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107. 「スタイルの違いに挫折」は実力不足の裏返し

皆さんこんにちは。三浦優希です。

今日は、自らの体験を基に「スタイルの違い」について考えていきたいと思います。それではよろしくお願いします。

求められるプレイが変わった時に

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「あの国のプレイスタイルは自分には合わなかった」

こういった言葉、よく聞く機会があるのではと思います。特に、スポーツにおいてアスリートが海外に挑戦したときや、新たなチーム、新たな環境に身を移したときに言われがちな言葉だと思います。

この「スタイル」と呼ばれるものに苦しめられる選手は結構多いのではないかと思います。ただ、僕としてはアスリートであるならば「スタイルが合わなかった」という言葉は使うべきではないと考えています。

僕は、

スタイルが合わない=自分の実力が足りない

ということだと思っています。そもそも、実は僕は「スタイル」という言葉があまり好きではありません。なぜなら、十人十色という言葉にあるように全く同じ性格の人がこの世界にいないのと同じで、スポーツにおいてもどんなチーム、どんなリーグにおいても一つとして同じものはないからです。それを「スタイル」という単語一つでくくってしまうのはあまりにも単純な気がします。

もちろん、そのチームの特徴だったり、「上手さの基準」というのは地域によって変わります。何をもって、「あの選手はうまい」とされるのかは、そのチームの考え方によるところもあります。

そこで大切なのが、環境が変わって「スタイル」と呼ばれるものが今までとは違うものになった時です。「ここはなんか合わないな」と思う時は「自分に合っていないのではなくて、自分には合わせるだけの力がない」ということだと、僕は思います。

適応にかかるまでの時間

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僕がこれをリアルに体験したのが、チェコからアメリカに渡った時のことでした。当時の僕は、チェコで得点王に輝いたりシニアチームの試合にも呼ばれたりと、ある程度の自信を持った状態でアメリカに渡りました。

しかし、それは見事に打ち砕かれます。アメリカにわたって一年目のシーズン、僕は本当に苦しみました。とにかく、結果が残せない。

それよりも、「なんでこんなにみんなと感覚が違うんだ?」と思うことが頻繁にありました。

例えば、パックをリンク中央で持った時の対応について。今までの僕は、パックをむやみに敵陣に放ることは、チャンスを失うからあまりすべきではないと考えていました。というより、チェコにいるときはその風潮がチームにはありました。前に行けないなら、一度後ろに下げてそこから再びビルドアップしていく、ということが一般的でした。

でも、僕がアメリカでプレイしたチームは違いました。「絶対にパックを後ろに下げるな」と言われていました。敵がいて打開できそうにないなら、前にパックを放って敵陣でフォアチェックをかける、というのが選手がやるべきことでした。

実際、不思議なことに、アメリカでパックを後ろに戻すとピンチにつながることが本当に本当に多いんです。そのプレイをやってしまいチームの危機を招いてしまったこともありました。そして、そういうプレイをしていると、試合出場時間というのはどんどん短くなっていきます。

僕は、環境への適応に時間がかかりすぎました。

結局、そのチームがそういった方針を取っているのには必ず理由があるんですよね。

新しい環境に来ると、どうしても「俺がチームを変えてやる」とか「今まで培ってきたものを見せてやる」という意志に駆られることが多いと思います。それ自体は悪いことではないし、強い志を持つことはとてもとても大切なことだと思います。ただ、それをやっていいのは最低限チームの方針を遵守してからです。

僕が最初に感じた「なぜこんなに感覚が違うんだ?」という疑問も、結局はチームで「正しい」とされるプレイに対して僕が適応できていなかったためです。

同じプレイでも、自分がいる場所によって評価は変わります。ある場所では称賛されるプレイでも、他の場所では非難されることもあります。

結局のところ、「求められているプレイをすぐにできる実力があるかどうか」です。僕にはそれがありませんでした。そこまで僕はうまくなかった。

海外に出てから感じた、上手い選手の定義とは、「どれだけ適応が早いか」だと思います。チームで求められているプレイを体現するまでの時間をどれだけ短くするか。これに尽きると思います。

環境が変わっても、何不自由なく活躍できている選手はこの能力が圧倒的に高いのだと思います。あるいは単純に、個人の力が圧倒的にチームの中で(というよりそのリーグのレベルにおいて)ずば抜けているか。

このどちらかではないでしょうか。

逆に言えば、新たな環境で上手くいかない選手というのは、

・適応するまでに時間がかかっている最中
・適応できるだけの力がない

この2択だと僕は考えます。

そして、これが出来なかった時に「あそこは合わなかったんだよね」と言ってしまう(あるいは、第三者にそういわれる)のかなあ、と思います。

実際、選手によって向き不向き、特徴、個性というのは確実に存在するし、その選手にフィットしやすい国、チーム、監督というのは確かにあると思います。

それを理解した上でも、自分で挑戦をして、その結果その場所が合わなかった時に、「自分には馴染まなかった」という言葉で片付けてしまうのは非常にもったいないと思います。

その瞬間こそ、この場所で活躍するためには、自分には一体何が足りなかったのかをしっかりと考える良い機会です。

上手くいかなかった時というのは、どうしても自分を正当化してしまいがちです。僕も気を抜くとよくそれをやってしまいそうになります。もちろん、自己肯定感を常に高く持つことは大切なのですが、それと自分の実力が通用しなかったことを一緒にしてはいけません。

どうしても言い訳を探してしまいそうになるし、「それなら仕方ないね」と他人に言われることを望んでしまうことがあるかもしれないけど、自分が直面した現実から逃げてはいけないと思います。

まずは自分を認めて、現状をしっかりと分析した上で、「じゃあここで活躍するためには一体何が必要だったのか」を考える。

全てを場所のせいにするべきではないです。なによりその行為は、現地の人たちに対して礼儀をかいたものになります。

どんな場所であれ、自分が選んだ場所ならその環境でフルパワーを出せるようにすること。それが出来なかった時は、その自分をまずは受け入れること。

僕はそれが大切だと考えています。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

三浦優希



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