スポーツ②

今回は選手の権利について書いてみようと思います。

方向性としては、
①SNS等で選手の写真が自由に使われていること
②箱根駅伝の利益
という前回提示した疑問から論点を抽出して考えていきたいです。

この①②に共通しているのは、被写体が選手であることです。

現代において、選手の名前や写真、映像は簡単に手に入り、また簡単に発信することができます。

しかし、選手について発信する行為は第三者が自由に行ってよいのでしょうか?
選手固有の権利なのではないのでしょうか。

今の日本の法律に、選手の氏名や肖像に関する権利を定めているものはありません。
日本では、選手自身に生じる権利(パブリシティ権)は、裁判例によって認められているものであります。

パブリシティ権とは、顧客吸引力のある氏名・肖像から発生する経済的利益・価値を排他的に支配する権利です。

日本では、パブリシティ権について、王貞治選手、中田英寿選手、長嶋一茂選手などに関する裁判例があります。

このパブリシティ権は選手に認められる権利として存在しますが、出版・中継等での使用が常にパブリシティ権侵害となるとは限りません。
(なお、どのような選手でもパブリシティ権が認められるかという点は、パブリシティ権の法的性質論へ立ち入ることとなるため今回は避けたいと思います。)

憲法は表現の自由(憲法21条1項)を規定していて、パブリシティ権は表現の自由との関係で一定程度の制限を受けると考えられています。(知財高裁平成21年8月27日判時2060号137頁)

具体的には、上記裁判例によると、「氏名肖像の使用する目的、方法、態様、肖像写真についてはその入手方法、著名人の属性、その著名性の程度、当該著名人の自らの氏名・肖像に対する使用・管理の態様等を総合的に観察して判断されるべき」とされています。

つまり、めっちゃざっくり言うと、色々な事情を検討して、事例によって良いか悪いか判断しましょう、ってことです。

これをみると、SNS等で選手の写真や記事をあげたり、販売したりすることはパブリシティ権侵害となる可能性があります。(もちろん事例によります。)
箱根駅伝の中継も、中継という性質上、侵害にはならないと考えられますが、場合によってはパブリシティ権侵害と判断される可能性があります。

ただ、表現の自由との関係もありますし、また、メディアがスポーツ界を活性化させていることは間違いありません。
スポーツ産業の発展にメディアは欠かせないものなのです。
なので、メディアに対して、出版・中継等を制限してほしいというつもりはありません。

私が言いたいのは、
①選手にもパブリシティ権という権利があることを前提に、なんらかの形で選手の氏名や肖像を使うのであれば、きちんと承諾をとってほしい
②経済的利益を生む活動のために使用するのであれば、選手に対価を支払ってあげてほしい

ということです。

選手はメディアのために練習しているのではありません。
それぞれの目標のために練習しているのであり、その努力を競技以外の別の形で第三者が使用するのであれば、選手に対して真摯な対応をしていただきたいです。

なお、実業団選手・プロ選手については、企業との契約によって、パブリシティ権を企業が持ち、対価等が企業に入る場合もあると思います。(学生スポーツでは契約等はないと思いますが…)


個人の意見としては、少しでも選手のためになるように、選手へ還元できるような制度設計をしてほしいと思います。

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