亡き父が残した伝統 ROYAL HOSTのパンケーキ
2017年に永眠したわたしの父が、わたしたちに遺してくれた我が家の小さな伝統というべきものがある
それはおよそ誰にでも可能で、あえていえばその「お店」さえあれば、本当に誰でも可能なのだ
わたしたち三人兄妹は、幼い頃からよく習い事に出されていた
水彩画に習字、水泳に剣道
それは両親の教育方針というのもあるだろうが、そのときの80年代という時代背景、あるいは、福岡の小さな田舎町ではそうした習い事にでも出ない限りは、周りには本当に何も遊ぶ場所がないという田舎特有の地域性だったのかもしれない
そうした習い事で「進級」、つまり例えば、習字の昇級試験で位がひとつあがったときなどは、父は喜んで外食に連れていってくれた
そのお店というがわたしの福岡の実家にほど近い、「ROYAL HOST 水城店」
ここで父からの「ご褒美」として、パンケーキを思う存分に頬張ることを許されたのだ
水城店は福岡の店舗の中でも、最も古くからあるように思える
近くに緑や大きな歴史公園があるせいか、古い洋館を思わせる重厚でしっかりとした店構えで、店内の厚い絨毯を踏みしめながら通された席へ進むと、いつもクラシック音楽が小さな音で心地よく聞こえてくるのだ
ここのパンケーキの味は、広く、よく知られている通りに、長年まったく変わることがない
いつでも美味しく食べることが出来て、唯一、当時と今の違いは、たぶん間違いないだろうが「メイプルシロップ」にある
当時、それはかけ放題で(笑)店員の方が小ぶりで美しいガラス容器に入ったシロップを持ってきてくれると、後はどうぞご自由に!ということで、父が微笑みながらなみなみと注いでくれた
2年前に可愛い姪と甥を連れていったときには、それは抑えられ(おそらくは)一食分としての限定的な量しか提供されなくなっていたのだ
シロップの量こそ当時と違えど、やはりいつ食べてもここのパンケーキは本当に美味しい
そして今、わたしは当時の父と同じ40代になって改めて思うのが、そのときの父の心境、いや思惑がよくわかるような気がする
戦後、関東で生まれ育った父には、やはりアメリカの影響をよく見れてとれた
わたしたちには当たり前の、例えばコカ・コーラなどは当時の幼い父には衝撃だったという話を本人から聞いたような記憶がある
真っ黒な飲み物で、しかも飲むと口が炭酸でシュワシュワする・・・
パンケーキも同様にアメリカから持ち込まれたもので、柔らかなケーキ生地、バターの豊かな味わい、メイプルシロップの蠱惑的な甘さがー
だから父は、子供たちに「ご褒美」を与えるという名目で、自分でこのお店を選び出し、自ら進んで来ていたに違いない
その証拠は何よりも、晩年の父はこうした糖分接種のし過ぎが結果的に寿命を縮めることになってしまったからだ・・・
だが、父が遺してくれたこの我が家の伝統は、まず何よりも長男であるわたしが踏襲することにした
わたしには子供がいないので、この伝統の矛先は自然と2人の姪と1人の甥にメイプルシロップのような愛情と共に注がれることになり、今月の帰国時には全員集合でこの水城店に行く予定だ
画像は全て2年前に行ったときに撮影したもの
このとき大人5人に子供3人、皆に食べたいものを自由に選んでもらい、食後には姪にパンケーキも注文したが、そのお会計は・・・
しかしみんな大満足して、支払った代価としては一切問題がない
問題ないが、今からでも少しキャッシュを確保しておくことにしようか・・・
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