の自宅(いつかこれについても書きたいですね)から半径600メートル以内のサミットと図書館にしか出かけません。

私はこの世の全てをサミットから入手しているのです。

サミットにブリが並べばブリ大根を食べ、豚肉が並べば生姜焼きを食べます。
また、ナスが安くなれば夏の訪れに気がつき、白菜が多く並べばやっと冬の到来に気がつくのです。
サミットで買った鶏肉をサミットで買った調理用鋏でカットしサミットで買ったクレラップに包んでヨドバシで買った冷凍庫に貯蔵していくのです。
私の生活の主導権はサミットに完全に握られています。

サミットのある建物は、1階が同系列の衣料品店コルモピア。地下はサミットという作りです。
サミットに入店する際にはエスカレーターで地下まで降って行きますので、お行儀よく並んだ陳列棚を上から一望することができます。
この棚の全てに食べ物が所狭しと並んでいるなんて! 入店するたびに私はもう死んでしまっていて、ここは極楽なのではないかと錯覚し、効き過ぎた冷房は死体を腐敗させないためのように思われます。

そんな私に大きな事件が起こりました。サミットが改修工事をするというので10日間ほど休業するというのです。1ヶ月前から張り紙がしており、1週間前になると店内の商品が減っていき在庫整理に取り掛かっているのが分かりました。
しかし、私はサミットを失うことを考えたくなくて見て見ぬふりをしていたために、実際に休業してみたら自宅から卵もパンも無くなって途方に暮れてしまいました。

最寄駅にはピーコックという別のスーパーがありますが、自宅から800メートルはあるのではないでしょうか。そんな遠出が私に出来るのかしら。絶望に陥りました。何よりもピーコックではペイペイが使えないのですから、同じく800メートル地点にあるATMにも行けない私には現金会計をすることができないのです。

こんなことで絶望に暮れている己が大層情けなく思い、2階のコルモピアで買ったシーツを涙で濡らしました。
出不精もここまでくると芸術といえます。

今は仕方なくピーコックで使えるイオンペイのアプリを入手しピーコックまで通って食料を得ています。
サミットの改修工事が終わるまであと2日です。天変地異のように感じられた1週間でした。

ああ、早くサミットのエスカレーターを降りたい…。
サンリオピューロランドもエスカレーターを降って入園することを思い出しました。子供の頃に感じた、あのトキメキの延長線上に私のサミットがあるのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?