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19. なぜ日本人は”勝てない”のか?(前編)

今から、ここ最近ずっと考えていたことについて少しお話させていただきたいと思います。
*これから語ることは、全て僕の経験則での話となります。定量的データは一切ありませんのでそこはご了承ください!

ここ最近、私は”Tenacity”という言葉を多く使います。これは、「粘り強さ」や「執念」といった意味があり、現在の監督から「アイスホッケーをプレイする上で、君に最も足りていないのがこの部分」と指摘されてから、この言葉についていろいろと考えていました。

現在私はなんとかこの”Tenacity"を体現するために試行錯誤しているわけですが、これは他のどんな対人スポーツにおいても日本人が苦手とするものというイメージがあります。もちろんすべての日本人選手に当てはまるわけではありません。実際にサッカー・バスケットボールでは世界トップレベルで活躍している選手もいます。ただ、そう言った選手は決して多くなく、ほとんどのコンタクトスポーツにおいて、日本人選手は海外で活躍することができていません。外国人選手と対戦したり、海外でプレイすると、「日本の選手は上手ではあるんだけど、なぜか試合で活躍できない」という認識はどのスポーツにおいてもあるのではないでしょうか。

では、外国人とのその差はどこで生まれて来るのでしょうか。アメリカンフットボール選手の栗原 嵩(くりはらたかし)さんが先日ツイートされていたように、まず要素の一つに体格や身体能力と言うものが大きくあります。日本では軽視されがちなこの部分は、海外においては大きな評価指標の一つです。例えばの話、「アイスホッケーが上手なら、ウエイトは全然できなくてもオッケー」ということはまずありません。(ひょろひょろの僕が言えたもんじゃない)

それに加えて、スキルやスピードがあるといわれることが多い日本人選手ですが、僕の経験上の感覚では、決してそんなことはありません。確かに、10代前半までなら日本人は世界的に見てもスキルがあるとは言えますが、プレイする環境のレベルが上がれば上がるほど個人スキルの高い選手は山ほど出てきます。というより、そういった選手しか残りません。年齢とレベルが上がるにつれてほとんどの選手がある程度のスケート力や、個人スキルを兼ね備えているため、その部分だけで自分が戦おうとしても必ず通用しない瞬間が出てきます。


そして、僕はもう一つとても大きな要素があると感じています。

それは「競争」です。海外の選手たちは、幼い頃から激しい競争と常に隣り合わせです。勝敗にこだわることや、チーム入団のためのトライアウト、試合での個人スタッツや、チーム内でのレギュラー争いなど、小さい頃から自分のポジションを獲得するために日々戦いがある環境に身を置くことが当然となります。そして、現在高いレベルにいる人は皆その環境を何度も経験し、くぐり抜けてきた選手たちです。

「小さい頃から勝ち負けにこだわるのは良くない」という意見を聞きますが、僕の現在の個人的な意見としては、勝敗に敏感になることはとても必要なことだと思っています。勝利至上主義とまではいかなくても、例えばその子供たちが将来プロになったり、海外で活躍したいと考えているのであれば「勝てなくてもいいから試合を楽しもう」という感覚でプレイさせるのは非常にもったいないと感じます。

上手い下手に関わらず、どんなレベルや年齢であれ、一点が勝ち負けを分けるような環境に多く触れることは、その後の選手のキャリア形成においてとても大切な要素となります。「次の1点が試合を決める」という状況において、選手の戦い方や、コーチングは大きく変わってきます。

例を出して言うと、「試合開始直後のスコア0対0」という状況と、試合残り時間が2分を切っている時のスコア0対0」というシチュエーションでは、求められるものが大きく変わってきます。試合開始直後であれば、リスクを冒して得点を取りに行くことはそこまで問題のあることではありませんが、それを試合終了間際にやったとして、それが原因で逆に失点をした場合、チームの勝利が遠ざかるのと同じです。
要するに、時間帯やその試合の戦況によって、個人がどのようにプレイするべきかは大きく変わるということです。そして、それは教えられていくものであると同時に、自らの経験によって培われていくものでもあります。突然身につくものではありません。

ただ、これを実現するために徹底しなければいけないことが一つあります。
それは、”プレイする環境がある程度自分と同じレベルの選手たちで統一されていなければいけない”ということです。

適切なレベル分けがされていないリーグや環境の中で、勝ち負けにこだわると、いつまでたっても実力が足りず試合に出れない子供たちが出て来たり、逆に実力差がありすぎて10点差以上の試合になると言った事例がよく起きます。現代の日本アイスホッケー界ではよく聞く話です。選手として貴重な学生期間を、ただ応援席で過ごして終わりなんていうこともあります。

僕がプレイしたチェコやアメリカのリーグは、U16、U18、U20といったように、各年代ごとにチームが分けられており、さらにその年代ごとでも1軍2軍というように個人の実力に合わせて所属チームが振り分けられています。そして、それをしっかり統括する団体・リーグが必ず存在します。
チェコ時代、U20の1軍チームでプレイするための実力がないと判断されたとき、一度2軍に行って経験を積み、再び1軍に復帰し、そのままプロ契約を結ぶというケースを何度も目にしてきました。
自分の実力に合った環境が用意されているため、選手たちは”万年補欠状態”になることはほぼありません。

まず大事なことは、勝敗に自分が関わる(試合に出れる)こと、そしてその経験回数(試合数)を増やすことです。


さて、今までは「環境・リーグ形態」について少し思うところを簡単にまとめてみました。僕は決して今の日本の育成状態を批判しているわけではなく、自分なりに日本と海外を経験して、肌で感じてきた違いをこの場に書き出しているだけです。

そして、重要なこと。ここまでは、前置きとなります。明日投稿する後編では、選手目線での話をさせていただきます。

過酷な競争を勝ち上がってきた海外選手と、日本で特に大きな競争を経験しないまま育ってきた僕との違いを、自分の体験をもとにお話していきます。

明日の続きをお楽しみに!


三浦優希

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後編、公開しました!こちらからどうぞ!












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