見出し画像

名刺をサトウキビの搾りかすを使った紙で作ってみた

先日、名刺を新調しました。はじめてサトウキビの搾りかすを使った紙、「ハイブリットバガスFS ラフホワイト」という紙を使ってみたので、仕上がりの感想と紙選びで調べたことをシェアします。

絵描きの視点で、色味の再現性や紙表面の質感、個体差など名刺の仕上がり感だけではなく、エシカルにクリエイティブをしたいという想いから「エコな紙選び」という視点もある。サトウキビの搾りかすを使った紙ってどんないいことがあるのか?も合わせて書いておきたいです。

『自由研究 エシカルにクリエイティブ』では、自分なりに疑問に思った過程や調べてみて現時点でわかったことをシェアします。わたしが得ていた情報が古かったり、誤認がある場合はコメントをいただけるととても有難いです。   
→ 研究ポリシー        筆者より


・・・

紙選び

今回わたしが選んだのは、サトウキビの搾りかすを使った紙「ハイブリットバガスFS ラフホワイト」という紙だ。大手ネット印刷会社グラフィックで取り扱っていて、印刷もこちらにお願いした。

さて、なぜこの紙を選んだのか?について。クリエイティブをやる上で、できるだけエシカルな選択をしたいな。と思っているので、紙選びについてもその視点を加えたかった。わたしの今回の名刺用紙の条件は;

・水彩イラストの再現性
・少量印刷
・エコな紙

絵描きの名刺なので、カラーの水彩イラストの色はうまく再現したい。そして、印刷枚数は最小ロットの100枚でいきたい。一度にたくさん印刷した方がコストは圧倒的に下がるのだけど、わたしは名刺に載せるイラストはずっと同じよりも更新していきたいので、100枚ごとに変えている。さらに、今となっては対面で名刺をわたす機会は激減したのだから、なおさらに。

ということで、ある程度白い紙で、少量ネット印刷でもOKでエシカルな紙 を探し、エコである点から「ハイブリットバガスFS ラフホワイト」を選んだ。

バガス=エコ?を自分で確かめてみる

エコの基準というか、ボーダーラインは曖昧だ。本当にエコなのか?自分で知ってから判断したいのでバガスについて調べてみた。エシカルのボーダーラインは人それぞれであると思っているので、自分のわかる範囲で、選ぶためにポチポチと調べるのだ。

サトウキビの搾りかすを「バガス」というらしい。ふーん。という感じかもしれないけれど、つまりは廃棄されるものを有効活用した原料。

バガスについて1番わかりやすかったのがこの紙を製造している五條製紙株式会社の解説。リンクをつけているホームページではイラストがあってとても見やすいので、気になる人はぜひチラ見を。

さとうきびから、砂糖を搾汁したりバイオマスエタノールを抽出した後、茎や葉などの大量の搾りカスが発生します。この残渣が<バガス>と呼ばれるもので、年間約12億トン生産されるサトウキビから約1億トン(乾燥重量換算)のバガスが発生します。その一部は、ボイラーでの燃料となり、砂糖の製造の動力源となりますが、残りは廃棄されています。この余剰バガスは植物繊維ですので、木材と同様に紙の原料であるパルプになります。
引用:五條製紙株式会社HPより(https://www.gojo.co.jp/eco/future)

プラスチックのための石油、紙のための木ではなく、砂糖のためのサトウキビで捨てる前に紙になる。エコのために新しいものを作る、というよりも余ったものを有効活用。という点がすてきだと思った。

さぞエコ意識から最近できた新技術かと思いきや、wikipediaによるとバガス活用の歴史は浅くなかった。バガス、知らなかった!

日本でも、王子製紙の鈴木梅四郎らの手により、1919年(大正8年)、台湾の宜蘭市にバガスを原料とする製紙工場が建設されている[5]など利用歴は古い。
引用:バガス wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/バガス)

バガスのいいところは他にもあった。木材より加工しやすいので、省エネで製造できるようだ。

木材に比べてやわらかいため、製紙の過程で必要とされるエネルギーが通常の木材パルプよりも少ないというメリットもあります。
引用:WASARAのHP(https://wasara.jp/about/index6.html)


バガスのいいところ
・廃棄物が原料だから新しく消費しない
・廃棄するゴミも減る
・加工しやすく省エネ製造

さらに今回選んだハイブリットバガスFS ラフホワイトを製造している五條製紙のHPで他にもプラスアルファのいいところが確認できた。

+「ハイブリットバガスFS ラフホワイト」のいいところ
・紙の漂白に塩素を使わず環境にやさしい
・砂糖工場とバガスパルプ工場が隣接していて輸送CO2カット

しかし、気になったのはその配合率。バガスをどれくらいこの紙に配合しているのか?は調べてみたけれど製紙会社のHPに記載はなかった。たとえバガスの配合率が少ないとしても、クリーンな方が心地いいのでぜひ記載してほしいなと思う。

以上いろいろ調べてみて、わたしはバガスを使った紙はエコだと思い、選ぶことにした。

名刺の仕上がり

画像1

では、やっと肝心の名刺の仕上がりについて!エコな紙であることを抜きにしても、わたしはこの名刺の仕上がりに満足だ。

良かった点・紙は凹凸があり画用紙っぽい質感
・オフホワイトでやわらかい印象になる
・エコな紙であること

見た目。いつも絵を描く画用紙のように、紙の表面には凹凸がある。そしてコーティングされたつるつるテカテカ感がないので、紙の手触りを感じられる。すこしざらっとして心地いい。

色味は真っ白ではなくオフホワイト。青白いホワイトだとイラストの色がパキっと出てクールな印象になるけれど、わたしがオフホワイトでやわらかい感じを出したかったのでちょうど良かった。

これでエコな紙なのだから嬉しい。とはいえ、以下の点は人によっては気になるかもしれないと思う。


ちょっと気になる点
・紙の凹凸感にはムラがある
・印刷の色温度にムラがある(印刷の問題?)

今回オーダーした100枚という少ない枚数の中でも、わりと紙の凹凸のムラが大きかった。凹凸が細かくてフラットに近いものもあれば、凹凸が表面にしっかり現れていてかなりボコボコしているものもあった。水彩画用紙になじみがある人に伝わる例えだと、細目と荒目くらいの違いがみられた。以下の写真で上がフラット気味な1枚、下がボコボコが強めの1枚。

画像2


そして色味のムラも見られた。色温度というとわかりやすいだろうか。印刷が青みっぽいものと黄味っぽいものがあった。以下の写真で上が青み、下が黄味っぽい。これは紙の性質なのか?印刷の問題なのか?それは定かではない。。

画像3

何を制作するかによるけれど、個人的には「ムラ」とか「不均一」いうのは個体の味だと思っているのでこれはOKだ。天気に晴れの日雨の日があるように、人の気分にも上がり下がりがあるように。ピタリと一定でないことは好きだなあと。(許容範囲はあるけれど)


エコな紙を使いたい人へ キーワード 「FSC認証紙」

エコな紙を使いたいけどどうやって選んでいいか分からない、専門的なことは難しい、という個人におすすめしたい方法がある。ネットで情報検索するときに「FSC認証紙」というキーワードで調べることだ。今回わたしが調べたのもここがはじまり。

エコの基準やマークはいろいろあるけれど、わたしは「FSC認証紙」をひとつの基準にしている。このキーワードは以前勤めていた外資系の会社でパンフレットを作る部署にいたときに知ったことばだ。紙につかわれる森の管理や製造工程、流通において基準が定められている。

FSCの森林認証制度は、世界中から参加する環境保全団体、先住民族や労働者の権利に取り組む団体、生産者や利用の立場にある民間企業など、環境・社会・経済の各分野のステークホルダー(利害関係者)の議論と合意によって運営され、また責任ある森林管理のための10の原則と70の基準を定めています。
引用:WWF(https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3547.html)

エコな紙をどうやって選んでいいか分からない、専門的なことは難しい、というユーザー側にとって1番かんたんな方法だと思う。今はだいたいのネット印刷会社のホームページの検索項目で「FSC認証」というチェックボックスもあるので探しやすくなっている。


まとめ・考察

エコな紙で名刺をつくろうとした結果、今回はバガスというサトウキビの搾りかすを利用して作られた紙をつかった。「ハイブリットバガスFS ラフホワイト」という紙にどれくらいバガスが使われているか?配合率は不明。けれど、一部でも廃棄物を利用することは、あらたに使う資源の節約ができること、ゴミの削減ができる点で環境にやさしいと思い選ぶことにした。

印刷用紙としては、紙表面の凹凸のある画用紙のような質感が特徴的。水彩イラストを印刷してもやわらかさを表現でき、紙の手触りからもやさしい印象を感じた。注意点は、名刺100枚のなかでも個体差が大きく、紙の凹凸や印刷の色温度にムラがみられた。(※印刷の色温度については紙ではなく印刷の問題の可能性がある)

結果、個人的には「ハイブリットバガスFS ラフホワイト」をつかった名刺に満足しているので、同じような条件で名刺印刷を探している人におすすめしたい。

参考
・ネット印刷:グラフィック
・紙製造:「ハイブリットバガスFS ラフホワイト」五條製紙


いただいたサポートは、ありがたく創作の栄養分に使わせていただきます!ありがとうございます!