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令和のアイドルは偶像なのか


はじめに


(ここでの「アイドル」は、女性アイドルのことを指しています。)
 先日、私が応援しているアイドルグループのメンバーの1人にスキャンダルが発覚し、少し炎上した。流出した動画はグループ加入前の出来事だったと公式に発表があり、特に処分などはなかったようだが、ファンは様々な反応を見せていた。

「アイドルは疑似恋愛のコンテンツなんだから男関係は絶対ダメだろ!ファンをやめる!」と言う人や、「昔の話なんだし別にいいんじゃない、本人が幸せなら」と言う人、「グループに迷惑をかけているのになんの処分もないなんておかしい」と言う人もいた。

私は、正直に言うとそのメンバーにあまり関心がなかったのでなんとも思わなかったのだが、ファンの反応にいくつか引っかかることがあったのでこの文章を書いている。


80年代から始まった「アイドル産業」


 そもそも、「アイドルは疑似恋愛のコンテンツ」という定義は正しいのだろうか。アイドルは直訳すると「偶像」。Wikipediaによると、「神の像や仏の像、およびそれを崇拝する行為を指すために使われている言葉」だそうだ。アイドルという言葉が盛んに使われるようになったのは1980年代。松田聖子や中森明菜がアイドルブームを巻き起こした。

 ここで一つの疑問が生まれる。80年代の日本に、若い女性を「偶像」として崇拝するような文化が栄えるとはとても思えない。当然私はまだ生まれていないので憶測でしかないのだが、日本はまだかなり男尊女卑の社会だったのではないか。

当時松田聖子のファンだった父親に「パパは松田聖子を尊敬してた?」と聞いてみた。父親は、「尊敬はしていない。可愛いし、付き合うならこういう子がいいと思っていた」と答えてくれた。私は21世紀生まれの現代っ子なので、この回答に少し疑問を覚える。まず、私の父親はどこにでもいる冴えない一般男性なのに、なぜ松田聖子のような女の子と付き合えると思ったのか。私の母親だって松田聖子には1ミリも似ていない。

これは、当時のアイドルの売り出し方に原因があるのだろう。これは割と最近でも言えることだが、アイドルが歌いがちな恋愛ソングはかなり男性本位だ。女性から見たらありえないシチュエーションで気持ち悪くなるような歌詞が多い。「抱いて…」なんて、少なくともファンに対しては絶対に起こらない感情だと思う。

ここに、疑似恋愛という売り出し方が見えてくる。80年代のアイドルのイメージは、無知で可愛くて純情で、たまに少し積極的な昔の理想の女性像そのものという感じだ。当時のアイドル産業は、私の父親のような人にお金を使わせるために作り上げられた疑似恋愛のコンテンツだったのだろう。

先ほど、「偶像」とは神や仏の像やそれを崇拝する行為のことだと書いたが、漢語では「人形」という意味だったらしい。確かに、この場合のアイドルは「偶像」を人形という意味で捉えれば正しい言葉選びなのかもしれない。


多様化するアイドルとファン


 松田聖子に始まり、安室奈美恵、浜崎あゆみ、モーニング娘。、AKB48、ももいろクローバーZとたくさんのアイドルがヒットしてきた。最近では、上品さや、反対に枠に囚われない個性的な売り出し方で人気を集める、乃木坂46などの坂道グループが人気だ。

こうしてアイドルが多様化する中、アイドルのファンも多様化してきている。疑似恋愛だけのアイドルという時代は終わり、ファンそれぞれの受け取り方によってアイドルの存在意義が変わるようになった。

 私の思うアイドルの魅力は、可愛い女の子が汗で前髪も化粧も崩しながら全力で歌って踊るところだ。ファンは握手会やライブを通してアイドルを応援し、お金を貢ぎ、売れると喜ぶ。成長過程が見えるので、アイドルが成長し、正当に評価されるようになると自分の事のように嬉しい。

こうした自己投影をすることで、手軽に達成感や優越感を味わえる。自分はお金を貢いだだけなのに、努力以上の快感が返ってくる。


 私のような成長過程を楽しむファンの他にも、たくさんのファンのタイプがある。

例えば、アイドルを見下すタイプ。先述した昔のアイドルファンと同じようなタイプで、お金を払っているのだから、と自分が優位に立っていると思い、アイドルが気に入らない行動をすると「アドバイス」と称してアイドルを批判する傾向がある。あと、このタイプはだいたいライブのコールがうるさい。アイドルの歌ではなくて盛り上がる空気感を味わいに来ている。

坂道グループのような特徴的なアイドルのファンに多いのが、グループの雰囲気が丸ごと好きというファンだ。箱推しと呼ばれる、特定のアイドル個人を応援するのではなく、グループ全体を応援するというファンも多い。このタイプは、グループに新しいメンバーが加入した時などに、そのメンバーがグループのイメージに合っていないと怒る。

また、「ガチ恋」と呼ばれる、疑似恋愛を通り越して本気でアイドルに恋するファンもいる。自分以外のファンを許せない「同担拒否」もこのタイプ。握手会に通いつめてたくさん話し、あわよくばプライベートで連絡を取りたいと思っている。

ただ単純に可愛い顔が好き、というファンもいる。比較的軽めのファンで、ライブにもあまり足を運ばず、SNSやブログでアイドルの写真を見て喜ぶ。1人ではなく、色々なジャンルのアイドルを応援する傾向にある。
書ききれないのでこの辺にしておくが、このように様々な理由からアイドルを応援する人がいる。


 疑似恋愛として売り出していた80年代のアイドルのファンにも、様々な受け取り方のファンがいただろう。しかし売り出し方が多様化した今、ファンの受け取り方もより多様化し、また、好みの売り出し方のアイドルを見つけて応援することもでき、よりファンのニーズに幅広く応えることができるのかもしれない。


おわりに


「令和のアイドルは偶像なのか」
タイトルにあるこの問いかけの答えは、受け取る人によって変わってくる。ここまで読んでくださった方にはおわかりいただけただろう。令和のアイドルは、さらに枠に囚われない自由な表現で世間を驚かすこと間違いなしだ。もちろん、ファンもさらに多様化するだろう。

私は先ほどからアイドルのファン、と表現してきたが、世間一般ではこれをアイドルオタク、通称ドルオタと呼ぶ。ドルオタに限らず、オタクは元となるコンテンツがあるからこそオタクと名乗っていられるのだ。


 どういう応援の仕方をするかは個人の自由だが、まずはアイドルがアイドルとして活動してくれていることへの感謝を忘れず、彼女たちがいるから自分が幸せだということを噛み締めながらオタ活に励みたい。

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考えを言語化しないと気が済まない18歳です。
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