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キクラボヲキク【山根明季子】

2020年4月11日(土)・12日(日)&4月18日(土)・19日(日)に、JWCM(女性作曲家会議)&PPP Project 共催で行うキクラボ#1に関するインタビューシリーズ。作曲家の山根明季子さんにお話をお伺いしました(インタビュアー:わたなべゆきこ)。

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権力は要らない


ー(わたなべ)実は一つ、気になっていることがあるんです。それについて山根さんにずっと聞こうと思っていて。前回の中堅女性作曲家会議のときに、事情で欠席された山根さんから頂いた質問に関してなんですけれど。

私から皆に聞きたいことは権威を背負うことについてです。大学教員や審査員が男女50:50じゃないのは偏ってるよねという話が内々であって、もしここにいる皆が権力を手にしたとしたら、できること、やりたいことを1つ教えて欲しいです。手にしたくない、もし手にしても拒否したい、関心がないなどの場合は、権力とは関係ないところでやりたいことを何か1つ教えてほしい。

あの時、パネリストの内、誰もそれについて答えることが出来なかったんですね。「権力とは何か?」というところで、話も終わってしまって。それがずっと気になっていたんです。なので、今日はそこから始めても良いですか?例えば、その質問の意図は何だったのか。

(山根)質問の意図・・・昨今「女性に権利を」と色々叫ばれてますよね。権利・・・というか「決定権を持つ」ということは「決めなければいけない」、そういう仕事を引き受ける、ということでもあると思うんです。だから、現実にそうなった時に、みんなどんなビジョンがあるのか、聞きたかった。

ー「権利がないこと」を叫ぶ以前に、その「権利を得た」場合、何がやりたいのか、そこが明確になっているかっていう。

(山根)私自身は、大変だと感じてしまうんです。もし、現実的にそうなったら。

小出稚子さんから、権力とラピュタの飛行石の話が出ていましたが、それは・・・?

(山根)ラピュタの飛行石(笑)なんだったかな・・・あ、そうだ、思い出した。あれって、持ってると悪用される可能性がある、余りあるエネルギーをコントロールする力を得るという意味では、私が考えている「権力」っていう考えに近いのかなって。権力は、他者を支配しようとする力だったり、他者の何かに介入していく力だと思うの。

ーなるほど。

(山根)エネルギーをどう使うか、それを考えることって、自分も物凄い消耗するはずで。それよりも、私は音で追求したいことに没頭したい、そこに幸せを感じる。だからこそ、みんなに聞きたかったんです。それでも権利を、権力を持ちたいのかどうかって。

ー権力を持つ=決定権を得る、ということであったら、今は私たちではない誰かが「決定する仕事を担ってくれている」ということでもありますよね。そして、何かを「決定する」ということは、その結果に「責任を持つ」ということでもあると思うんです。その「責任」を誰かにずっと押し付けていていいのか、そこに疑問を持たなくてもいいの?っていう風にも思うんです。

(山根)うんうん・・・確かにそうですよね。

ー個人的に思ったことは、実際権力を持ったら、労力もエネルギーも費やさなきゃいけないんだけど、それを持つ「妄想すること」は、一つアリなのかなって。もし、その妄想さえも全然していないっていうことだったんなら、それ自体が問題だという風にも感じました、自戒も込めて。

(山根)そうですよね。

ー今jwcm(女性作曲家会議)では、塩見允枝子さんのドキュメンタリーを撮っていて、色々とお話を伺う機会があると思うんだけど、塩見さんは権力を持たないことを選択されてきたように感じたんです。実際インタビューをしてみて、山根さんはどう感じられましたか?

(山根)明確に権力と距離を置いてらっしゃいましたね。今それらの情報を自分の中でも消化している途中で。

ー現在音大でポジションに就いて、作曲を教えられている女性作曲家の先生って、特に私は自分の師匠の背中なんかを見ていて、その権力というものと闘ってらしたのかなって感じてるんです。見えないところで、何かを動かそうとしてらっしゃったんじゃないかって。勝手な憶測なんだけれども。

(山根)師匠世代の作曲家とオープンに話をする機会を、これから作っていけたら良いですよね。

ーそう思います。今まだ権力を持っていない私たちだからこそ、言えることっていうのもあると思うんです。だからこそね、妄想だけはしていきたいなって。そういう意味で、今回のキクラボのシンポジウムに作曲家だけではなくて、社会学者の高橋かおりさんや竹田恵子さんが入っていたり、美術史家の吉良智子さんのお話を伺えるのは、とても良い機会ですよね。

(山根)そうですよね。違う角度からお話伺えるのって、とても興味深い。あと・・・今実際権力を持っている人のお話も聞きたい。

ー実際権力を持っている人!・・・例えば??

(山根)誰なんだろう・・・作曲界の重鎮? でもお呼びしたとしても、オープンで語れることって少ないのかしら・・・。そもそも、私たちって何を解放して、どこに向かいたいのか。

ー今、全てが縮小傾向にあるじゃないですか。助成なり奨学金なり。そういうことって、こちらから訴えていかないと変わっていかないと思うんです。「自分たちは〇〇がしたい」だから「これだけ予算が必要」そして、それが「社会にとっても〇〇だ」って訴えることができる言葉を持たなければいけない。内輪で内情を愚痴るだけじゃなくて、ジャンルを超えても理解してもらえる言葉で説明できるようなリーダーは必要だと思います。

(山根)ジャンルを横断して理解してもらえる言葉で・・・青木涼子さんとか。


ー能声楽家の青木さん。彼女のような存在は、絶対必要ですよね。存在自体が象徴でもある。

(山根)なるほど。じゃあ業界全体の視点では・・・

ー個人の活動だけじゃなくて、全体を考えられる人って、なかなかいませんよね。

(山根)うーん。

ー例えば、自分自身が輝ける場所を自分で作っていくってね、例えば作曲家が個展をやるとかっていうのは、もちろん価値があるんだけれども、それをやっていくことで、私自身は未来があまり見えないんですよね。

(山根)私もモチベーションないなぁ、そこには今。

ー個人の承認欲求から開放されて、もう少し先の未来を見ることで、本当に今やるべきことにお金が分配されたらいいいなぁっていうのは思うところなんです。

(山根)じゃあ…結局権力ってお金なんだろうか。

ーなんだろう…。ただお金っていう面も、どこかしらあるとは思います。

(山根)だとしたら、界隈に足りてないですよね。めぐるまで行かない。

オンラインサロンでも書いていたことなんだけど、音楽における「先行投資」とは何か?っていうことを最近考えていて。今までやってきたことって投資になっていたのかっていう話。「先行投資」っていうのは、権力があるものや人にお金を預けることでもある。これで耕してくださいね、そしてその収穫は分配しましょうねっていう。

(山根)そうやって考えると、今わたなべさんがやっている「さっきょく塾」は、先行投資ですよね。土壌を耕している。この世界って、今は評価され走り続けることでしか生き残れない、要は蹴落とす構造だと思うんです。圧倒的な個人の輝きも良いけれど、土壌としてね、どうやって循環し、持続していけるのか・・・。わたなべさんはオンラインの可能性を積極的に活用して、自分にできること、誰かにできることを耕そうとしていますよね。

そうだ、わたし「お金をめぐらせる」ことに関しては、一つビジョンがあるんです。まずオンラインサロンで、試験的にやってみても良いと思うんだけど、仕事を分配するシステムを考えたくて…。例えば、仕事って偏ることもあるじゃないですか、忙しい時にね「ちょっと、これを手伝ってほしい」みたいな案件をサロンで投げる。そして、手伝ってもらったらサロン通貨を発行する。お互い、依頼したい時に何かお願いできる。それを回していく。実際生活するために必要なお金とは関係ないところで、それぞれの人が持つ力を循環させ、協力し合うことが出来る気がするんです。

ー「ちょっと、自分のこの曲を聞いてもらって、この人からコメントが欲しい」みたいな案件を依頼して、頼まれた人は、やったらポイントが貯まるっていうこと?

(山根)そうそうそう!サロン通貨とかポイントじゃなくて、もっといい名前を考えて(笑)

ーあぁ、それ良いですね!早速やってみましょうよ!オンナ作曲家の部屋サロンでやってみましょうか?

(山根)ゆきこ総合大学でやりましょうよ!

ーゆきこ総合大学??

(山根)わたなべさんと森下さんがやってる「さっきょく塾」とjwcmの「オンナ作曲家の部屋オンラインサロン」全体で使える生活費とは別の経済圏。

ーわー。それ実現したら面白そうです。

(山根)そしたら、それぞれ素晴らしい能力を持ってるサロンメンバーや、さっきょく塾とも繋がって、循環は促せそうですよね。お金がないから依頼できない、依頼しにくい、っていうのが、助け合うことでめぐって、少しでも波及していくかもしれない。

ーいいですね。さっきょく塾では、もともと講師vs生徒という構図ではないにしろ、今は私が持っている知識をみなさんに提供する、ということが多いんです。でもね、塾生でも特殊な技能を持った方が沢山いるんですよね。なので、将来的には、私から塾生へ、という一方向のベクトルじゃなくて、双方から学び合える形になればいいなって思ってたんです。

(山根)私はレッスンで関わる時は、その人の感性や特性に着目して向き合っていくことが多いんだけれど、各々他の人にはない良いところがあるんですよ。そのことが自信に繋がったり、気持ちを鼓舞できたら良いですよね。

かわいいとかっこいい

ー最近「かっこいい」とは何かっていうことを改めて考えていて、山根さんが言う「kawaii」と比較してみたりしているんだけど、「かっこいい」に比べると「kawaii」のほうが身近ではあるんです。

(山根)音として?

ー音として、というよりは、概念が。私の中の「kawaii」もわかるし、増田セバスチャンさんが作る「カワイイ」も感覚的に知っているんだけど、「かっこいい」がわからない。

(山根)私もそうなんです。感覚的に「かっこいい」って言っちゃうんだけど、実際はわからないですよね。

ーキクラボでも取り上げる「kawaii」を知ろうとしたらどこから手につけたらいいかわからず。それで、まず「かっこいい」を勉強し始めたけど、どうもわからない。

(山根)「かわいい」と「かっこいい」は相反するもの?

ーうーん、そうなんですよね。それもわからない。でもね、「かっこいい」って往々として男性性を形容するときに使う言葉だと思うんです、一般的に。「キムタクかっこいい」みたいな。それで、「かわいい」だとしたら、「きゃりーぱみゅぱみゅってかわいいよね」と言う感じで。それが大多数の人が使っている「かわいい」と「かっこいい」の使い方なんじゃないかな。

(山根)大多数の人は・・・か、ううむ。

ーそう。それで、私が思う「かっこいい」って、どこか表面的にも聞こえるんです。

(山根)あぁ、そうなんだ。

ー「かっこいいよね」って人に言うの…。どこか気恥ずかしい。

(山根)(笑)。考えていたんですけど、私が「かっこいい!」って言っちゃう時って、「自分を滅して相手に委ねたくなる」時なんですよね。


ーへぇ!なるほど!

(山根)もう、自分の感覚なんて関係ない、全て委ねよう、みたいな感じ。人に対しても、その人のことを「かっこいいなぁ」って思うと、全て委ねたくなっちゃう。決定権を全て、その人に預けたくなる。

ー対お父さん的な感覚?

(山根)(笑)。お父さん、どうかな?(笑)、信頼して委ねるっていう感じ。

ー決定権を委ねたい。敢えて権力を持って欲しいと。

(山根)「ついていきます」みたいな。


ーそれに対して「かわいい」は?

(山根)「かわいい」は、手を差し伸べたくなる。その存在自体を愛でたり、助けたり、これってどうなってるんだろうって自発的に知りたくなる。

ー前オンナ作曲家の部屋サロンでも出ていた記事で、「かわいいと思う気持ちは、小さいものを愛でる感覚と繋がってるのか?」っていう話になりましたよね。そういうのとも違う?

(山根)それもあると思います。小さくて、自分より弱い存在感に対して、「かわいい」と思う心というか。赤ちゃんを見て、なかなか「かっこいい」とはならないですもんね。

ーということは、「生存」と関係がある概念なのかしら、「かっこいい」「かわいい」って。赤ちゃんって、生存するために、ああいうフォルムになっているっていう話を聞いたことがあるんです。その根拠はともかくとして、生きていくために「かわいい」「お世話したい」を誘発するような形になっているっていうのは、実際なるほどって思ったんですね。「かっこいい」に関しては、「かっこいい」って思った方は、生存率が上がるわけですよね。より強いものに惹かれて、生存していくための決定権を委ねる、という意味では。

(山根)それと、「自律的」かどうかっていうのもあると思います。「かっこいい」は、物凄く自律的生存本能が高い気がするんですね。

ーかっこいい物や人物自体が、自律的生存本能が高い?

(山根)そう。そういう意味では、「かわいい」とは逆の力学が働いているのかもしれない。でも良し悪しではなくて、そもそも性質が違うものだと思います。

ー「かわいい」を「かっこいい」との比較で考えるっていうのは、面白いですよね。

キクラボでは、山根さんが中心になって「kawaii」をテーマにしたワークショップをやることになっているんだけど、具体的にどんなことを予定するのか、最後に教えてもらえますか?

(山根)自分たちが「kawaii」と思う音を出して、それらをよく聴きます。

ーそれは、参加者一人ひとりが考える「kawaii」の音?

(山根)そうなんです。「kawaii」って人によって違うと考えているんです。正解不正解はこちら側から出さずに、各々の感覚に向き合えるような時間にしたいと思っています。

ー普段何気なく使っている言葉でも、概念を突き詰めて考えてみると、「一体これは何だろう」って思ったりしますよね。特に「かわいい!」って何にでも使えちゃうじゃないですか。増田セバスチャンさんのインタビューにも書いてあったけど、若い世代の「かわいいー!」って全てなんですよね。だからこそ「かわいい」が何かってじっくり考えてこなかった気がするんです。そういう無意識で使っている言葉に対して、みんなで考えて、音として出してみるって、面白そうですね。

(山根)出してみて、その感覚をみんなでシェアする。

ーでもそれって、何て言ったら良いかな、実は…ものすごい恥ずかしいことなんじゃないですか?

(山根)そうそうそう。

ーだって自分の個人的な○○が好き!っていう超個人情報を「公開で」出すっていうことでもある…。

(山根)そうなんですよね。でも私はそれを自分の作品でもやってる(笑)開示だよね、自主的自己開示、感覚の。

ーそう、だからね、凄く勇気あるなって思ってたんです。それをみんなでやるって、凄いイベントだよなぁ(笑)でもそれがもし出来たら、そういう感覚をシェアできたら、その後楽になるんじゃないかなぁ。

(山根)開示だけじゃなくて、他者への想像力もね。無理やり開示させることもないから。それも含めてのね。怖くない(笑)。

ーこのkawaiiイベントは、男女関係なく、年齢関係なく、参加できるんですよね?

(山根)誰でも参加可能です。もしかしたら、楽器とかを持ってきてくださると、出しやすい方もいるかもしれない。声を出すことに抵抗がある方とか。

ーわかりました。とても面白そうですね、楽しみにしています!今日は、長丁場のインタビュー、ありがとうございました。

(山根)こちらこそ、ありがとうございました!

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2020年4月11日(土)に、キクラボイベントの一環として行われる「かわいい音とは何か・かわいいとは何か」パフォーマンスワーク。同日、同じ会場で社会学者の高橋かおりさんをゲストに行われる「Artsと仕事とお金」と題したレクチャー&ディスカッション、夜には「『良い芸術』ってなに?女性作曲家が、社会学者と美術史家と話す」なども開催されます。社会や音楽について考えながら、自身の感覚も解放・共有できる一日。みなさんのご来場、心よりお待ちしております。

2020年4月11日(土)14:15~ 
SHIBAURA HOUSE 
(山手線/京浜東北線「田町駅」芝浦口より徒歩7分・都営三田線/浅草線「三田駅」A4出口より徒歩10分)

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「かわいい音とは何か・かわいいとは何か」
かわいい音楽ってなんだろう?パフォーマンスワーク「カワイイ^_−☆ (山根明季子・作) 」で音を出し、音を聴き、体感をシェアし合う、全員参加の感覚型ワークショップ。年齢・音楽経験問いません。楽譜を読めなくても、楽器を持ってきても、手ぶらでも大丈夫です。

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若手作曲家のプラットフォームになるような場の提供を目指しています。

またのお越しをお待ちしております。
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ドイツ在住作曲家。Project PPP代表。jwcw(女性作曲家会議)メンバー。オンラインで学ぶさっきょく塾やってます。

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