ゆちゃん

univ. student (21)

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最近の記事

風で舞い散る桜のように Ep.12

「なんで別れたの?」 「あの人が死にたいって言いだして… それでケンカに…」 このとき風や私が目指していた職業は医者だった。 風が医者を目指したのは 生死をさまよったりもした妹がきっかけだという話は 中学の同級生の一部の中では有名な話だった。 「妹ちゃんのこともあるし、風はそう言われて傷つくよね…」 聞いてるうちになんだか私まで悲しくなって ふと言っていた言葉に風は心を打たれたらしく、 この話のあとから会話の流れが急変した。

    • 風で舞い散る桜のように Ep.11

      「風、部活は?」 「今部活前!更衣室にいる! 顧問女の先生だから入ってこんしバレんよ!」 中学では優等生みたいだった風の 悪ガキみたいな新しい一面を知り、クスッとした。 話しているうちに、インターハイの開会式の前日になった。 「明日授業ないしオールしよ!」 夜通し恋バナをした。 風には中3のクラスに1ヶ月弱で別れた元カノがいたことをそこで初めて知った。

      • 風で舞い散る桜のように Ep.10

        私は大学で推薦で行くことを考え、 あまり興味のわかない全国大会に出場する科学系の部活に入った。 もともと理数系は苦手なのと、周りのハイレベルさとで、 私は主力メンバーには入れず、実質帰宅部員だった。 家に帰ってLINEを開くと風からメッセージが届いてる。 早く桃と風のキューピットになりたい私は急いで返信した。 風は中学の時と同じ運動部に入った。 部活がある日のはずなのにすぐに返信が来る。

        • 風で舞い散る桜のように Ep.9

          高校に入学した。 8クラスの学年で、風は1組、私は8組だった。 教室も離れていて、話すことはほとんどなかった。 それから少しして、私の友達と風をくっつけようという話が 同じ中学から舞鶴に行ったみんなの中で上がった。 風のことを友達としか思っていなかった私は 「任せて!桃と風をくっつけるキューピットになるぞぉ!」 と意気込んでいた。 「ね、風に桃のこと聞いてみたいから風のLINEちょうだい!」 そこから歯車は狂っていった

        風で舞い散る桜のように Ep.12

          風で舞い散る桜のように Ep.8

          合格者登校日、テストの休み時間に友達が唐突に言った。 「風、今日来てるんだって!」 「え、舞鶴ダメで私立じゃないの?」 思わず私は聞き返した。 どうやら風は補欠合格で同じ高校に通うことになったとのことだった。 その後しばらくして、中3のクラスで集まった。 差し入れとしてカントリーマアムを買って行ったけど 「甘いのムリー」 と食べてくれない男子ばかりの中、風は 「もらっていい?」 と言ってくれた。 優しくていい人だなぁ、って改めて思った。

          風で舞い散る桜のように Ep.8

          風で舞い散る桜のように Ep.7

          1週間くらいして合格発表があった。 181番の私から189番までが同じ中学校のみんな。 181番はあった。 当時同じ部活で一緒に勉強してた友達の番号も2人で確認した。 2人で泣いて喜んだ。 ほとぼりが冷めたとき、何かが引っかかった。 182番がない。 「いいよなぁ、風は数学できて…」 と言ってしまったことを少し申し訳なく思った。

          風で舞い散る桜のように Ep.7

          風で舞い散る桜のように Ep.6

          高校受験の日、 私の受験番号は181番、風の受験番号は182番で 前後の席だった。 最後の科目は数学だった。 私はもともと数学がとても苦手だったけど 受験の日はいつもに増して手応えが悪かった。 県内公立トップ校の受験なのに 3つ問題があるうちの(1)しか解けない大問が2つもあった。 解散の合図と同時に 「私ダメかも、数学全然解けなかった。 いいよなぁ、風は数学できて…」 って風に言ってしまった。

          風で舞い散る桜のように Ep.6

          風で舞い散る桜のように Ep.5

          私は風とは別の人のことが好きだったし、 風は私とは別の人のことが好きだった。 風とは中学生の頃はそれといって何もなかった。 同じ高校を目指しながらも風はチャリ通する予定なのを知った 電車通学する予定だった私は、 「ねぇ風、もしお互い舞鶴高校に受かって、私が電車に乗り遅れたら 風みつけてヒッチハイクするから! そのときは2ケツして連れてってよー!」 ってただの友達なのに言ったりして 風はリアクションに困ってた。

          風で舞い散る桜のように Ep.5

          風で舞い散る桜のように Ep.4

          クラスメイトとして話していくうちに 同じ職業や高校や大学の学科を目指していて、 でも風の方が数ランク高い大学を志望していることを知った。 理科の時間隣の席で 酢酸カーミン液に染色されながら実験する私とは反対に 器用にトウモロコシをピンセットで摘み 考察とかも全部一人で考えてしまう風を尊敬していた。 でもそのときの風は恋愛対象ではなかった。 風のことはかっこいいよりかわいいだった。

          風で舞い散る桜のように Ep.4

          風で舞い散る桜のように Ep.3

          私と風は、小学生からの同級生だった。 ほとんど同じクラスになることはなく、 中3で初めて同じクラスになった。 背が高くなりそうな部活に入ってるけど 私と同じくらいか少し高いかくらいの身長で、 与えられた仕事とかはちゃんとこなして ちゃらちゃらしてるわけじゃなくて大人しそうだけど 女子にも優しくて、 文系教科は苦手なのに 数学では県内偏差値80台を取るようなザ・理系男子だった。

          風で舞い散る桜のように Ep.3

          風で舞い散る桜のように Ep.2

          好きって気持ちをうまく伝えられないのを察してくれたのか、 そこで風がすかさず言ってくれた言葉が、 「もし今、俺が付き合ってって言ったら?」 だった。 高校3年生の秋、私たちが交わしたこの会話。 はたから見れば意味深なやりとりに見えるかもしれない。 実際にそこには、当の本人たちである私たちでさえも カンタンに触れてはいけないんじゃないかって思える壁があった気がする。 実は、風は、この2年半前にも私に気持ちを伝えてくれていた。 そのときの私は、風に最低なことをし

          風で舞い散る桜のように Ep.2

          風で舞い散る桜のように Ep.1

          「もし今、俺が付き合ってって言ったら?」 風は私に言った。 図書館までの長い登り坂 「登るのめんどくさいよー」 って言う私の背中を、 風は何も言わずにいきなり無邪気に押し始めた。 飾らずに自然体でいても一緒に楽しんでくれる、 そんな風のことが気付けば好きになっていた。 でも私は自分から好きなんて言えなかった。 そのときの私に言えるせめてもの言葉は 「あのとき付き合ってたらなぁ」 それだけだった。

          風で舞い散る桜のように Ep.1