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絶対忘れるながやめられない 6

~会社員6人組がCDをリリースするまでの記録~
前回のお話はこちら

己の腰の重さ×記憶力のなさ×変な真面目さが相まって(ちゃんと書こうとしちゃう)、遅々として進まぬこのシリーズ。このペースで書いていたらあっと言う間に還暦を迎えそうである。還暦まではいかなくとも、この先何があるかなんてわからないから、環境や心境の変化が訪れて例えばぜわすが活動休止したり解散したり、例えばセルラが抜けるなんてことになったら、「絶対忘れるなはやめたのに『絶対忘れるながやめられない』がやめられない」なんて笑えない事態になってしまうかもしれないので、ここからはスピードをあげていきたい(もちろん現時点ではそんな予定などないよ、可能性の話です)。わたしが日々ブログを愛読しているヌュア○スのフジ○キPも読んでくれてるみたいだし。

2013.10

前回かいたとおり対バン全員魑魅魍魎(ほめてる)のイベントでわりとパンチを食らった我々は、へこんでる暇もなくすぐ次のライブが決まっていた。はじめてのハコ、下北沢のモナレコードである。きっかけは8月のある日、絶対忘れるなのSoundcloudに届いた一通のメールだった。


絶対、忘れるな さま

はじめまして、下北沢のライブハウスmona recordsの●●●と申します。
突然のメッセージ、失礼します。

soundcloudを辿っていて偶然ページを見つけ、音源を拝聴しました。
唐突で失礼かと思ったのですが、音源が本当に良かったのでご連絡しました。”アイスクリームポップアップトゥギャザー”すごく良かったです!
とにかく底抜けなポップ感と、オルタナな部分がどこか根底にはあるのが
音を聴いていて感じました。ぜひライブを拝見したいと思いました!

ぜひ一度mona recordsに出演して頂きたく思っています!
(一部抜粋)

(元モナレコのSさま、無断で引用してすみません!)

Soundcloudにアカウントを作って1、2年ほどの間、細々と曲をあげていたけれどこんな連絡をもらったのははじめてだったのでとても驚き嬉しかったのを覚えている。そして喜びについで全員が口にした言葉、それは

「オルタナ…」

だった。

後日、我々はメールをくれたSさんに詳細を聞きにモナレコードへ行った。メンバー全員がいったのかは覚えていないが、少なくともぜわすクラシックス(志賀すいセル)はいたと思う。モナレコードで出迎えてくれたSさんは目がくりっとしていて、どこかほんわかしているような、そうでもないような、不思議な雰囲気のあるかわいらしい女性だった。

ハコのことやイベントの詳細をひととおり聞いて、いいですね、ぜひやりましょう、となったあとで、志賀が

「ところで…」


と口を開いた。

「我々ってオルタナなんですか?」

Sさんは笑った。志賀はたたみかけた。

「というか、オルタナってなんですか?」


この日はそれを聞くためだけにモナに来たと言っても過言ではなかった。

というのも、自分たちがどんなジャンルなのか全くわからずに活動をしていたので、第三者目線の評価というかラベリングをされたのがおそらく生まれて初めてで、単純に興味があった。あと、オルタナって結局のところなんなのか、誰もよくわかっていなかったのだった。

ただわたしの残念な脳みそは、Sさんがそれらの問いになんて答えたのか全く覚えていないのであった。

そんなこんなで当日。

何をしたかは例によって覚えてないのでまたついろぐでその日のRTを探ってみると、円盤で共演した魑魅魍魎の一人、うどんさんが見に来てくれていた。このころ彼はすべてのツイートの最後が「セックスしたい」だったのでちょっと引用はしづらいが、彼はぜわすをあの共演以来好いてくれ、今でもたまにライブに遊びに来てくれるとても素敵な友人である。

他にも、音楽関係の仕事をしている知り合いが見にきており、わたしはひそかに緊張していた。
彼はゴールデン街の「無銘喫茶」で知り合いのお姉さんが一日店長をやるというので遊びに行った際、同じく来ていた友人が連れていたOさんという人で、少し話すなり「俺はお前みたいな中途半端なサブカル女が一番嫌いなんだよ~!」とニコニコしながら絡んできたので、わたしは(なにこの人、こわい……)と心底怯えていた。友人が「彼女も音楽やってるんだよ」みたいなことを言ったら「だいたい名前でダメかどうかわかる、バンド名は?」と聞かれたので、「"絶対忘れるな"です……」といったら「いい名前じゃん」みたいになって、実際にすぐこの日のライブを見に来てくれたのだった。わたしは展開についていけず、(なにこの人、こわい……)と心底怯えていた。

で、ライブ中、「PPCK」というパイパンの曲のアウトロ、セルラの独白部分で「剃れ剃れ剃れ…」と叫んでいる時にふとフロアを見てみたら、なんとOさんがものすごく険しい表情をしたまま微動だにせずうつむいているではないか。

(ヤバい、こんなふざけた曲をやって、業界の人を怒らせてしまった…)

わたしは内心気が気でなかった。ただでさえ怖かったし。

しかし、ライブを終えておずおずとフロアに戻ると、Oさんが満面の笑みで近づいてきながら「めちゃめちゃ良かった!」といってくれたのだった。

そこで

「えーっ、さっきの表情はなんだったん」

などと言えるはずがない。続けてOさんは「スカムバンドかと思ってたら普通によかった」「妥当な例えかわからないけどディスパ(THIS IS PANIC)と同じくらいの衝撃があった」「これはメジャー争奪戦だな」みたいな、本心が何ミリ含まれているかは全くわからないけどとりあえず前向きな感想をたくさん話してくれ、帰った後にご自身のSNSでもそのようなことをツイートしてくれた。いわゆる"業界の人"っていまだに全然知らないけど、このことはいろんな意味でインパクトをもって記憶に刻み込まれている(彼は今でも仕事でお世話になっている。Oさん、いつもありがとうございます)。

この日は、のちにUrbanDriveFamilyというイケてるグループでラップや歌を担当することになるG.O.D.ファザ子ちゃんが来てバウムクーヘンをさしいれてくれたりもしていた。ありがたい。そして今出てきている人たち全員、いまでもなんだかんだ関わりがあるのは嬉しいね。

撤収後、2Fのおんがく食堂でモナレコードのSさんと清算しながら

「やっぱりオルタナですねえ」

みたいなことをのほほんと言われた我々は、とりあえず

「よくわからんがSさんがそういうのならきっと我々はオルタナなんだろう。これからはどんどんオルタナを自称していくぞ!MCでも言っていくぞ!」

みたいな結論に着地した気がする(※2019年2月現在、言ってない)。

そこからモナレコードには何度も出演依頼をいただき、ぜわす思い出の地となっていくのだが、1つのライブでまたこんなボリュームになってしまったので続きはまた今度。

(結局前回の2013年10月から1か月も進んでないというオチ)

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