ドネーションでどないしよん。

ミニシアター支援の動きがすごい。

SavetheCinemaで先日各省庁に署名提出をした中心人物のうちの一人諏訪敦彦監督とは去年【風の電話】で、同じく白石和彌監督とは【日本で一番悪い奴ら】【麻雀放浪記2020】【フルーツ宅配便】で一緒に仕事をした。

署名ページに次々に連なる呼びかけ人&賛同者の中には行定勲監督や瀬々敬久監督をはじめ過去に作品に参加した監督たち、柄本明さんを始め多くの俳優さんたち、スタッフ、フランスの監督や俳優たち、また映画業界以外の様々な人たちの名前が見受けられる。

https://note.com/save_the_cinema/n/na8665c85947c

また、発足から一週間足らずで1億7千200万円以上(4/22時点)約1万6千人からの支援を得たミニ・シアターエイド基金の発起人の一人である濱口竜介監督とは【寝ても覚めても】で一緒に仕事をした。先日DOMMUNEでキックオフイベントが行われた際に深田監督濱口監督と共に出演した渡辺真起子さん、斎藤工さんとも偶々ではあるが近年ご一緒することが出来た。

入江悠監督がかなり早い段階から自身のブログで全国のミニシアターの状況を発信していたのも記憶に新しい。


毎日のように誰かしらがミニシアター支援に関して発信してくれている。昨日4/20には洞口依子さんが素敵な文章をアップしてくれた。


と、同時に、この洞口さんの文章でも触れられていたが、先日の『報道特集』でユーロスペースの北條支配人が述べられていた「一ヶ月の休業で1700万の売り上げ減」という言葉が胸にのしかかる。

アップリンクの浅井さんも毎日の様に発信しているが、昨日twitterに上げた文章では冒頭にこのような話も。

”今日はミニシアターの現状についてTFMからNHKまで5媒体の取材に答えた。アップリンクの現在の規模は、渋谷、吉祥寺の二つの映画館で19年の売上は6.3億円、観客動員は38万人。国に文化を助成してほしいと言う気持ちは勿論だが、休館により損なわれた経済をまず補償してほしい。”

”月5000万円の売上がゼロになった。都の2営業所100万円、国の200万円だけの補償では会社が生き残るためには全然足りない。渋谷と吉祥寺の家賃だけで500万を超える。今、アップリンクでは100人以上雇用している。かろうじてオンラインでの見放題で多くの応援を受けて、あとひと月は生きながらえる。”

”ただ5月7日から映画館が開けられるかは全くの未定。まして開けてもすぐに客足が回復するとは思えない。アップリンク京都は開業延期だが不幸中の幸いというか館全体のオープンが延期したので、家賃は派生しないが、スタッフを28名雇用したのでオープンしてないが休業補償が派生している。”

やはり、事態は何億のレベルですらなく、業界全体にしてみれば何十億、何百億という世界である。

『ミニ・シアターエイド』DOMMUNEでの各ミニシアターの声からも、実際にこの先運営していく上での資金という意味ではどう考えても公的支援がないと立ち行かなくなるという声がほぼ全て。SAVEtheCINEMAの陳情で早速福島みずほ議員、宮本徹議員らが国会で取り上げてくれた。枝野議員、福山議員、はたの議員らも動いてくれている。

映画館だけではない。

すでに何人もの方も指摘し始めているのと、そもそも白石監督や濱口監督も何度も言及しているが、映画という興行の中で映画館というのはある意味出口であり観客に直結する場でもあるので事態が一般の方にも見えやすいが、その場へ作品を届ける配給・宣伝会社、その過程で活躍するライターや雑誌媒体、そもそも作品の作り手である制作のスタッフ・俳優・各プロダクションもおしなべて苦境に喘いでいる。

普段、観客には伝わりにくい配給会社という存在も、ミニシアターと直結するようなところは自転車操業で良質な作品を送り届けていたところが多く、ドネーションが届きにくいこうした会社はどこも瀕死の状態であろう。付け加えれば、宣伝単独を受け持っている会社も同様な状況が想像できる。



一足先に影響が出始めた演劇界と重なる部分も多い俳優たちの活動では3月はじめに西田敏行さんが日本俳優連合を代表して公演がキャンセルになった俳優たちへの支援を陳情していたことはすでに忘れ去られてしまっているだろうか。

(この動きに対して「海外のセレブは皆んな寄付とかしてるのに金持ちのはずのタレントたちが国にたかるなんて」という信じられない声も日本のネットには散見する)


で、自分がフリーランスのスタッフとして主に属する制作現場はと言うと、無論例外なく壊滅的である。なにしろ4〜5月のみならず、ほとんどの夏の企画までがこの時点で既に暗礁に乗り上げている。

クランクイン前の準備中にストップした作品、撮影中にストップした作品、撮影は終了したが編集や音作業がまだの作品。夏の撮影に向けて5〜6月から準備を開始したいが製作委員会からゴーサインが出ないまま無期延期の可能性が高い作品。

一般の方には分かりにくと思うが、「A」という作品が例えば撮影半ばで中断して無期延期になってしまったとして、緊急事態宣言が解除されればすぐに続きが撮影できるというものではない。通常、映画界ではスタッフも俳優も一作品ことに集結して撮影が終わればまた各々別の作品に散って行く。売れっ子の俳優や監督、カメラマンであれば次の作品、その次の作品くらいまで決まっている。ネトフリやアマゾン、webドラマなど作品が増えて慢性的な人手不足だったので若手スタッフたちも先の仕事まで埋まっていたのが実情である。それが一度全てリセットされたからといって、では春に中断した作品が、秋にそのまま再開できるのか。当初、秋に予定されていた次のプロジェクトとどちらが優先されるのか。平等に玉突き式にずれるなどということはあり得ない。

運よく、スタッフや俳優が再集合できたとして、当初の予定通りのロケ場所で撮影許可下りるのか。クライマックスで大人数のエキストラの参加を予定していたが、秋にはまだそういうシーンの撮影が難しいとなったら途中まで撮影してしまっているのに簡単に設定を変えられるのか。そもそも中断期間、スタッフの人件費および俳優のギャランティのオーバー分を制作会社が補償すれば当初予算の倍以上になってしまいとてもじゃないが現実的ではない。今、中断している作品のうち、大半は悲しいかな制作中止という判断になるものが多いだろう。

よって、このまま春夏に制作予定だった作品が当初総数の1〜2割(下手するともっと少ないか)、秋冬に制作予定だった作品が6〜7割(これも希望的観測すぎるかもしれない)に減ると、来年の春以降に公開される邦画新作が例年の半分以下になる可能性が高い。

加え、個人的な懸念は、業界内でこの状態が続くと特に若手はスタッフも俳優も戻ってくるのが難しい状況に陥ってしまうのではないかということ。知り合いの若手俳優の中でも普段は「食えない」ので飲食店などでバイトをしている人も多かったが今はそれすら出来ない。

とにかく、映画館も、配給・宣伝・制作会社も、フリーランスが多くを占める制作現場も、公的支援がないと個人のドネーションだけでは圧倒的に足りない。

「隣の芝は〜」議論になることは避けたいが、下記の記事のような動きをみると、いま有志が展開している草の根支援の動きと同時に、業界全体が声をあげて国に訴えて行かなければ、大げさでなく本当に今年中に焼け野原になる。




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