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154. 休むとサボるは別、という話

みなさんこんにちは。三浦優希です。

今日のnoteでは、「休むことの重要性」をテーマにお話していきたいと思います。

休むことが苦手な人、実は結構多いのではないでしょうか。僕もその一人です。

今回は、そんな方々に対して僕なりのメッセージをお伝えできればと思います。

それでは始めましょう。よろしくお願いいたします!

「休む=悪」という固定概念

私は、これまで22-23年以上に渡り、アイスホッケーを続けてきました。これだけの年数が経った今でもこのスポーツを続けることが出来て、かつ、僕が現在プロアイスホッケー選手でいられる最大の理由は、小さい頃からたくさんの時間と労力をアイスホッケーの競技力向上に充ててきたからです。(もちろん、目標を達成するためにはもっともっと上手くなる必要があります)

これまでも何度かお伝えしたことがありますが、僕は小学生時代にほとんど友達と遊んだ記憶がありません。学校で一緒に過ごす友達はたくさんいましたが、例えばどこかに遊びに行ったり、ご飯を食べに行ったり、ということは少なかったかと思います。

なぜかというと、毎日アイスホッケーの練習が入っていたからです。今でも覚えていますが、学校が終わったらダッシュで家に帰り、急いで防具を準備して電車に飛び乗り、夕方から始まるフリータイムの練習に行くことがよくありました。

また、自分の所属チームの練習、その後は父が教えている大学生の練習、さらに父の知り合いの社会人チームの練習、というように3枠連続(4時間半)で氷上に居続けることもしょっちゅうでした。

自分自身、アイスホッケーがそもそも大好きだったし、これくらい練習することが当時の自分にとっては当たり前の日常だったので、このころは何とも思っていませんでした。「上手くなるためにはどんどん練習しなきゃ」と思っていたし、アイスホッケー漬けの毎日は自分にとって全く苦ではありませんでした。(父はたまに厳しかったですが。笑)

さて、このようにたくさん練習をし続けてきた僕の身体に、いつしかある固定概念が住み着きます。

それは「休んではいけない、休む=悪」というものでした。

練習を多くすることが当たり前になっていた僕は、無意識に休むことに対して罪悪感を覚えるようになりました。

練習すればするほど上手くなれると思っていたし、逆に練習しない日は下手になると本気で考えていました。

しかし、そのような環境で過度な練習を続けていた僕の身体は、気づかぬうちにボロボロになっていたのです。

中学生で経験したオーバーワークによる腰椎分離症

この写真は小学生時代である(中学生のすぐ出てこなかった)

それは中学生時代のことです。その日は都大会の大事な試合の前日でした。

僕は、父と一緒に公園でシュート練習を行っていました。これ自体は小さい頃からよくやっていた練習の一つです。その日は、近い距離、遠い距離からなど、試合を想定したシュート練習を行い、自宅に帰りました。

迎えた試合当日。その日の試合は午後開始でしたが、たまたま毎週参加している朝練がある曜日だったため、体をほぐして試合前に良い感覚を身に着けておくために、その練習に参加することになっていました。

さて、その日の朝練に参加するために少し早く起きた時、僕は腰のあたりに違和感を感じました。「昨日のシュート練習の疲れかなあ」くらいに思いながらリンクに行き、氷上に乗りスケートを開始してしばらく経つと、いよいよ尋常ではない痛みが腰と背中に広がり、とうとう立っていられなくなり、最後には氷の上で四つん這いのまま動けなくなってしまうほどになりました。当日の試合も欠席となりました。

確実に何かおかしいと感じ、後日病院にて検査をしてみると「第五腰椎分離症」と診断されました。

そして、これが発症した原因は、オーバーワーク(練習のし過ぎ)とのことでした。

結局僕が競技に復帰できたのは、怪我からちょうど一年が経った頃でした。

「意識的に休む」ということ

意識的に休んでいたところを友達に激写されたところ(チェコ時代・授業中)

これは今でも僕が苦手としていることですが、高いパフォーマンスを発揮する上では「意識的に休む」ことがとても大切だと感じます。

意識的に休むとはどういうことかというと、自分自身の努力のベクトルを、ハードワークすること(体を動かす)ではなく、体を休ませるほうに使うということです。

これまでの僕の頭の中は「休むこと=サボる」という方程式が出来ていましたが、最近は「休む=上手くなることの一部」と考えています。

タイトルの「休むとサボるは別」という話ですが、ざっくりいうと、
・休む=パフォーマンス発揮のための行動
・サボる=やるべきことをやらないこと

といった感覚でしょうか。

これは日本人選手に特に共感する人が多いのではないかと思いますが、もし自分が練習できる状況において、練習をしないという選択をすると「自分は何サボってるんだ」と思ってしまう方が多いかもしれません。

しかし一番大切なことは、その日の練習に出るかでないかではありません。ゴールは常に、自分がプレイしたいリーグやチームに行くことであり、そして、目の前の試合で高いパフォーマンスを発揮することです。

疲れた状態でのトレーニングやオーバーワークは、僕が過去に経験したように、怪我のリスクが上がります。また、他の大きな影響として、本来そのトレーニングで出すべき強度を上げられなくなることがあります。

実際に僕が今年の夏に経験したことを例に話します。

オフシーズンのトレーニング期間中、ウエイトトレーニングの前に毎回垂直飛びを記録していたのですが、僕がベスト記録を更新した日は、なんと長期オフ明けの一発目のトレーニングの時でした。逆に、氷上練習後のトレーニングを行った際には、垂直飛びの記録はベストから10-15センチ下回ることがありました。

自分は毎回本気で飛んでいるのに、数値で計ると疲労がパフォーマンスに与える影響が本当によく分かります。

アイスホッケーシーズンに入ると、年間70試合近くをこなすため、どうしても体に疲労は溜まっていきます。そんなシーズンを乗り越えるためには、ある程度疲れた状態で試合をすることに慣れておく必要はありますが、それ以上に「どれだけ疲れを溜めないか」そして「どれだけ次の試合までに回復できるか」がとっても大事になります。

昨年のシーズン中、印象的だったエピソードがあります。それは、当時のチームメイトで過去にNHLにも出場したことのある、とても上手で尊敬している選手から「優希はハードワークをして素晴らしいけど、それ以上に休むことを覚えた方が良いと思うよ」と言われたことです。

これは、ハードワークしている僕のことを褒めているニュアンスではなくて、むしろ間違いを指摘してアドバイスをくれている感覚に近かったです。

僕個人の極端な感覚を言うと、
・シーズンオフ=技術の上達や体力の向上のためのトレーニングを積極的に行う時間
・シーズン中=シーズンオフの貯金を使いながら、実践を通して上手くなる時間

といったイメージです。

休むことで得られるもの

常に癒しを与えてくれる我が家の可愛すぎるペット、チンチラのロディちゃん

これまで「休む」をテーマにお話をしてきました。

僕がここで伝えたかったことは「ゴールはどこにあるのか」ということです。自分が本当に目指す場所や、結果を出すべき場面はいつかを頭でしっかりと理解し、今自分がすべきことを判断する必要があります。

果たして本当に、今自分の体に鞭を打ってトレーニングをすべきなのかを考えなければいけません。

僕が具体的に実践している「休み方」としては、ホッケー以外の何かをすることです。もちろん、何時間も何もせずにただベッドに寝転がって昼寝をするときもあります。

このようにただ何もしない時間ももちろん良いのですが、例えば読書をしたり、音楽を聴いたり、映画を見たり、ペットと触れ合ったり、別のスポーツを軽くやったりしながら、リラックスすることで心と体を休ませることが多いです。

そして、休むことには心と体の休息以外にもう一つのメリットがあります。それは、次の練習に対してワクワクできることです。僕で言うと、オフ明けはいつも、氷に乗れる喜びや、トレーニングできる幸せを感じることができます。

頑張りすぎることで得られることもある

休むことはパフォーマンスを発揮する上でとても大切なことです。一方で、ある程度無理して練習することで得られることも多くあります。

正直なところ、今僕がこの舞台に立てているのは間違いなく幼少期からのハードワークのおかげだと思います。人並みの練習回数だけでは、きっとプロになることはできていないと思います。

先ほど話した中学生時代の腰椎分離症を発症したときのおまけ話ですが、当時私の父は「なぜここまでやってしまったのか」という自責の念に駆られたそうです。(母から聞いた話)

息子がオーバーワークで怪我をしてしまったということに責任を感じる気持ちはもちろんわかるのですが、僕からすると、「父さんのせいだ」なんて一度も思ったことがなかったし、あれだけ練習をしていたからこそ今の自分があると、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。だから気にしないでほしいです。笑

逆に言えば、今でも当時のような練習量を続けていたら、僕は今頃NHLに行っていたかもしれないし、反対に、もしかしたら怪我でホッケーを続けられない身体になっていたかもしれません。歩める人生は一つしかないので、他の道を選んでいた時に自分がどうなっていたかは知ることが出来ません。

これまた超個人的な意見を賛否両論承知で話すと(反対意見多そう)、競技人生のどこかのタイミングで「ある程度無理して練習すること」や「やりすぎて怪我をすること」は、その人にとって結果的に学べることが多い経験になるのではと思います。

これはその後の競技人生に与えるリスクも高いし、本来スポーツ選手が最も避けるべき「怪我」をしてしまう可能性もあるので、自発的にやることはお勧めしません。普通に考えたらおかしなことを言っているのは承知しています。

それを踏まえたうえでの話をします。
僕は、初心者/初心者に近い状態であればあるほど、上達する上では練習時間が最も関係しており、逆に、上級者になればなるほど練習の時間ではなく質が影響を与えると思っています。

スタート時にある程度の上達ブースターを得るうえでは「休むことが大事」とか、「科学的根拠がこうだから」などを一切無視して、自分が限界だと思うところまで追い込んでしまうのも、策の一つとしてはありかと思います。

そもそも人によって「頑張る」の基準が違うので、ある人にとっては当たり前の練習量が、ある人にとっては超ハードワークだったりします。

最後に

結局のところ、自分の目指すべきがどこか、そして本人がどのように時間を使うか、という話になってしまうので、「絶対にこれが正しい」というものはないと思います。

共通して言えることは、「努力」というエネルギーを、練習にだけでなく、休養や食事にもしっかりと充てることで、最高のパフォーマンスを発揮するための準備を続けることです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
(さて、おひるn…意識的に休んでくるとするか)

三浦優希


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