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経済最前線

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日本経済最前線、世界経済最前線、AI(人工知能)、ブロックチェーン、仮想通貨、フィンテック
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2019年12月の記事一覧

大企業の中小企業化と正社員の非正規化

◇大企業の中小企業化  日本の賃金が上がらないのは大企業の賃金が上がらないからだ。中小企業では賃金は上がっている  2012年10-12月期から2018年10-12月期の期間を見ると、資本金10億円以上の企業では賃金が若干低下しているが、資本金2000万円~5000万円の企業では賃金が1割程度上昇している(『野口悠紀雄の経済データ分析講座』、図表3-1)。  これは、中小企業では人手を確保するために賃金を上げざるをえないことを意味している。  そして、これらの企業では、人員

中国の国際的膨張は続くが、経済成長率は鈍化

◇一帯一路への中国の投資が拡大  中国は、一帯一路の地域での港湾への投資を積極的に進めている。    事業主体は、中国港湾運営大手の招商局集団(チャイナ・マーチャンツ)と中国海運最大手の中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)。  ギリシャ最大港のピレウス港に積極的に投資。中国からの積み荷を同港で揚げて、鉄道輸送に切り替え、欧州各地へ配送する。  ただし、問題も多い。東アフリカのジブチ港では、トラブルも発生している。また、港湾が軍事転用される怖れもある。 ◇ デジタル人民

日本経済の長期的な経済成長率はどのくらいか?

◇ 長期的にはゼロ成長になる可能性が高い  日本の長期的な経済成長率を評価してみよう。  まず実績を見ると、2012年から2018年における実質GDPの年平均増加率は、1.16%だ。  OECDの長期予測は、この程度の成長率が今後も続くとしている。しかし、それが実現できるかどうかは、大いに疑問だ。  日本経済は、今後、労働力の減少に直面する。  仮に年齢別の労働力率が不変であるとすると、2020年において63,734千人である労働力人口は、2040年には53,531 千人と

日本経済は、賃金下落と消費停滞から脱却できるか?

◇ 2020年度の実質成長率見通し1.4%は、実現できるか?  政府は18日、「令和2年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」 を閣議了解した。  それによると、2020年度の実質国内総生産(GDP)成長率は1.4%で、19年度の0.9%の見込みよりも高まる。  名目成長率は2.1%と、19年の1.8%より高まるとしている。  消費者物価の上昇率は、0.8%を見込む(19年度見通しは0.6%)  実質輸出は、19年度の前年比は1.2%減だったが、20年度には前年度比

写真の検索技術が日進月歩

保存しておいた写真の中から目的のものを引出すのは難題でしたが、キーワードによる検索が可能になりつつあります。情報整理の基礎条件が大転換しつつあります。 ◇ Google フォトで写真にタグ(メモ)を入れる機能  iphoneでの利用が一時停止されていましたが、再び使えるようになりました!  写真を開き、右上の三ツ星クリックすると、写真の下に「説明を追加してください」という欄が開きます。  ここに入れた言葉を検索語として、検索することができます。 ◇ 写真に写っている文字で

イギリスのEU離脱は、愚かな決定とは言えない

 ブレグジットが決定的になった。重要なのは、ロンドンが世界の金融センターとしての地位を維持できるかどうかだ。仮に、その地位が揺るがないとすれば、EU離脱の動きが他の加盟国にも広がる可能性がある。   ◇ なぜブレグジットなのか?  12月12日のイギリス総選挙で与党の保守党が下院の過半数議席を獲得し、イギリスのEU離脱(ブレグジット)が決定的になった。  この問題の背景に、移民の急増に対するイギリス国民の反発があると言われる。  しかし、イギリスの移民の受け入れは、他のEU

米中貿易戦争は一時休戦だが、貿易と生産の落ち込みは続く

 米中貿易戦争は一時休戦になったが、高関税は残っている。世界経済の覇権を巡っての争いは容易には収束しない。この影響で日本の輸出は大きく落ち込み、製造業の利益が急減少している。 ◇ 第1段階合意は一時的な休戦に過ぎない  米中政府は12月13日、貿易交渉で「第1段階の合意」に達したと発表した。  その主要な内容は、つぎのとおりだ。  第1に、12月15日に予定していたアメリカの対中制裁関税「第4弾」の発動を見送る。中国も報復関税の発動を見送る。  第2に、アメリカが制裁関税を