見出し画像

127. プレイ中の視野についての新たな発見

先日Twitterの方にも少し書きましたが、「試合中の視野」について改めて詳しく掘り下げたいと思います。

「とにかく常に周りを確認する」ということは競技スポーツ(特に球技)においては何度も何度も言われてきた一つの常識かと思います。ただ僕は、試合を通して「常に周りを確認する必要はない」という考えに今は至っています。(これはまた今後変わるかもしれないけど)

そう思うようになった経緯についてお話していきたいと思います。

これは、先日のミネソタ州立大学との対戦の時に感じたことです。今までの僕は「敵からのプレッシャーを受けながら周りを探そうとした結果、守りきれずパックを取られている」ことが非常に多いことに気づきました。そこでこの試合では「まずは目の前の敵からパックを守ることだけを第一に考えよう」と意識をしていました。つまり、今まで常に周りを探していた状態から、パックが自分の手元or足元にある場合は、周りをそこまで気にせずにとにかくパックプロテクションにエネルギーを割くということです。その結果、「向かってくる相手をかわしたあとにでも周りを確認できる時間がある」という発見をしました。まずは「目の前の敵とのバトルに勝つ」ことにフォーカスした結果、後々自分が余裕を持ってプレイできるチャンスが広がることがわかりました。

だからと言って、試合中に全く周りを確認しなくてよい、というわけではありません。

今回の話の中で大切となるのは、

・パックを持っていないとき(パスを受け取れそうなとき)
・パックを保持している時(パックをコントロールできそうなとき)

の2点です。順番に話していきたいと思います。

パックを持っていないとき(パスを受け取れそうなとき)

画像1

試合中のほとんどの時間、選手はパック(ボール)を持っていません。アイスホッケーは60分間のスポーツですが、自分がその中でパックを保持している時間は、合計しても1分にも満たないと思います。つまり、試合中はパックに触れていない時間の方が圧倒的に長いわけです。そして、この時間は常に周りを確認する必要があると僕は思っています。味方がパックを奪った瞬間や、「自分にパスが来るかも」と感じる瞬間、そもそも相手がパックを持っている時間は、全て状況整理の材料として、こまめに自分の周りをチェックするべきだと思っています。特に、自分がパスを受け取る前に関しては、この作業はとても大切なポイントとなります。相手がどの程度の距離にいるのか、フリーでいる味方はどこか、どこに逃げるべきか、といった情報をできるだけ頭の中に組み込んでおいた方が、後々良いプレイはできると思います。つまり、「バトル中ではない瞬間」においては、周りの景色を常にアップデートしていったほうが自分が楽になる、と僕は思っています。

また、パックを完全にキープして周りに余裕があるときも、同様です。ある程度敵と距離が離れている時は、周りを確認しやすいです。こんな感じ↓ 

画像3

以上が、大前提のお話です。

パックを守るとき(パックをコントロールできそうなとき)

続いては、自分がパックを持っている時、もしくは、自分のパックになりそうなときについてです。ここが今回話したかったメインの部分になります。写真で言うと、こんな感じ。

画像2

画像5

名称未設定のデザイン (22)

こういう時です。アイスホッケーの試合中は、こういう場面がたくさんあります。

先ほどの状況とは違い、自分の周りにすでにパックがあり、目の前には自分からパックを奪おうとしている敵がいるときには、僕は「周りを無理して確認する必要はない」と思っています。つまり、ここでは「バトルに競り勝つことに集中する」ということです。

例えばよくあるシーンとして、フェンス際にあるパックを取りに行くとき。”50 vs 50 puck"(五分五分のパック)なんて言ったりしますが、要するに自分と相手がパックを取るレースをしている時などは、まずはこのパックを自分がコントロールすることに労力を注いでもあまり問題ないということです。

ただ、ここで大切なことが一つ!周りを確認しなくていいのは、あくまで「バトル中の瞬間」だけで合って、その前後は状況把握をすることがとっても重要です。パックを取りに行く段階ですでに自分がパスを出す所が見えていたり、ワンタッチで味方に繋ぐ場合などは周りを確認しておく必要があります (そもそも自分はそれが得意です)。相手が自分に向かってきていながらも、すぐににパスを出す必要がある場合は、周りを確認する必要があるでしょう。

ただ、もしも試合中の状況で、「ここはまずは自分がこの1対1に勝って局面を打開する」と考えている時であれば、目の前に敵に集中することは決して間違いではないと思います。これはあくまで僕の意見になりますが、無闇やたらにずーっと周りを確認し続けなくても全然やっていける感覚があります。(見えるに越したことはないけどね)

常に周りを見ようとして、目の前のパックを疎かにして、結果取られてしまうよりも、まずは向かってくる敵との勝負に集中して、そこを切り抜けた後(切り抜けながら) 周りを確認してもプレイメイクするには十分時間があるのでは、というのが僕の仮説です。

ここでもう一点大切なポイントがあります。それは、「バトルに集中する時間をできるだけ短くする」ということと、「バトル後の周辺確認をできるだけ早く(ほぼ同時に)行う」ということです。

バトルに集中するということは、つまり、その瞬間周りを確認しないということになるので、その分の遅れを取り戻す必要が出てきます。バトル前に見ていた景色から、バトル後の景色に瞬間的にアップデートすることで、プレイメイクしていきます。イメージとしては、「敵からのファーストアタック」をかわすと同時に周りを一瞬で把握する感じです。

パックをコントロール→敵から素早く離れるor仕掛ける→同時に状況確認

といった感じです。

また、「敵からパックを守る」と聞くと、自分が体を使ってパックを隠すような動きをイメージすることがあるかもしれませんが、ここ最近の僕の辞書では、「パックを守る」=「足を動かし続けて敵から離れる」ということを意味します。つまり、そもそも敵に周囲を囲まれないようにするということがとても大切になります。上手な選手は、ここのスペース作りが本当に素晴らしいです。アイスホッケーでは「ピン」と言って、ディフェンスはフォワードをフェンス際で押さえつけるような動きをしてきます。正直な話、ピンをされてしまってはほとんど何もできなくなります。つまり、「ピン」されないように動くことが大切になります。

ここで、ピンされないためのひとつのコツを紹介すると、「フェンスから体一つ分離れた場所で勝負する」ということです。要は、もし相手がフェンスを使って押さえつけようとして来ても、体一個分通り抜けられる(反転できる)スペースをあらかじめ作っておくということです。英語では、"Get off the wall"なんて言ったりします。これはフェンスがあるアイスホッケーならではのものかもしれませんが、どの場面でも大切な動きになります。

少し話がそれましたが、「パックを守る」時は、必然的に自分の足を動かすことになるので、その結果的との距離が離れて、周りを確認できる時間が勝手に生まれてくる、という感覚です。

まとめ

本当のところを言うと、敵とのバトル中もある程度は周りは見えいるし、経験上もう無意識に状況確認をしてしまうものなのですが、今回伝えたかったことは「その景色のアップデートに割いていた労力を、まずは敵とのバトルに打ち克つことに全フリする」ということです。先ほども言ったように、バトルにさえ勝てれば、周りを確認できる時間は勝手に生まれてきます。パっクを触った瞬間にパスをしたりするような場面でない以上は、目の前の敵との1対1に全集中の呼吸を使ってよいと思います。(使い方あってるのか?)

これは、今までの経験があるからこそ言えることかもしれないし万人に共通するとは限りませんが、僕はこの新たな発見にとってもワクワクしています。

今回は、どっぷり選手目線でお話をさせていただいたので、少し複雑で感覚的な内容となってしまいましたが、僕は、こういった細かい部分を突き詰めていくことが選手にとってはとても大切なことかと思ってます。そして、このような作業自体僕はとても好きです!笑

「スポーツ選手」はこんなこと考えながらプレイしてるんだよ、ということが皆さんにとって面白いと感じてもらえたら幸いです。これからも、練習中試合中に問わず、自分で立てた仮説をガンガン検証していきたいと思います!これがあるからスポーツは面白い!

今回の件について賛否問わず、皆さんからの意見お待ちしております!どう思ったか是非教えてください!他のスポーツをやっている人の意見も聞いてみたいな!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

三浦優希



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?