66. 僕が海外生活で得たもの

皆さんこんにちは。三浦優希です。

今日は、アイスホッケー選手という枠を超えた、三浦優希としてのお話です。テーマは、「海外に出たことで、僕が得たもの」について。
それではよろしくお願いいたします!

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僕が海外に出たことでつかみ取ることができた最も価値のあるもの。それは語学力でも、ホッケーの技術でもなく、「自分自身と向き合う時間」です。これは胸を張って言えます。もちろん、かけがえのない友達ができたり、チェコ語や英語を学ぶことが出来たり、レベルの高い環境でアイスホッケーをできるようになったことは本当に素晴らしいことですが、もっともっと抽象度を上げて大きな枠で考えると、それらの要素はすべて自分と向き合うための一つの手段だったのかもしれない、と今は思います。

ちょっとわかりづらくなってしまったので具体的に話します。
きっと皆さんもそうだと思いますが、自分が今までに知らない場所に行く時は、少なからず不安や疑問が生じるはずです。例えば地方に住んでいた人が東京に出てきたときや、職場や学校が変わるとき、チームの移籍や、新たな習い事を始めるときなどです。何をするにしても、環境が変わるということは自分が今まで体験してこなかったものに触れることになるわけですから、どうしても心配することは増えます。

僕にとっては、そのような感覚を初めて味わったのが17歳でチェコに渡った時でした。初めて「海外で生きていく」という体験をしたときに、言葉や文化をはじめ、生活の中で直面するものすべてが日本にいた頃と大きく変わりました。留学当初は、ほんのちょっと上手くいかないことが起きただけで何度も何度も「本当に高校を辞めてまでここへ来てよかったのか」「ここでずっとやっていけるのか」と考えることがありました。練習然り、街中然り、どこへ行くにしても周りに「他の場所から来た者」という反応をされる経験を今までしたことがなかった私は、時間が経つにつれ「一体俺は何者なんだ」と自分自身に問う時間が増えていきました。

日本にいたころは、自分が何者かなんて考えたこともなかった。その必要がありませんでした。海外に出て自らの立場が「外国人」になったことで、そのことを意識させられるようになりました。

きっと、留学をすでに経験している人や、現地での生活が長い人はそのように感じることは少ないかもしれません。僕がまだまだ周りに溶け込み切れていないだけかもしれない。この文章を読んで、「俺はそんなことはなかった」と感じる人もいるでしょう。でも、僕は自分自身に問われました。

海外に出てからは、自分自身で判断・決断しなければいけない場面が多くなりました。トレーニングでもそうです。日本にいた頃は、例えば先輩やコーチから指示されたメニューをこなしたり、父から教わるアイスホッケーの技術をそのまま練習するばかりでしたが、こちらにきてからはどれくらいの強度で・どのように・どれだけ練習すればいいかを自分で考えなくてはいけなくなりました。もちろんチームのコーチはいろんなことを教えてくれるけど、僕全ての面倒を見てくれるわけではありません。

試合でもそうです。なかなか思い通りにプレイできず、結果が出せないときに、親切に「優希、焦らなくても大丈夫だよ。こうすればきっとうまくいくし、結果が出るまで俺はお前を試合で使い続けるよ!」なんて甘い言葉をかけてくれるコーチはまずいません。チームやコーチが求めるプレイが出来なければ、何も言われずすぐにメンバーから外される世界です。競技レベルが上がれば上がるほど、コーチ陣の選手への対応というのはある意味冷酷になっていきます。結果を出し続ける選手は好まれるし、結果が出せない選手は信頼を失っていく。そのようなシビアな日々を小さい頃から過ごしてきて、本当の闘いをし続けてきた海外の選手たちの中に、アイスホッケーにおいては決して「競争」とはいえない日本という甘い現実からやってきた自分がいきなり入り込み、評価を得ることは決して容易ではありません。もちろん、ずば抜けるほどの圧倒的実力があれば別の話ですが、自分はもとよりそういった選手ではありません。

だからこそ、自分がなぜこの実力をもってしてこの競争世界に飛び込んだのか、そしてどのように毎日を過ごせばここから勝ち上がっていけるのかを必死に考え抜くようになりました。

失敗をすれば落ち込むこともざらにあるし、そんな状況でライバルが活躍すれば、悔しいに決まっています。ただ、そこでネガティブなまま終わるのではなく、現状の打開策をとにかく考えるようになりました。「もっとこうしたら上手くいくんじゃないか?」「ここの強さを磨くべきじゃないか?」常に自分に問い、自分なりの答えを出し、それを試してはまた失敗し、時には成功し、少しずつ前に進んでいく。

そのような毎日を、日本にいたら僕はきっと過ごすことはなかったと思います。これが、海外に出てから僕が手にした最も価値のある時間でした。

ちなみに、僕は今まで何度も何度も言ってきていますが、海外に出たから自分は偉いとか、自分はすごいとかそんなことは全く思っていません。「自分と向き合う時間」を手にした場所がたまたま日本の外だっただけであり、僕は場所やレベルに関係なく、挑戦を続けるすべての人を尊敬しています。

上手くいかない時間ほど、自分が置かれている状況をどうしてもズームで見てしまうことがほとんどだと思います。何をやるにしてもその事柄だけに視線がとらわれてしまう。「点が取れない」「活躍できない」「試合に出れない」など、今まで何度もそういった経験をしてきました。そういう時こそ、「そういった状況に置かれている」ということをもっともっと広く高い視点から教えてくれる「自分」という存在がいてくれると強いのかなあ、と最近は思うようになりました。

物事が順調に進まないときほど、内省し、自分と向き合う時間が増えます。僕は、挑戦を続けることの醍醐味はまさにここにあると思っています。この先の生活の中で、アイスホッケーとか、立場とか、他人からの評価とか、そういったちっぽけなものを全て取り払ったときに、自分に残るものはいったい何でしょうか。何が、自分を「三浦優希」と決めるのか。

いずれにしても、今後の人生において、こんなに毎日ドキドキして、悔しんで、喜んで、悩んで、もがいて、それでも走り続けることができる時間はなかなか過ごすことはできないはずです。だからこそ、この戦いの日々からみすみす逃げてはいけない。そんなもったいないことをしては、いけない。

結局のところ、自分がどこの国出身であろうが、肌の色がどうであろうが、身長体重がいくつであろうが、年齢がいくつであろうが、スケートを履いてスティックを握り、氷の上に立ってしまえばそんなものはもう関係なくて、あとは実力が問われる世界。今、自分がいるのはそういう環境。上手くいかないときは、自分の実力が足りないだけ。結構シンプルです。

きっとこれから先も挫折だらけで悩みまくる日が来るんだろうけど、僕にとってはそんな瞬間こそ「自分の人生」を生き抜いてる感じがする!だからそれでよい!自分が信じる道をこれからも歩む!それが一番僕にとって大切なことです。

こんなに素晴らしい日々を与えてくれた、家族、身の回りの人々、そしてアイスホッケーに心から感謝。

シーズン開幕まであと20日。さあ、今日も前に進み続けよう!

最後までお読みくださりありがとうございました。

三浦優希

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ふと読み返したときに、過去にも似たようなことを書いたなと思いましたので、参考までに。


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