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寝かしつけの日々の終わりに

上の子は小さいときから寝つきが悪かった。
赤ちゃんの頃は抱っこで部屋中をうろうろしたり、
自作の子守唄をエンドレスリピートする。
適度な頻度のスクワットで適度な揺らぎを提供。
私がへとへとになる頃、ようやく薄目で眠りに落ちるのが常。
そーっとベッドに降ろし、背中に当てた手のひらを、
これまたそーっと引き抜く。
その後、子どもが顔をしかめてもそもそと動き出そうものなら、
即座にお腹をトントンし、なんなら、上からおもむろに覆いかぶさり、
疑似だっこ状態を演出し、再び寝息を立てるまで全神経集中。

2歳頃になると、寝かしつけの形も大きく変わった。
毎晩のように「母さん、お話しして」と「母さん、トントンして」をかわるがわるでリクエスト。
元来スーパー寝つきの良い私が、ちょっとでもウトウトし、お話が途切れたり、トントンの手が止まったりすると、「母さん、お話!(またはトントン!)」と容赦なく叫ぶ。
仕事と育児と家事でへとへとだった私はそれこそ泣き出したい気持ちで「お願いだから寝て~」と心の願いが飛び出し、声に出してそう言ってしまったこともあった(そして自己嫌悪に陥る)。
寝つきが悪いのは娘のせいではないのに、本当に申し訳なかったなと思う。

下の子は、上の子ほど寝かしつけに困った覚えはない。
赤ちゃんの時も抱っこで部屋を歩きまわった覚えもないし、
子守唄のエンドレスリピートも必要なかった。
ただし、何度仰向けに戻しても、いつの間にかうつ伏せになるので、
窒息が心配でしばらく浅い睡眠が続いた。

ちょっと大きくなってから、寝入りばなには下の子もやはり肌のぬくもりは必要だった。
必ず、ラッコの抱っこ状態か、私の腕を枕にして眠る。
上の子がせがんで私の隣に来ても、割って入る徹底ぶり。
いったん寝入っても、ものすごい寝相の悪さで、
私の首もとに足は飛んでくるし、頭に頭はのせてくるし、
ベッドを寝たまま縦横無尽に動き回る。

何度も繰り返すが、元来ハイパー寝つきの良い睡眠大好きな私。
当然ながら寝かしつけ(だいたい21時)=いっしょに寝ちゃう=その日終了。
という公式ができてしまう。
【深い呼吸音を聴かせることで眠気を誘う理論】でなんなら誰よりも早く寝入る。
このことで、一体何度夫と衝突したか分からない。
一度寝ちゃうと良質な睡眠のためにできれば最初の90分(睡眠サイクルの1クール目)はガッツリしっかり眠りたい私。
子どもたちが寝たらば起きて一緒に会話したり夫婦の時間がほしい夫。
だったら元々寝つきの悪い夫が寝かしつけを担当してほしいぜ、な私。
でも「お母さんじゃなきゃ嫌だ」と泣きわめく子どもたち。
結局、私が添い寝。
そしていつものように寝落ちしてしまう毎日。

22時、22時30分、23時、何度も(善意で)起こしに来る夫。
ゆさゆさされても、眠くて眠くてなかなか起きられない私。
翌朝、夫がまた怒ってる。
この繰り返しを何年繰り返してきたんだろう。
「起きる気がないからだ」
そう言われれば、何も言い返せない。
つらかった。

でも今日、初めて上の子が「一人で寝たい」と言い出した。
お友だちがきょうだいだけで寝ていると言っていたらしい。
下の子は「やだやだお母さん、おって」と初めばかりはせがんでいたが、「お姉ちゃんと寝る」と腹をくくった。
足かけ8年間の寝かしつけ生活の終焉。
果たしてこのままあっけなく訪れるだろうか。

隣のベッドの部屋で、2人ひそひそ話している声がまだ聞こえている。
もうすぐ寝付くかな。
私は、これから21時以降の自分時間をどうやって過ごそうかな。
また今夜から、少しずつ新しい私の始まり。
嬉しい。でも寂しい。
いつか、このかけがえのない【寝かしつけの日々】のことを懐かしむ日が来るかもしれない。
その時は、この8年間のこと、とっても幸せな時間だったなって思うんだろうな。
そう思って少し涙が出そうな夜。

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