卒園まであと半年。こども園の玄関で手をふる長男をみて
「○○(長男)、いっしょにいこう!」
こども園の玄関で長男がくつを脱いでいると、バス通園の子たちが10人ほど、わらわらと後から入ってきた。私を見つけた長男と同じクラスのYくんとMちゃんが、私に満面の笑みで手をふり、長男のほうへ駆け寄った。私も手をふりかえし、「Yくんおはよ!Mちゃんもいってらっしゃい!」と彼らを見送った。
運動神経ばつぐんで、先日の運動会ではリレーのアンカーをつとめたYくんと、長男のことが大好きだという明るい女の子、Mちゃん。
上靴を履き終えた3人は、Yくんが長男の手をひき、Mちゃんが長男の背中を押すように「いこう、いこう!」と走っていく。長男は私にむかって恥ずかしそうに手をふり、引っぱられていった。長男にはこんな感じで、仲のいいお友達が5〜6人いる。とても嬉しそうだ。
2年前の今ごろ、私は絶望に打ちひしがれていた。私の勝手な判断で、慣れ親しんだ保育園から、近所のこども園に転園させてしまったのだ。新しい環境に慣れるのに時間がかかる長男は、まったく知らない園に連れてこられ、毎朝泣き叫んでいた。「なんてことをしてしまったんだろう」と、当時は毎日後悔していた。
もともといた保育園の園長に、「今から戻れないだろうか」と泣きながら相談した。園長は私に言った。「もうちょっと、○○くんを信じて待ってみましょうか?」と。あと少し、あと少しと待っていたら、長男はいつの間にかお友達をつくり、お迎えに行くと「今日ね!こんなことしてね!それでね!」と、まくしたてるように園での出来事を話してくれるようになった。
今は、園で勝手にお友達を家に呼ぶ約束をしてきてこっちが困っているくらい、園生活を楽しんでいる。
*
そんな長男も、気づけばあと半年で卒園。子育てって、本当にあっという間だ。30年前、母が「今のままが一番幸せな気もします」と、幼稚園の連絡帳に書いていた気持ちが本当にわかる。
このまま同じメンバーで、同じ先生たちと、同じ小学校へ行けたらどんなに幸せだろう。
でも、そうはいかない。お迎え時、私がクラスの部屋に入ると「○○(長男)のママー!」とかわいらしい笑顔で寄ってきて、工作の作品を「みてみて!」と見せてきたり、何のことだかよくわからない話題を「ねぇねぇ!」と話してきたりする愛おしい子たちは、みんな小学校でバラバラになってしまう。
朝、玄関で嬉しそうに私に手をふる長男をみて、「あと半年だなんて……」と、嬉しさと悲しさが半々ぐらいでこみ上げた。でもきっと、小学校へ行っても、時間が経てば、同じような光景が見られるんだろう。そうやってどんどん成長して、私たちの手を離れていくんだ。
時間は待ってくれない。だから今は、この日、このときの気持ちをしっかりと覚えておこう。
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