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私の消化器はアンテロープキャニオン

コロナ禍で足が遠のいてしまったひとつに健康診断がある。

そもそも病院嫌いなのと、ニュースで医療ひっ迫なんてのをみると、
健康なのに健康診断にいってお手を煩わすのも申し訳ないとかなんとか理由をつけて2年も受診せずにいた。

2022年、ありがたいことに自分から営業しなくても、どんどんお声がかかり絶好調の1年だった。が、相変わらず、断るのが苦手で相当厳しい納期でない限りほいほいと受けてしまった結果、1か月PCを開けっ放しなんてことがあり、誰がどうみても働きすぎ。その結果ーーー

平坦なところでつまづいてこけ、両方の手のひらと両肘から流血(←足があがらなくなっているだけかも)
目がかすんで、ピントがあわない(←ただの老眼かも)
PCに向かいすぎて肩こりがひどい(←ただの五十肩かも)
階段の上り下りで右ひざに痛みがはしる(←年齢によるものかも)

ということで、すべて”年”のせいかもしれないが、そろそろ健康診断でも受けてみようかと軽い気持ちで、乳がんやら子宮頸がんやらフルコースで受診した。

初めてみたD2

受診3週間後、何やら分厚い封筒が病院から届いた。
いつもはぺらっぺらなのに何のお知らせやらと、早速、検診結果をのぞく。

目に飛び込んできたのが総合判定「D2」の赤文字。

いつもほぼオールAなのに、D2って?と判定基準をみると、要精密検査。

普段は「あんまり長生きしたくな~い」とか生意気なこといってるくせに、要精密検査の記載を見た瞬間、命根性が汚くなり、すぐさま再検査の電話をかけまくった。

総合所見に異常所見あります。異常があります。精密検査の必要があります。
なんて連呼されたら、大丈夫か?となるのが人間。

とはいえ、母親と祖父が胃がん、叔父が大腸がんとガン家系なので
気をつけねばとは思っていた。ただ、乳がんは誰もいない・・・

とにもかくにも、胃がんのほうが心配なので、上部消化管内内視鏡検査(胃カメラ)を受けろとの指示どおり、検診をした病院に電話をし、予約をとりつけた。

とりあえず年内に内視鏡やっとく?

帰省するたびに、母親も父親も胃のポリープの話を10年くらい前からしていたため、胃ポリープの表記があっても、まあ初期であれば問題ないだろと軽い気持ちでいたが、病院の待合室にいるとどうも緊張してくる。

あの病院の雰囲気がやっぱり苦手だ。
それにしても、ものすごい久しぶりに大きい病院にいったのでいたるところで活躍するICTにびびる。番号での呼び出しは当たり前で、次の呼び出し予定番号が3つくらい表示されていて、自分があとどのくらいで呼ばれるかわかるのがうれしい。会計も自動精算で、ほとんど人としゃべることがない。

もしかしたら医者も非対面、もしくはAIか?なんて想像していたが、そこは
昭和の診療と変わらず、対面だった。

若干、びびりつつ診察室に入る。

医者「う~ん、胃ポリープね。大丈夫じゃないかな~」

と独り言かというくらいぼそぼそしゃべっている。

医者「まあ、いつでもいいけど明日内視鏡やる?あいてるから。年内のほうがすっきりするでしょ」

なんだか軽いノリに気が楽になるとともに、すっきりというのはガンかどうかってことか?と答える前に

医者「鼻と口どっちにする?麻酔する?」

と話が進む。

ゆ「初めてなんで、どっちと言われてもよくわからないんですけども」

医者「まあ、鼻のほうが苦痛が少ないし、鼻にしとくかね。麻酔どうする?」

これは断固拒否した。というのも何事も痛いとはどのくらい痛いのかなど自分で実体験してみないとわからないしと、別に記事を書くわけでもないのに、この職業病は治らない

ゆ「麻酔はいいです。自分で経験してみないと・・・それに自分の消化器をリアルタイムでみられる機会はそうそうないですし」

というと、医者も看護師も変な子だな~という顔でみていた。

検査が楽しいはずもないのだが、初めての経験というのはドキドキするもので怖くて緊張というより、ちょっとわくわく?いや、なんだろなこの気持ち、高揚感からか眠れぬ夜を過ごす。

アメリカのアンテロープキャニオンだ!

とんとん拍子で胃カメラ当日。
座り心地のよいソファに座らせられる。気持ちを落ち着けろということだろうか。ソファに体を沈め、気持ちよく寝そうになっているところに、鼻の通過をよくする薬をプシューとされる。苦いものがのどの奥を通過し、飲み込むなといわれ息を止める。ちょっと違うか。

そのあと、鼻のしびれ薬なるものをまたプシューとし、胃をキレイにする白い液体を飲ませられる。これがなんとも美味。
夜から飲食してないもんだから飲めるもんだったらなんでもうまい。
う~んもう一杯といいそうになるくらい。

早速、ベッドに寝かせられて、どちらの鼻にしようかな~みたいな感じで右に何かを突っ込まれるも、NGだったらしく、左にシフト。
今度はOKとのことで、左側から挿入。

いよいよだ。唾液は飲み込まずに垂れ流せということで、口の下にでっかいシートが敷かれ、挿入開始。

ドキドキしていると、早速、「オエッ」となる。この「オエッ」がまあ止まらない。涙も唾液も垂れ流しながら頑張っていると、舌根部を無事に通過したからか、5回くらいの「オエッ」ですんだ。

今は食道ですね~、キレイですよ~と「キレイ」という言葉に反応する。
キレイってまともに言われたの初めてかもしれない。そんなことしれっと言えちゃう先生、女の扱い慣れてるわねなんて思えるくらい痛みを感じない。

ということで、頭の上のほうにあるモニターを見ながら先生の解説を聞いた。

先生が早口だから今、どこを通過しているのかよくわからなかったが、胃に入る直前だろうか、おおお!これは、美しい!

まるでアンテロープキャニオン!!!

と数年前にようやっと念願かなってみたアンテロープキャニオンのような渦がキレイに巻いている

初公開!ゆきんこのアンテロープキャニオン

検査終了後、撮影した映像を見ながら先生が説明をしているとき、美しいアンテロープキャニオンを素通りしようとしたので

「先生!これほしいです!」
と勢いよく伝えると

「まあ、皆さんにコピーをお渡ししているので、いいですけど、ポリープ部分ではなくてこちらなんですね」

と不思議そうな顔で見られた。
そうか、欲しがるひとっていないのか。

そういえば、大腸のCTのときも
「PCの画面をスマホで撮影していいですか?」と聞いたら

「1年に数人くらいそういう人いるんだよね」

と失笑しながら、撮影させてもらったことを思い出す。

ということで、問題の胃のポリープに行きつくころには、なんだかおもしろくなってきて、画面を食い入るようにみていた。

すると病変を回収するとかで看護師さんが緑の細い管を持ってきて、内視鏡の管の中に挿入。

医者「はい、そこつかんで」

というもんだから、これは痛いのがくるぞ!とつかむ瞬間を見ながら身構えていたのだが、画面に血がたら~りと流れても、全く痛くない。
脂肪みたいなもんだから痛くないのか?

しかし、医学の進歩というのはすごいものだ。
あんなちっさいので、カットして回収できるとは。

すごいな~としげしげと画面をみていると

「はい、よく頑張りましたね。もう終わりですよ」

とするすると回収作業が始まる。頑張ってないけど、褒められた気分。

映画じゃないが、もうちょっと余韻に浸りたかったというよくわからない
心境とともに終了。

結果は、年始にわかるそうだが、先生曰く、問題ないだろうと。

「最大の親不孝は親よりも先にいくこと」と帰省するたびにいわれているので、結果はどうであれ、来年はもう少し胃にやさしい生活をしようと固く決意した。

ちなみに、鼻から挿入できない人は鼻炎とか鼻の粘膜が切れやすいとかのほかに、鼻穴が小さい、顔が小さいといった女子っぽいかわいらしい理由もあるとネットで調べていた。

ということで、
「わたし、もしかしたら鼻はNGかも」
と女子らしいキーワードに当てはまりたかったため変な不安を抱いていたが、するすると入っていったところをみると、鼻穴も顔も大きいのかと意味不明な落胆もした。

とにかく、健康でおいしいものをおいしく食べられるのが一番の幸せ!皆さんも胃カメラ怖いと思わず、楽しむ気持ちで早め早めに受けましょう!

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