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東京にて京都を想う

6月7月と続けて東京へ行ってきました。いろいろと展示を見て回ったんですけど、つくづく感じたのは、京都の芸大出身の作家さんが多いなあ、ということでした。ここでは東京で見た京都の芸大出身の作家さんの展示をつらつら挙げてみたいと思います。

まずは何と言っても、京都造形芸大出身の方の活躍ぶりですよね。
WAITINGROOMでは大久保紗也「They」。今や大人気の作家さんで今回の個展も作品は全部売約になっていたんじゃないかなあ。今回はトタン板を支持体にした大きな作品があって、凹凸があることが面白い効果を生み出していて見ていて楽しかった。その作品画像を使ったDMも上下の両端が波型になっていてかわいらしいです。
ギャラリーでポートフォリオを見ていたら、懐かしい作品が出てきました。

この作品を見たのは2016年の7月。学内のギャラリーだったと思いますが、もう4年も前の話になるんですね、、、笑

人気作家といえば小谷くるみさんもそう。個展「ブラインド」medel gallery shuにて。結露した窓に指で落書きしたかのような21gシリーズは非常に人気のあるシリーズですが、クオリティが安定しているのは流石。もちろん赤丸がいっぱいついていました。

日本画のジャンルで注目を集めている品川亮さんは銀座 蔦屋書店「Nature's first green is gold」。簡略化された白の花弁が特徴的で格好いい。日本画を今の時代に合わせてアップデートするかのような洗練さがいいですね。人気なのも分かります。

そのほかEUKARYOTEのグループ展「YOUNG ARTIST EXHIBITION 2020」には今年大学院を修了したばかりの椿野成身さんが参加されていました。昨年は東慎也さんがこのグループ展に参加されていましたが、次の展示は東さんと同じく京都造形芸大出身の米村優人さんの二人展になるそう。こちらも楽しみです。

また、西武渋谷の美術画廊で開催されていた「燦三と照りつける太陽で、暑さ加わり体調を崩しがち奈季節ですが、規則正しく健やかな日々をお過ごしください。展」という長いタイトルのこの展示は、東京藝大と京都造形芸大の先生+教え子ふたりという構成のグループ展。東京藝大で教える小林正人さんが三瓶玲奈さんとやましたあつこさんを、京都造形芸大で教える鬼頭健吾さんが岡田佑里奈さんと新宅加奈子さんをピックアップしています(長い展示タイトルにはそれぞれの名前の一文字が紛れています)。
岡田佑里奈さんの作品は、これまでにも目にしているはずなのに記憶に残っていませんでした。今回見てみていいなあと思った作家さんです。今後の活動にも注目していきたいと思います。

中野のHidari Jingaroで行われたobさんキュレーションによる「neo wassyoi」に参加されていたきゃらあいさんは、京都造形芸大のペインティング領域ではなくアートプロデュース学科の出身。異色の経歴ですよね。

イラスト寄りって言うんですかね、かわいらしい感じの作品はどちらかと言うと苦手なんですが、きゃらあいさんの作品は以前から気になっていて作品を一点持っていたりもします。自分の興味がどの辺りにあるのか探るためにも今後も見ていきたいと思います。
また、話は逸れますが、きゃらあいさんの隣に展示しているさめほしさんの作品は前から実際に見てみたいと思っていたのですが、今回ようやく実現しました。まあ、もちろん作品は完売のようでしたが。

関西でたびたび作品を拝見している宮田彩加さんも京都造形芸大のご出身。日本橋高島屋美術画廊「かりのいと」を拝見しました。

何と今回はアマビエ様がご降臨。
宮田さんの作品は前からいいなあと思っていたのですが、このコロナ禍を反映させた作品がどこかのタイミングで購入できればと思っているので、今回かなり気になってしまいました。

MAHO KUBOTA GALLERYで行われた映像作品のグループ展「VIDEOTOPIA」には小宮太郎さんが参加。
小宮さんの作品に物を高速回転させるシリーズがあるんですが、今回はその映像版、と思って見はじめたのですが、途中から何か違和感が込み上げてきて、、、じーっと目を凝らしてみたら、映像ではなく写真だということに気づきました。最初は普通に回っているかと思ってた、、、小宮さんにしてやられたな。
余談ですが、小宮さんの次に流れたのがAKI INOMATAさんの「インコを連れてフランス語を習いにいく」。タイトル通りの内容なんですが、わさびっちょという緑のインコが次第にフランス語を覚えて「シルブプレ!」って連呼しているのが何ともおかしかった。この作品を見たのはHAGISOでの個展(2014年)以来。久しぶりに見られてうれしかったです。

続いては京都精華大。精華は版画が強いイメージなんですが、今回もまさにそのイメージを補強する形になりました。
まずは埼玉県立近代美術館での「New Photographic Objects 写真と映像の物質性」。写真のジャンルから出発しながらも一般的な写真の展示に収まっていない5人の作家によるグループ展で、公立の美術館にしてはなかなか攻めた内容だったと思います。

参加していたひとりが迫鉄平さん。迫さんはシルクスクリーンの作品と映像の作品2点を出されていましたが、個人的に迫さんの映像作品がとても好きなんです。
たとえば、目の前の光景にiPhoneを向けて、カメラモードでボタンを押せば一瞬の様子を切り取ることになるし、ビデオモードでボタンを押せば一定時間の様子を切り取ることになる。動作としてはさほど差異はないはずなのに、後者である迫さんの映像作品は「何かが起こりそう」というワクワク感が生まれるんですよね。もちろん迫さんの嗅覚が優れているということなんでしょうけれども、自分には奇跡的のように思えてなりません。
今回の展示期間中に迫さんがこれまで発表した映像作品をすべて上映するという激アツなイベントも予定されていたのですが、コロナの影響で中止になってしまったのは非常に残念です。

FL田SHで個展「転がる器のメタモルフォシス」をされた星拳五さんも精華のご出身。インターネットミームとして周知されている画像が石に刷られています。もし石がこのまま残ってミームのことを知らない人が見たら、きっと「これは何だ?」って混乱するでしょうね。その時代にもちろん私はいないんですけど、見てみたいような気がします。

精華から京都市立芸大の院に進んだ松元悠さんはmedel gallery shuにて「独活の因縁」

ある事件の現場を歩いて見たものや自分の身の回りに起きたことなどをミックスして作りあげた画面は摩訶不思議なものになっていて、時にはギョッとして目を逸らしたくなることもあるんですが、それをさせないぐらいの力が作品にはこもっていて迫力を感じます。
印象に残ったのは瀬戸内の粟島で起きた民家の火災に材を取ったもの。そういえば昨年瀬戸内国際芸術祭の秋会期で粟島に行ったときに全焼した家があったような、、、この作品に出てくる人物の目に引き込まれてしまいました。

京都市立芸大出身で個人的に注目しているのが岡本秀さん。昨年秋から立て続けに作品を見る機会があったのですが、今回は日本橋三越コンテンポラリーギャラリーで梅津庸一さんがキュレーションした「フル・フロンタル 裸のサーキュレイター」に参加されていました。

開催前に岡本さんにお会いしたときにお話を伺ったら、SNSで作品画像をアップしているのを梅津さんがご覧になって今回の展示のオファーが来たのだそう。
出品されたのはキョンシーとおばけが描かれた襖によって視線が奥へ奥へと誘われる大作です。
前に展示で見て私も好きな作品だったんですが、今回展示を見た人がこの作品についてコメントするのをSNSで見て気づくこともあり「自分はちゃんと作品を『見て』いないんだな」というのを痛感させられました。もっと細かく見ていかないとな。
それにしても結構大きい作品でお値段もそれなりにしていたのですが、売約の赤マルがついていたのにびっくり。買うと決断された方、素晴らしいです。

独特の存在感を放つ笹岡由梨子さんは阿佐ヶ谷のTAV GALLERYでのグループ展「ノアの安産祈願展」に参加されていて、関西ではたびたび拝見していた「太陽・Ⅰ」に関連する作品を見ることができました。唯一無二でとても面白い作家さんなので、東京でももっと作品を見られる機会が増えるといいなあと思います。

そのほか、明治神宮での野外彫刻展「天空海闊」に参加されていた名和晃平さん、

原美術館で個展「エゴオブスクラ東京2020ーさまよえるニッポンの私」を開催していた森村泰昌さん、

大活躍のおふたりも京都市立芸大のご出身ということで、京都の芸大から飛び出した作家さんもこれからますます今の日本の現代美術の世界で活躍していくんじゃないでしょうか。長らく京都の展示を見て回っていた身としては、今のこの状況がとてもうれしく感じています。

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