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フラッグシップ対ファントム タイマン勝負

今回,縁あって二つのハイエンドを所有したので比較してみる.どちらかを持ってる人が,もう片方のシューズをイメージする助けになれば.

足のサイズについて.筆者は右足25.3cm,左足25.6cmで靴下履き.サイズはどちらもUS8を履いている.ボクシングの判定のごとく,ten point must systemで採点していく.

第1R 足入れ,フィッティング

フラッグシップ 8 vs 10 ファントム

いきなり大差が付く.フラッグシップの足入れはかなり悪く,クライミングシューズ全体を見ても悪い方に入ると思われる.思いっきり押し広げて足を突っ込み,踵を押さえてグリグリ押し込んでようやくフィットする.ただ,入ってしまえばフィットはベルクロ一本締め相応のレベルで良い.

一方,ファントムは平均より明らかに良い.イボルブの特徴としてタンが割れて大きく開く構造を有するため,しっかり足を入れられる.レースアップとベルクロと合いの子みたいなクロージャーシステムで,かなり指先側からきっちり締め込める.好みにもよるだろうが,フィット感は完全にファントムの勝ち.

第2R 爪先 (乗り込み性能)

フラッグシップ 10 vs 10 ファントム

特性は異なるものの,得意分野,苦手分野に大きな違いはない印象.フリクションで押し切るか (フラッグシップ),ミッドソールの作りで爪先力を確保するか (ファントム) という違いがあるように思われるが,いずれも最強レベルに強い.足裏のダイレクト感は僅差でフラッグシップが上回ってくるが,実際の登攀性能においては別に有意な差ではない.スラブもまた同程度に苦手と思われる.まあ,苦手と言っても他の靴と比べて劣るわけでもないが.

第3R スメアリング

フラッグシップ 10 vs 9 ファントム

フラッグシップも別に柔らかいわけではないが,どちらかというとフリクションの良さで押し切っているような雰囲気もある.

第4R トーフック

フラッグシップ 10 vs 9 ファントム

そんなに大差ない,というかどちらも良い.総じてレベルは高い.タイマンならばトーラバーのフリクションと,足先の動かしやすさの分だけフラッグシップが僅差で勝つも,どちらもクライミングシューズ全体の中ではハイレベル.

第5R ヒールフック

フラッグシップ 9 vs 10 ファントム

これは好みと足の形の問題が大きい.ファントムのヒールはアグロの流れを汲む超硬ヒールで,かつ自身の足の形に合っている.フラッグシップも硬い方針で作ってあるのだが,硬い系ヒールの完成度ということで言えばファントムの勝ち.フラッグシップはヒールラバーのフリクションは良いものの,ヒールラバーにフリクションを求められる場面がそんなにはないので少々宝の持ち腐れかもしれない.

総合評価

フラッグシップ 47 vs 48 ファントム

当初,履いてみた直感では「僅差でファントムかな」などと思っていた.項目ごとに点をつけてみたところ,直感での評価と似たような結果となった.本当にちょっとファントムの方が良い,という感じで,これは好みにより逆転される範囲だと思われる.具体的には,ヒールは自身の好みが出ていると考えていて,ここは人によって逆の点を付けられることは大いにありそう.
あと今回は評価項目に入れていないものの,靴の堅牢さについてはファントムの圧勝である.イボルブは全般的にそうなのだが,アッパーにゴム布のパーツがなくビロンビロンにならない,また全体的に作りが分厚く重いことが理由となる.裏を返せばファントムは重量級の靴なので,軽い靴を好む人にはファントムは全く合わない可能性がある.
ちなみに,ワールドカップその他のコンペでプロクライマーに履かれているのは圧倒的にフラッグシップであり,ジムで見かける限りフラッグシップの方がユーザが多い.楢崎智亜選手がフラッグシップを使っているなどの要因もすごくありそうだが,少なくともコンペに出てくる「ハリボテに乗る系」にはファントムはあまり向いていない.ファントムはより外岩向きかもしれないが,自身が外岩で試してないのでわからない.

イボルブはいい靴を作るのでさらにメジャーになれば良いと思う.

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