見出し画像

我輩は猫である 第3回(仁義なき戦い編)

我輩は猫である。名前は無くは無い。
姓は眼(ガン)、名はタレオである。
我輩のご主人様の隣の前髪が白髪だらけの男が勝手につけた名前だ。
そう、我輩は名前の無い野良猫であったが、なぜか最近は今のご主人様に餌も与えられダンボールの掘立小屋まで作ってもらっている飼い猫なのだ。
生まれつき目が悪く目を細める癖があり、目つきが悪い、それで ご主人様の隣の前髪が白髪だらけの男が我輩を勝手に眼(ガン)タレオと言い放つのである。
通りすがりの人は我輩を見て、松方弘樹と梅宮辰夫を足して二で割った顔をした怖そうな猫と笑い
なぜだか”かわいい〜。”とか云って去って行ったりもする。
すっかり自堕落になってしまった。
昔はこうじゃなかった・・・。
前はご主人様の隣の家の軒下にいる鼠を捕まえようと、わずか10cmばかりしか無い玄関の扉の下を瞬時にくぐり抜け、崖下に飛び降りるように囲い壁から家の裏にあるガス台の上に飛び移り、喉が乾けば隣の前髪が白髪だらけの男の目を盗んで水瓶の水を飲んだものである。
そんな我輩にも心を許した”つるみ猫”がいた。
前髪が白髪だらけの男は奴のことを牛(ウシ)と呼んでいる。
顔から足先まで体が白と黒だけのマダラ模様の猫で、パンダと同じなのだが全然可愛くなくホコリにまみれて、パンダと云うよりは小汚い牛(ウシ)に似ているのである。
奴とはよく競い合って隣家の鼠 を追っかけたものだ。
ところが我輩はなんの拍子か飼い猫になってしまった。
鼠を追っかけなくても、いつもご主人様の玄関前に座っていると餌が出てくるのである!こんな幸せなことはない。
ただ、我輩が食べ過ぎてダンボールの掘立小屋の中でウトウト昼寝をして餌から目を離す隙(すき)に、奴が何でお前だけいい思いをしてるんだと云う態度で瞬時に餌をすべてくわえて盗んでいくのである。
昔の餌を分け合った恩義を忘れたか!食い物であれば味なんて関係なく何でも飛びついて来る奴に
”この豚野郎!!!!!!!!!!”
??ちょっと違うな・・・
”この牛野郎!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!”
と、叫ぶ日々なのである。
飼い猫も楽じゃない。
そんな奴とも 隣の 前髪が白髪だらけの男が作った音楽が窓から流れて来ると揃って耳を傾けるのである。食い物の仁義なき戦いは休戦。
幸せな時間が過ぎるのであった。
みなさんも一度隣の家の 前髪が白髪だらけの男が作った音楽を聴いてみるといいと思うぞ。
とても心が安らぐ。CD売ってるらしい。ライブもやってるみたいだ。
一度行ってみたらいい。結構安いとのことだ。

https://yukio.asia

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?