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Fairy tale from my soldier

玉造由希香

Day 5, From the another person

ゆっこちゃんはあの折り紙を見てないっていうてたけど、セロテープめくったらあかんねん。ほんま大人って子供には「言われたことちゃんとしなさい!」ってガミガミ言うくせに、大人になったら言われたことせんでも良いんやろか。
あんななるなんて、お父ちゃんがよく言うアレやな『世も末』。こういう時に使うねんな!にひひひひ〜!

とにかく、セロテープ外して効力が弱まったから、作り直しといてあげなあかんわ。ま、まだ三枚あるから良かったけど、あの人どうやってこっち来よか、今頃慌ててカバンやらひっくり返して探してるに決まってるわ。ちょっと反省しとけば良いねん。

あとはこの日記のこと、教えてあげとかなあかん。最初見せた時、絶対忘れてるおもたもん。あの顔。『スネイルでしょ』なーんていかにも覚えてまっせぇっちゅう感じで言うてきたけど、お母ちゃんに見つかって本気でヤバい子と思われたんか、黙って没収されたん覚えてへんのやろか?いまだにどこに行ったかわからへんし。

・・・・・

…ゆうちゃんはいつも何冊もノートを持って歩いていた子でね。何を書いているのか、おばあちゃん見ないでって言うから、知らんぷりしてたけど、長崎に来た時も海に泳ぎに行ったかと思ってたのに、波止場でずっと何かを書いていたんですよ。

くじ引きの「進おじいちゃんのノート」あれは私もびっくりしたねぇ。
お盆祭りがあるから、子供たちにくじ引きの景品を各家庭から一品ずつ出そうって決まってね、最初はお菓子を準備してたんだけど、押入れを掃除していたらいろいろ入っていた箱の中に、古いけど使ってないノートが出てきて、おじいちゃんのだったけどこれも出しちゃえと思ってリボンかけて出したのよ。

そしたら、ゆうちゃんが当たっちゃってねぇ。100人くらい子供達いたのに。
でもあの精霊流しの後、ゆうちゃんが後ろを振り返りながら歩いていたから、きっと進おじいちゃんがお家まで送ってくれてたんだと思いましたよ。

でもね、そのノートさん、どうしてもお家に帰ってきたかった訳があるみたいでね、私は次の日、ゆうちゃんが海にそのノートを持って出かけたあともう一度押入れの箱の中見てみたの。
そしたらメモ用紙が出てきて、夫の字でこう書いてあったんですよ。

『神通力とは己の鍛錬により開花するものなり。我ら人間たるもの、願望ひたすら願ひつつ努力するべし。鋼より強靭な願ひ、天界にて形造られ今に現れ給う。君、怠る事なかれ。この帳面にて書き綴れし遍く文字列、時空を経て全て開花するものなり。』(うん、おばあちゃん。今はわかるけど、当時は難解笑 by由希香)

きっとこれは夫が博に宛てたメモだったのかもしれません。
私はこれをゆうちゃんに伝えたら、ゆうちゃんはそのメモを、夏休みの間中ずっと持ち歩いて読んでいてね。意味が分かったのかどうか、突然そのノートにたくさん何かを書き始めて、その姿を見て私はゆうちゃんが何かに取り憑かれた(アタリ!)のかと思うくらいだったんですよ。

その翌日、私はゆうちゃんとお墓参りに行ったのですがね、夏だからすぐお花が枯れちゃって、私は親戚中のお供えのお花や干菓子を下ろして墓地に置いてあるゴミ箱に捨てて、燃やしちゃったんですね。最初は消えるまで危ないから見てたんですが、なかなか火も消えないし陽は沈むし、ヤブ蚊が多く出てきたからもう帰ろうってゆうちゃんに言ったら、素直な子なんですぐについてきたんですよ。
でも山を降りたら急に「あのままだと山火事になっちゃう!!」って慌て出してねぇ、大丈夫だって言うのに見に行くって聞かなくなっちゃって、陽もとっぷり暮れて来たから、ゆうちゃんに
「あの墓地はこの前まで『土葬』をしてたから、積み上げられた石が肉体が朽ちていくとともに、ころころ…ころころ…ってちょっとずつ崩れて転がってくるんだよ……。」
っていう実話をしましたらね、泣いて行かないと言うからほっとしたものの、そしたら急になんやらそのノートに書いたかと思うと、山のほう向いてぶつぶつ唱え出しまして、「おばあちゃん、これでもう大丈夫だよ。」って言うから、よかったねぇと言って寝かせたんですよ。

ゆうちゃんが寝てから1時間くらい経って、突然雷が鳴り出して、それはそれは大雨が降ってきたんです。この夏休みで初めてくらいの。
あ〜これで明日の朝の畑の水やりしなくて良いわと思って寝ましたが、よく考えてみたら、アレでしたね。燃やして来たままのお山のお墓のゴミ箱。すっかり火は消えたと言うことだったんですねぇ…。
あれが、ゆうちゃんの言ってた「大丈夫」の意味だったんでしょうかね…


このノートに書いたことは、将来その通りになる。これはおじいちゃんがくれた魔法のノートや。うちはこのノート持ってる間中、魔法使いになれるねん!

①犬を飼っている。色は茶色と黒色。
②ミケにまた会える。(メス)
③新幹線に乗るといつも富士山が見える。
④51歳の自分に会う。
⑤6階建ての一番上に住んでいる。
⑥私の服がいっぱい入ってるタンスをいっぱい持っている。
⑦作家になって、表彰式に出ている。
⑧スチュワーデスさんになって、世界中飛行機で行く。
⑨パリのエッフェル塔とハワイに行く。

うーーーん。まだまだあるねんけどな…
でも『自分に会う』って言うのどうしたらいいのかなぁ。いっぱい聞きたいことあるし、たくさんこの『そうなったら書く表』に書きこむって教えてあげなあかん。

あ、そうか!切符があったらどこへでも行けるし、切符作ろう!ほんで、こっちの世界に来てもらったら良いわ!

「お母ちゃん、折り紙どこにあるのん??」
「あんたがちゃんとなおさへんから、お母ちゃん知らんわ!どこ置いてんな?!」
「うーーん…全然覚えてへん…。」



闇の中あった重たい十字架は、このシャワーのミストのように雲散霧消していくに違いない。私はようやく何かを持ち続けることからの解放を感じた。すべては私が望み、私がやって来たことなんだ。今からでも遅くない。私が傷つけたであろう全てのものや人へ、ずっとずっと祈ろう。

ドアを開けるとキネマが寝室に向かおうと歩いていた。その寝室のドアの先に、エコバッグが倒れているのを発見した。私は駆け寄って拾い上げた。
テーブルの上に中身を全部出してみた。
豆乳が4本。そして、折り紙は、入っていなかった。

続く





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