瞳

闇に光るプロビデンスの目

これは357回目。フリーメイソンのことです。都市伝説という人もいます。が、そういう組織があることは事実です。でも、誰もよく知らないのです。

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いったい、フリーメーソンとはなんのか。よくわからないのである。中世、石工の組合から発したとも言われているが、起源も実際はっきりしない。古代エジプトに起源があるとも言われるし、一方では裏の世界で暗躍する秘密結社であるという側面が喧伝されてしまい、なんでも謀略はフリーメーソンだ、という話にもなりがちだ。

現在、フリーメーソンの総本部は、英国にある。グランドロッジと呼ばれており、各国に支部としてのグランド・ロッジがあり、そのさらに支部として、ロッジが複数存在している。

フリーメーソンの徽章は、有名な「定規とコンパス」である。その中に、「G」がおかれている。

(フリーメーソンの徽章)

151113グノーシス


結社の目的は、「会員相互の特性と人格の向上をはかり、良き人々をさらに良くする」ということになっている。

この定規とコンパスの結合は、形状的にダビデの星(ユダヤのシンボル)を示し、男女、陰陽、天地、精神と物質など世界の二元性の融和を表現している。中央にある「G」は、至高の存在を意味しているが、神God、幾何学Geometry、栄光Glory、寛容Grandeurなどを意味する。

さらに意味深長なのは、「G」のもう一つの意味である、グノーシスGnosisであろう。グノーシスというのは、オリエントにもともと起原を持つ、古代キリスト教の中の最大の異端派である。

やや脱線するが、ここでグノーシス派の教義を、ざっくり確認しておこう。グノーシス派=フリーメーソンではないだろうが、かなりこの流れを組んでいる可能性は高いので、原点の一つであるグノーシス派基督教団の教義を見ておいて損はない。

こんな具合である。

・この世を創造した神(旧約聖書のヤハウェ、エホバ)は、唯一絶対神ではない。全能にはほど遠い、無知で傲慢な劣位の神である。
・この物質世界は、われわれを肉体に閉じ込めておく邪悪な世界である。救済とは、この物質世界から逃れ、天の家に還ることである。
・悔い改めても、善行を積んでも、意味はない。唯一、「真理」を知ることによってのみ、救済される。
・すべての人間が救済されるわけではない。救済されるのは、内に輝く神性を宿す人間だけである。

代表的なところはこんなものだろうが、細かいことに首を突っ込んでいけば、マグダラのマリアはイエスの子を生んだとしていたり、教会のような権威を完全否定していたり、と古代基督教団にあっては、かなり異端派ぶりを発揮していた。古代、カトリック教団によって異端として弾圧され、グノーシス派が奉じる多くの「聖書(外伝)」は焚書坑儒されている。わずかに考古学によって、トーマスの福音書、ユダの福音書などの断片が発掘され、次第にその内容が明らかになりつつある。福音書は、カトリックやプロテスタントが聖書としている5つの福音書だけではないのだ(映画「ダ・ヴィンチ・コード」のモチーフである。)。

なんといっても有名なのは、そのシンボルである。「プロビデンスの目」と呼ばれる、「真理の目」だ。

(プロビデンスの目)

151113プロビデンス


ふつうこれは未完成のピラミッドの頂上に、真理の目が輝いている。このイメージは、驚くべきことにアメリカ合衆国の「国章」そのものである。


(アメリカ合衆国の国章)

151113アメリカ


なんと、米ドル札にも、これが描かれている。


(米1ドル札 裏側の左にピラミッドとプロビデンスの目がある)

151113米ドル札


そして同じものが、フランス革命の「人権宣言」のトップにも置かれている。

(フランス人権宣言 全文表題の上にピラミッドとプロビデンスの目が輝く。)

151113人権宣言

現在、マンハッタンにある「自由の女神」は、当時フランスのフリーメーソンから、米国のフリーメーソンに送られたものにほかならない。こういう事実を並べていくと、だんだん背筋が寒くなってくる。では、一体歴史上、どんな人物がいたのであろうか。


米国では、ベンジャミン・フランクリン(独立宣言文草案者)、マシュー・ペリー(黒船、日本遠征隊の指揮官)、マッカーサー、マーク・トゥウェイン(小説家)、フォード、カーネル・サンダース(ケンタッキーフライドチキン創業者)、コーデル・ハル(対日戦の事実上の最後通牒「ハルノート」をつきつけた国務長官)、ジョン・エドガー・フーバー(FBI初代長官)、ジョン・スタインベック(小説家)、ジョセフィン・ベーカー(ジャズシンガー)、デューク・エリントン(ジャズミュージシャン)、クラーク・ゲーブル(俳優)、ジョン・ウェイン(俳優)など多彩な人物の加入者がいる。歴代大統領のうち、初代ワシントンを始め、合計15人もいるし、ホワイトハウスを設計した人物も、フリーメーソンであった。

なにやらこう聞くと、結構すごい組織なのかもしれないと思ってしまう。欧州にいたっては、もっと凄い。クーベルタン男爵(近代オリンピックの創始者)、モンテスキュー、ヴォルテール、ジョゼフ・ギヨタン(ギロチンの考案者)、ミラボー、ラファイエット、サンシモン、クロード・リール(「ラ・マルセイエーズ」の作詞・作曲)、ナポレオンとその兄弟たち、スタンダール、ヴィクトル・ユゴー、ギュスター・エッフェル(エッフェル塔建設者。ガーターベルトの発案者でもある。)、バッハ、シラー、ベートーヴェン、ハイネ、シュリーマン(トロイ遺跡発掘者)、ブラームス、ヘルマン・ヘッセ、モーツアルト、ガリバルディ(イタリア統一の英雄)、プッチーニ、ダーウィン、ジェンナー、ネイサン・ロスチャイルド(英ロスチャイルド財閥の開祖)、コナン・ドイル、チャーチル、アレクサンダー・フレミング(ペニシリン発見者)、トーマス・リプトン(紅茶王)、オスカー・ワイルド(詩人、作家)、フランツ・リスト(ハンガリーの作曲家)、アンリ・デュナン(赤十字創始者)、ユング(フロイトと並ぶ、心理学の大家)、オナシス(ギリシャの海運王)、シベリウス(フィンランドの作曲家)、プーシキン(ロシアの詩人)、バクーニン(無政府主義の教祖)、ツルゲーネフ、トルストイ、シャガール(画家)、タゴール(インドの詩人)、ホセ・リサール(フィリピン独立運動家)・・・もう挙げていったら、それこそキリがないのだ。

幕末に日本にきた長崎のグラバーはフリーメーソンであったし、彼に関わった志士たちの多くもフリーメーソンになったと言われる。伊藤博文などその典型だとされるが、坂本龍馬などは、もろにそのメッセンジャーボーイだったとも言われる。もっとも噂の域を出ないので、本当のところはわからない。三菱財閥の祖・岩崎弥太郎もフリーメーソンだったと言われており、龍馬暗殺にも弥太郎がからんでいるという説はある。

日本の著名人でフリーメーソンであることがはっきりしているのは、先の鳩山一郎のほか、東久邇宮稔彦王(ひがしくにのみやなるひこおう)のような皇族もいるし、びっくり仰天なのは、小泉純一郎、進次郎親子が近年入会しているという話だ。どうも、嘘ではないらしい。ただ、これは公に裏がちゃんと取れている話なのか、わからない。小泉元首相は、米ブッシュ元大統領と非常に親しかったが、ブッシュは「スカル&ボーンズ(髑髏と骨)」というフリーメーソンの下部組織のメンバーであったことから、もしかするとブッシュから入会を勧められたのかもしれない。

ただ、おかしな感じもするのだ。こんな話が表にでてきているくらいである。秘密結社で、国際政治に隠然たる威力を持っているにしては、あまりにも表で騒がれていすぎやしないだろうか。本当の秘密結社というものは、誰にもその存在すら知られないというのが普通のような気がするのだ。

あるいは、友愛を旗印にしたこのフリーメーソンというものは、本物の恐るべき秘密結社が、それをカモフラージュするための、ダミーの組織なのかもしれない。本物は常に藪の中にいて、正体を見せないものだ。フリーメーソンが、アンテナの役割を果たす触手だとすれば、本体はもっと恐るべきものだということになる。

かといって、ただの友愛クラブであり、名士としての名詞がわりのようなものにすぎないとしたら、これまた不可解なことがある。たとえば、カトリック教会は、フリーメーソンを理神論であるとして排斥している。

理神論とは、世界や宇宙の創造者としての神は認めるが、人格的存在としては認めず、人間理性への介入はありえない、という立場である。ただし、フリーメーソン加入に際しては、本人の宗教の別をとくに問われない。

こうしたフリーメーソンに対して、カトリックは聖職者・信者のフリーメーソン加盟を禁じており、破門に付している。プロテスタント各宗派も、こぞってフリーメーソンを黒魔術集団、オカルト集団として、忌避している。イスラム圏では、ユダヤ組織だといって、これまた敵視している。

こうなってくると、とてもただの友愛クラブとは言いがたい。やはり、表のダミーとは別に、その本当の正体というものが、裏に存在しているのかもしれない。なにしろ、蕎麦屋の亭主が、フリーメーソンに入っているくらいであるから、それが国際政治を動かしているとも、到底思えない。

と思えば、米NBAのバスケット選手だったデニス・ロッドマンは、フリーメーソンである。彼は、たびたび北朝鮮を訪問しており、これはよくニュースでも取り上げられている話だが、金正恩総書記と懇意なのである。一説には、金正恩がよく懐に手を入れる仕草をするが、(ナポレオンもこの仕草で有名であった)これは、フリーメーソンの特徴的なサインなのだそうだ。ナポレオンを気取っているだけだ、という説もある。金正恩が欧州での学生時代にフリーメーソンに入っていたのだ、という説もあるのだが、当時はまだ未成年なので、加入できなかったはずだ、とも言われる。

日本でも意外な人物がフリーメーソンである。たとえば、テレビCMでおなじみの、高須克弥氏だ。高須クリニックの総帥だ。彼も、フリーメーソンであり(公言している)、階級もけして悪くないようだ。

高須氏は、偏見の多かった美容整形という分野を、今日のような「当たり前」の認識にまで引き上げるという点で、確かに功労者であったろう。しかし、その言動は非常に不思議なものがある。

K-1のリングドクターで知られるようになったりしたわけだが、世界的に慈善事業を積極的に行っており、自身は京都の本願寺で得度、出家してしまった。

年収50億円というこの人物は、アメックスのセンチュリオンカード(いわゆるブラックカード)を持っている。

詳しくは知らないが、ざっとこれまで読み聞きしてきた限りでは、チベットの孤児や難民の救済にも力をいれていることから、かなり反中国的、右的な志向が強いようだ。彼の言説には、ナチスに対する高い評価も飛び出している。

「戦前、ナチスドイツの経済政策は成功したんだよ。雇用も回復しハイパーインフレも押さえ込み。全てがうまくいっていたよ。戦争に勝っていたら枢軸国が今の国連みたく世界秩序を作ってたに違いない」

「ナチスの構想は現代を凌ぐ。第三帝国が完成したのを見たかったよ。」
「ヒトラーはいくつかの間違いをしたかも知れないが(おそらくユダヤ撲滅や、戦争計画や戦略のことを指しているのだろう。筆者註。)、僕は少なくとも欲深の嘘つきではないと思います。」

※筆者注:ヒトラーは、オリンピックがフリーメーソンとユダヤによるものだと認識していたから、ベルリン・オリンピック開催を嫌がった。側近たちから、国威発揚の良い機会だからと説得されて、いやいや承諾した経緯がある。実際、第二次大戦勃発後は、多数のフリーメーソン会員が拘束され、強制収容所送りとなって殺害されている。彼らは一様に、赤い逆三角形のマーク(ピラミッドを逆さにしたわけだ)を服につけられ、フリーメーソンだとわかるようにされていた。

ご覧の通り、なかなかのタカ派ぶりである。この高須氏が、では、フリーメーソンであるということに一体どういう意味があるのかは、当然ながら、皆目わからない。

ことほと左様に、なんだかよくわからないフリーメーソンだが、わたしの単純な妄想と邪推では、やはり裏に本物の正体があるのだろう、と思う。そして、ダミーとしての表のフリーメーソンは、ダミーである一方で、本体からときに利用されたりしているのだろう。一種の広告塔である。そんな気がする。

たとえば、ロータリークラブ創始者のPPハリス、ライオンズクラブ創始者のメルビン・ジョーンズ、いずれもフリーメーソンである。ロータリーやライオンズが、秘密結社であるとは到底考えられず、ごくありがちな名士会にほかならないのだろうが、これがまさにアンテナ、触手のようなものだろう。触手には、本体の意図はわからない。ただ、各地の名士を糾合して、重要な人材になると判断されれば、どこからか「声がかかる」ということになるのかもしれない。

会員は"Brother"(兄弟)と互いに呼びあう。会員は秘密の符牒(ふちょう)や握手法で「兄弟」かどうかを見分け、「兄弟」はいざという時は助け合うことになっている。ちなみに、日本のグランド・ロッジによると、世界で会員数は300万人であるという。ただ、ウォールストリートジャーナルによると、2000年代に入って300万を切り、現在は140万人としている。日本の会員数は、300人ほどだそうだ。無心論者は、加入できない。

日本のグランド・ロッジは、ちょうど東京タワーの足元にある。「東京メソニックビル(メソニックとは、masonic=メイソンの、という意味だ)」にある。このビルは、戦前、日本の海軍士官の親睦団体であった「水交社(海軍省の外郭団体)」の本部ビルだったところだ。GHQによって解散させられ、空きビルとなり、それを米軍関係者がサロンとして使用始め、マッカーサーがこれをフリーメーソンのロッジにしていったようだ。

後、復活した水交社から返還要求訴訟が起こされたが、和解。現在に至っているが、今のビルは建て替えられており、一室には水交社の応接室が再現されている。この近辺にも、彼らは複数のビルを所有しているが、旧帝国海軍系の人脈とつながっているようなキナ臭さがある。もっとも、先の「Yes! 高須クリニック!」の高須氏は、「フリーメーソンが、闇の謀略組織だなんて、ただの都市伝説ですよお。純粋な慈善団体なんですからあ。」とのたまわっている。

この国際的な謀略説というのは、フリーメーソンのトップに君臨するイルミナティ(実態は、ロックフェラー、ロスチャイルドといった5家であるという説など、各種ある)が画策しているのだ、というものだ。しょせん、嘘かまことか、なんとも言えない。

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