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「英語朗読」を学んでみよう!

皆さんは「英語朗読」をご存知でしょうか?

この記事では

1.朗読とは/英語朗読とは

2.英語朗読をつかさどる音声表現解説

3.音読から朗読へ

4.英語朗読とコミュニケーションの関係について

にわけて英語朗読を徹底解説していきます。

「英語朗読を学んでみよう」≪実践編≫ではネット上英語朗読ワークショップ体験ができます。この記事を読んだ後は是非実際に朗読してみてください。


1.朗読とは...

英語朗読とは朗読を英語ですること・・・

では「朗読」とはなんでしょうか?

朗読(ろうどく)は、声を出しながら文章を読むこと。「音読」ともいうが、「朗読」には「感情をこめて読み上げる」という意味あいも含まれる[要出典]。また、朗読を芸術的な観点から「文字言語で表現された文学作品を音声言語で再表現する芸術」ととらえる考え方、あるいは、学問・教育的な観点から「自分の読みを獲得し、それを他者に朗(あきら)かにする行為」ととらえる考え方もある。文章を暗記した上でこれを行うことを暗唱という。また、声を出さず、心の中で読み上げることを「黙読」といい、これに対比させる意味では音読という語もある。さらに、芸術的な表現として文学作品をよむ段階を「表現よみ」という用語で示すという考えもある。(wikipedia「朗読」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%97%E8%AA%ADより)

と書かれています。「自分の読みを獲得し、それを他者に朗か(あきら)かにする行為」とは「自分らしい表現をみつけて聞き手にきちんと伝わるように発声する」ということを意味します。それを英語で効果的に行うのが「英語朗読」というものです。「感情をこめて読む」ということに関しては諸説ありますので、まずここでは学問、教育的な観点の部分に注目していきたいと思います。

ちなみにこちらは文部科学省による「朗読」の定義です

「朗読」は、正確・明晰・流暢に以下を加える。他、作品の価値を音声で表現すること。 作品の特性を音声で表現すること(読者の受け止めた作者の意図・作品の意味・場面の雰囲気・登場人物の性格や心情を)」(文科省、2017)

 「作品の特性を音声で表現すること」とありますのでまずは朗読に必要とされる表現について考えていきましょう。このいわばテクニックというものを身に付けてそこから自分なりに工夫を加えることが「自分らしい表現」となるからです。

朗読に必要なもの=表現

そもそも何故「表現」が必要なのでしょうか?声に出す行為の目的はなんでしょうか?「誰かに聞かせる」ためですよね?聞いてもらうからには➊聞こえないと困る➋正確に伝わらないと困る➌最後まできいてもらわないと困るわけですよね。

➊は声を大きくする(聞き苦しくない発声法が必要ですが)これは毎日声出しをすれば大抵の人はなんとかなります。問題は➋と➌。聞き手が誤解をしない、そして飽きないような読み方をしなくてはいけないのです。そこで必要になるのが「表現」というわけです。さらに言うと「文字以上の情報を与えないと意味がない」のが朗読でもあります。だって、文章を音声化するだけなら今ではロボットもAIもできますよね。下手すると「とちらない」という点ではロボットの方が人間より優秀かもしれません。

正確に伝わる とは何を意味していると思いますか?正確に「読み上げる」とは異なります。声に出して読んだ際、自分の解釈や思っていることが相手に伝わっていることが「正確に伝わる」なのです。朗読は「文字以上の情報を聞き手に与なくてはいけない」と言ったのにはこういった意味があるのです。日本語では文学作品を芸術的に伝えるこという定義が一般的ですが、「英語朗読」の対象は文学作品だけにとどまりません。聞き手が存在する題材全てを「英語朗読」できるのです。読み聞かせは勿論、ニュース原稿を読むことも、プレゼンテーションをすることも、スピーチや通訳、お知らせを伝えることも英語朗読という手法を用いて行うことができます。

つまり、英語朗読とは「聞き手に届けることを目的とした音声表現技術」というわけです。

2.英語朗読をつかさどる音声表現

ここでは英語朗読に必要な音声表現をみていきましょう。まずこちらの例文を読んでください。声に出して読んでみましょう。

we are having curry for dinner tonight.

音声にするとこのようになります。

何がわかりましたか?「今晩のメニューはカレーだ」ということですね。逆に言えばそれだけです。しかしもしこの発言をしている人が「カレーが大好物でみんなに言いふらしたいくらい大喜び!」だとしたら文章の場合はその前後で文章などでその説明を必要としますが、英語朗読表現を使うと音声だけでその情報を加えることができます。

同様にカレーが大嫌い(もしくは飽きている)などならこんな風

つまり朗読することで「文字以上の情報」が伝えられ、さらに自分の伝えたいメッセージ(カレーで嬉しい!カレーなんて食べたくない!)が正確に伝わるのです。さらにこのように声に表現をつけると聞き手は「面白い」と感じます。もっと聞きたい!と思って最後まで聞いてくれる、というわけです。余談ですが、会議や発表などで眠くなってしまうのは聞き手が寝不足だったりおなか一杯だったりするだけではありません。話し手の内容がどんなに面白くても「伝え方」がへたくそだと聞き手が飽きてしまうのです。表現する目的には聞き手を疲れさせないという要素もあるのです。

聞き手が飽きないのは先ほどの「感情表現」のようなものもそうですが、それ以外に間(pause)・強調(stress)・緩急(speed)・音色(トーン)・ピッチ(声の高低)などの技術を使って声に彩りを与えて書かれた文字に様々な意味を与えていきます。

こうした音声につける技術は専門用語で

      パラ言語Paralanguage・Vocalistic 

と言います。英語のウィキペディParalanguage に詳細がありますので興味のある方はこちらもご覧下さい。簡単にまとめると「パラ言語とはプロソディ*、音調、強勢、音長、リズム)声の高低(ピッチ)や音量(ボリューム)、メタコミュニケーションの一部であり、話される内容を変化させたり、ニュアンスを与えたり、感情を加えるものでこうしたパラ言語は意識的にも無意識にも用いられる」というものです。

*プロソディというのは少しわかりにくいのですが「表現」技術の一種で音読など声出して内容のあることを言う(読む)際に使われる抑揚=イントネーション(音が上がったり下がったりすること)音調(声の音色)、強制(強く読んだりするstress)、音長(単語を伸ばしたりすること、リズム(だらだらしないで聞きやすいテンポのようなもの)を指します。

話し手と聞き手が情報の交換をすることをコミュニケーションといいます。そのコミュニケーションには「言語コミュニケーション」と「非言語コミュニケーション」に分かれています。このパラ言語というのは非言語コミュニケーションの一部の音声のところにあります。

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少しややこしいのですが手話も言語コミュニケーションとされています。 では非言語コミュニケーションにはどのようなものがあるのか見てみましょう。    (発声=パラ言語)

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より一部翻訳して引用

「空間」?と思う方に説明しておきましょう。非言語コミュニケーションにおける空間や距離のことを英語ではproxemics(近接学)と言い、ここでは人との距離の違いによって相手との関係性を表現するという風に使われます。(「近いよ!」なんて言う時はその人との関係性がそこまで近くないのに物理的に近くまで寄られると威圧感や嫌悪感を感じさせる信号のようなものです)

パーソナルスペースという言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。このような図式で4つに分類されます。(Creative Commonsより)

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Wikipediaのパーソナルスペースをみると                Intimate distance=密接距離(~45㎝恋人や家族などとの距離)    Personal distance=個体距離(~120㎝・相手の表情が読み取れる距離)  Social distance=社会距離(~370㎝・手は届かないが会話はできる距離) Public Space=公共距離(~760㎝・複数の相手が見渡せる距離)

と書かれています。割と納得できますね。ちなみに男性の方が女性よりパーソナルスペースの空間が広いとされています。こうしてみると様々な「言語」とは異なる情報がコミュニケーションに影響をしていることがわかります。

長々と説明しましたがではこうした音声表現は朗読とどう関係するのか?について次に考えていきましょう。

3.音読VS朗読

英語の授業でよく使われる学習法が「音読」と言われるものです。音読とは、「文章を読んで理解し、言語を習得する上で重要な活動である」(土屋,2004)とされています。一方こちらは文科省の定義はこちら。

「音読は黙読の対語(たいご)だから、声に出して読むことは広く「音読」である」とされておりその目標は正確・明晰・流暢(正しく・はっきり・すらすら)を目標とする」(文科省,2017)

教師によるモデルリーディング(先生がお手本として読む形)、コーラスリーディング(全員で声をそろえて読む形)など様々な形式があります。英語音読が日本で普及したきっかけは1922年に文部省の英語教授顧問として来日したハロルド・E・パーマーによるオーラル・メソッドだと言われているます。オーラル・メソッドについてはまたいずれ書きたいと思いますがご興味のある方は⬆️こちらをご覧ください。

さてまずは音読と朗読の「音の違い」を考えていきましょう。皆さんも教科書でおなじみの「ごんぎつね」(新美南吉)の最後のシーンを英語で音読と朗読してみました。その違いをまずは感じ取ってみてください。

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He got up, took his musket from the wall, and loaded it with gun powder. Then, he crept up to the house, and just as Gon was coming out the back door—BANG!—he let him have it. Gon toppled over. Hyoju ran closer to see. He peered inside the house and spotted a pile of chestnuts on the floor.
“What’s this?” He looked down at Gon in surprise. “Gon, is it you who’s been giving me chestnuts all this time?”
Lying limp on the ground with his eyes closed, Gon nodded. Hyoju let the musket fall to the ground. Wisp of blue smoke still rose from the muzzle.                                         「朗読でたのしむ日本文学」青谷優子著 アルク2018

朗読の方が先ほど述べた「パラ言語」を多く使っていることに気づいたかと思います。「間」「強調」「音色の違い」「スピード」などが多く用いられていますね。このような音声表現技術を加えることで臨場感や情景描写、また登場人物をイキイキを描くことが可能になる。というわけです。兵十の驚きや最後の煙から漂う悲しい余韻などを考えながら読んでいます。届いているでしょうか。このように朗読は読み手の解釈や意図を音声化して「書かれた文字以上の情報を与えることができる」のです。

音読と朗読の関係性について個人的な見解ですが述べていきましょう。

・音読ー音に出す・わからないところをなくす(内容の理解・単語の意味・文節区切り・発音など) *聞き手を必ずしも必要としない(インプット作業でもある)
・朗読ー聞き手を意識する・聞き手に伝わるよう音声表現を工夫する・書かれた文章の背景・作者・メッセージなどを調べる・分析する→声に載せる *必ず聞き手が必要(必ずアウトプット)

朗読で特に注目したいのは「聞き手」を意識する。聞き手に伝わるように表現を工夫するという点です。

4.英語朗読とコミュニケーションの関係

        4-1英語朗読と外国語活動

英語朗読には表現があって聞くだけで色々な情報を与えることができる。そこまでは理解できたかと思います。ここからは英語朗読がコミュニケーションに与える影響・効果について考えていきましょう。

文部科学省ではこんなことを言っています。

『外国語を通じて,言語や文化について体験的に理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地を養う』
文部科学省(2017)「小学校学習指導要領 」 外国語活動・外国語編(第 2 章 P13-15)
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_011.pdf

つまりこれからの外国語教育(教科では英語にあたることが多いです)にはコミュニケーションが必要である。ということです。英語朗読を行うことは先に述べたように「聞き手に話し手の意図を伝える」ことですからまさにコミュニケーション能力の育成でもあるのです。英語の表現を外国語教育に組み込むつまり、音読指導に組み込むことがコミュニケーション能力向上の鍵となる・・・かもしれないのです。

     4-2 外国語教育も変わる・・・かも?

グローバル化が進む世の中において英語という言語は「グローバル言語」という位置づけになっています。コンピュータ用語は英語ですし、世界中で英語を使う人は(第2外国語まで含めると)2019年調べでは13億人近くもいるそうです(statista調査)。つまりネイティブでない多くの人たちがそれぞれのアクセントで英語を用いてコミュニケーションを行っているというわけです。グローバル市民として活躍するには英語はもはや不可欠となっていくわけで外国語教育の必要性はこれからますます大きくなっていくとされます。そして求められる英語力とは先に文科省が言っているような「コミュニケーション能力」なのです。

・・・となると英語を教える先生たちの役割も変わっていくのではないでしょうか?かこれからの外国語教育は「機械(自動)翻訳通訳技術が高まるにつれて担当教員の実用技能以外の適性がより求められるのではないか」(浅野,2018)というようにという従来の形からという従来の形からという形に変化する時代になってきているのかもしれません。英語を使って英語だけじゃない何か+αを教えるという形に変化する時代になってきているのかもしれません。

          4-3求められるのは人間力+コミュニケーション能力

21世紀に入り優秀なAIやロボットが日々発展する中、簡単な会話や翻訳、読み上げは機械で済んでしまう時代がもうそこまできています。正確な発音や読み間違いがない、という点からみると人間よりも機械の方が優れているともいえるでしょう。ドラえもんの「翻訳こんにゃく」のような技術(ポケトークなど)も もうすでに開発されていることを考えると「外国語を勉強するってなんだろう?」という人もいるのではないでしょうか。

しかし、コミュニケーションという観点からみると、人間の方がまだまだ機械よりも優秀です!

①修正力②挽回力③表現力 という力が人間にはあり機械には(今のところ)ないのです。①読み上げロボットは途中で間違いを正すことができませんし、情報を付け加えたり、削ったり、繰り返したりという「聞き手に沿った」その場でのカスタマイズされたアドリブ力がありません。話し手の力でより分かりやすく伝えることが可能です。また②機械は一度ストップしてしまったりするとそれでThe End。同じところからスタートすることはできますが今までの失敗を挽回することはできません。人間ならばスピーチやプレゼン、授業やアナウンスメントなどの途中で「とちって」しまっても持ちなおすことができるのです。そして最後に大きな感動をもたらすことだってできてしまいます。この盛り上げ、感情に訴えることが③の表現力であり、これこそが人間を人間らしくさせるコミュニケーション能力を高める力なのです。

        4-4これからの外国語教育と朗読の関係

こうした人間らしい表現力をどう培うか。学校の外国語教育の出番です。でもいきなりディベートとかスピーチとか英語劇をするとかそれはなかなか難しいですし、先生にとっても負担が大きいです。最初の一歩は音読指導の中にに表現を加えて「朗読」にすることから始めればいいのです。教科書の英文を正確に読み上げる際パラ言語技術を入れることで文字以上の情報を加えて「聞き手にわかりやすい」表現を工夫していくということです。聞いてる人が「わかった!」面白い!と思う音読は感想とどうしたらできるのかな?という疑問「自分もやってみたい!」というモチベーションを生みます。コミュニケーションの始まりです。英語の文章を聞いて理解し、感じることができると異文化理解にも繋がりますし「言葉以上の情報」を取り入れることができるのです。「英語を学ぶ」のではなく「英語で+αを学ぶ」そんな新しい英語の授業が英語朗読というきっかけで誕生するのではないかと思います。教科書の音読や物語の読み聞かせだけにとどまらない→英語朗読という表現方法を学習に取り入れてスピーチやプレゼン、イキイキした会話に繋げてみてはいかがでしょうか?

 「英語朗読」興味をもって頂けたでしょうか?

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参考文献

浅野亨三(2018)「人工知能時代の外国語教育」『南山短期大学部紀要』終刊号, pp.95-105
石丸直子(2014)「高校教育における音読指導の位置づけ:教師のビリーフという観点から」.『言語文化共同研究プロジェクト』pp27-36      江戸川春雄(1997)「師範学校における英語教育の歴史―明治・大正期―」. 『日本英語教育史研究』12巻 pp123-161                 小原弥生(2010)「中学校の英語教育における音読の種類・目的・使用法 ―段階別の分類をふまえて―」 言語教育研究 創刊号           門田修平(2007)『シャドーイングと音読の科学』コスモピア株式会社  國弘正雄(1999)『英語の話し方』たちばな出版 
久保田章,磐崎弘貞,卯城祐司(2001)「新学習指導要領にもとづく英語科教育法」. 大修館書店
鈴木寿一(1997)「進学校の英語教育」『現代英語教育』3月号 研修社  土屋澄夫(2004)『英語コミュニケーションの基礎を作る音読学習』研究者
文部科学省(2017)「小学校学習指導要領 」 外国語活動・外国語編・「補習授業校教師のためのワンポイントアドバイス集」. 7音読朗読



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