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キクラボヲキク【牛島安希子】

2020年4月11日(土)・12日(日)&4月18日(土)・19日(日)に、JWCM(女性作曲家会議)&PPP Project 共催で行うキクラボ1に関するインタビューシリーズ。作曲家の牛島安希子さんとJWCMの活動について話しました(インタビュアー:わたなべゆきこ)。

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キクラボヲキク【渡辺愛①】
キクラボヲキク【渡辺愛②】

ー(ゆきこ)今日はJWCM(女性作曲家会議)メンバーの牛島安希子さんにお話を伺いたいと思います。

2018年に中堅女性作曲家サミットをやったじゃないですか。あれね、事の発端は、私の日常の延長にあるんです。日本を出てから10年以上経って、今まで出会ってきた同士・友人は今どんなことしてるのかな、どんなこと考えてるのかなぁ、と思って。思い付きでツイッターで呼び掛けてみたら、一番最初に反応があったのが、渡辺愛さんと牛島さん。

(牛島)そうだったんですね。他の国だったり、日本という別の土地で年月を重ねてきた人たちの考えを知りたいというような感じだったんですね。

ー(ゆきこ)実は「帰国ついでにみんなの顔見たい」「話聞きたい」くらいの軽い気持ちだったんです。帰国一か月前くらいに思いついて、ツイッターで呟いて、とにかく準備して開催までは何とかこぎつけた。その時は、今のような形になることは、全く予想していませんでした。

牛島さんと初めて会ったのって、確かオランダでしたよね。オランダ留学後に完全帰国されて、現在は愛知で教鞭をとりながら活動されている。サミットに参加されるにあたって、どのような思いがあったんでしょうか?

(牛島)私の場合、サミットをやった2018年は日本に完全帰国して4年くらい経った時で、次のステップに行きたいけれど、どうしたら良いか、迷いの時期でもあったんです。その間、海外で曲が再演されたりしていたけれど、オランダでの活動のペースを取り戻せていないという気持ちも大きくて。そんな時にサミットの話を聞いて、次に進むために、欧州や東京の友人と自分の環境から来る違いや、日本の現代音楽界の状況も含めて、一度俯瞰してみたかったんですね。

ー(ゆきこ)フリーランスとして一人で、しかも地方で活動している、となると、自分の立ち位置や、状況を把握するのが難しかったりしますよね。サミットに参加してくれた友人たちも、それぞれ悩みを抱えていて、みんなで話してみたら、予想以上にみんなこういった場を欲してることがわかった。そこから「女性作曲家会議」という名前のコレクティブとして活動を始めました。

2019年はサミットの他に、イギリスのジャーナルTEMPOに論文が掲載されたり、学会発表に行ったり、秋にはオンラインサロンも始めました。2020年は4月のイベントや、5月のオーストリアでのイベント参加だけでなく、既に水面下で準備している活動などもあります。イベントや演奏をするために集まった音楽家グループではなく、「自由に発言するための場」としてコレクティブ。とても充実しています。

(オンナ作曲家の部屋サロン本格始動します。現在サロン参加者募集中)

(牛島)こういう場所が欲しかったんだ、と実感してます。話すことで解放されました。メンバーの皆もそう思っていたようですよね。個人的には偶然そのような状況だったんですけど、メンバーの中でも子供がいたりいなかったり、状況はそれぞれ違う。それでも今後ふりかかって来る女性ならではの人生の難題についてお互いに近い目線で話せることが嬉しいです。多分、それぞれ住んでるところが違うっていうことも良いと思います。現在の居処から、留学先、日本での出身大学も東京、愛知、京都、樅山さんはそもそもアメリカなので、情報交換して得るものが多い。

ー(ゆきこ)秋から始まったオンラインサロンでは様々なテーマが挙がって、リサーチしあったり意見交換しあったりして、毎日とても刺激的です。牛島さんは、これまでどういったテーマが印象に残ってますか?

(牛島)初めの方に話し合った音楽教育の話ですね。そもそも作曲をどう学ぶのか、自分の学び方が今にどういった形で活きているのか、そしてこれから教育にどう向かい合うか、日本と欧州の大学のシステムについてや留学時代の学び方の違いなど。教育上でのジェンダーの話題も気づきが多かったです。欲の話も印象に残っています。

ー(ゆきこ)このサロンでは、ざっくばらんに何でも気になったこと、気付いたことを話せるのが利点ですよね。教育に関しては、育ってきた環境や状況の違いから、それぞれが抱えてきた思いが全く違っているところも面白かった。個人的には、リサーチの中で知った、「芸道思想と芸術教育」(仲芳樹)を知って読んだことなどが勉強になりました。それぞれが読んでいる本をシェアしあって知識も感覚も開けていく。これもこのコレクティブならではなのかな。例えば、今まで挙がってきた本だけでも、相当数ありますよね(以下紹介図書の一部です)。

ー(ゆきこ)あと、オンナ作曲家の部屋オンラインサロンをやっていて良かったな、と思ったことの一つに、外山道子さんの存在を知ったことが大きいですね。自分が知らない時代に、子どもを持って海外で闘ってきた女性作曲家がいたんだなぁ、と。サロンの良さって、きっと自分の知らない世界が広がっていくことですよね。

(牛島)外山道子さんの話は衝撃でしたね。初めて日本人の作曲家として国際的な賞を取られてるのに、全く知られてないっていう・・これまで学んだ音楽史の刷り込みに気づいたことで、自分の中の歴史観もちょっと変わりました。他にも気になる話題が多すぎて、積読が増えていくばかりなんですよ。本当にワクワクしますよね!

ちょうどあいちトリエンナーレが開催されたこともあって、芸術の在り方についてもたくさんやり取りしました。お金のこととか、委嘱料の話なども普段表立って言えないこと多いですよね。ゆきこちゃんはガンガンtwitterで自分の意見言ってると思うけれども・・。今いろんなことが過渡期だと思うので、知恵を合わせて助け合って音楽面でもジェンダー面でも業界全体がもっと良くなればと言う想いはありますね。

ー(ゆきこ)複数人が集うサロンでは、アンテナも色々。自分が思ってもみなかったところから、悩んでいたことへの糸口が見つかったりしますよね。

(牛島)思ってもみなかったところ、ありますね。それをまた共有することで自分だけでなくメンバーの気持ちの解放へつながったり、新たなプロジェクトに繋がることもある。気になるニュース記事をすぐにシェアして話し合えるのも、精神衛生上良いと思います。前回の渡辺愛さんのインタビューにもありましたが、忙しくて話したいことがあってもなかなか会えなかったり、会っても伝えきれなかったりするじゃないですか。ツイッターなどのSNSだと話題にすることで、歪んだ受け取り方をされる可能性もあるので言いづらい。すぐに考えをシェアできるサロンはとてもありがたいです。

ー(ゆきこ)サロンで知識をシェアする、意見交換する。そして更に、異なる意見を言える「場」であること、お互いを「聞き合う」っていうのも今までにない感覚でした。嫌なことを嫌って言えたり、夢みたいなことを呟いても馬鹿にされない。夢で終わらせないで、みんなでどうにか実現方法を考えたり。今回のイベントでもそういった、私達の語らいから実現に至った内容も織り込まれています。今回イベント名として「キクラボ」っていう名前が付いているのは、とある企画案から始まったんですけれど、「聞く」「聴く」「訊く」色んなキクを体現する企画になればいいな、という思いもありました。

(牛島)夢みたいなことを言える機会ってすごく減りましたよね。サロンでは受け止めてもらえるので、発想も生まれやすいし、良い化学反応と循環が生まれているのを感じます。

「キク」と言うキーワードから始めるの、作曲家らしいですよね。山根明季子ちゃんは特に「受け取める」ってことを大切にしているなってサロンでの発言を拝読していて思うんですけど、受け止めたいし、受け止めて欲しいっていうトピックもでましたよね。それが自分の意見だったり音楽だったりするんですが、そういうことを家族とか友人でも受け止めてもらえるのが難しかったりするじゃないですか。近くにいるからこそ難しい場合もある。

"キクラボ"は元々ドイツの作曲家、ヨハネス・クライドラー(Johannes Kreidler)の活動からヒントを得たんですよね。

聞いてもらう方がお金を払って聞いてもらうという・・。ある意味、カウンセリングみたいな。以前、駅前の路上で、「あなたの話、なんでも聞きます」って看板出してた人がいて実際、若い女性が道端で椅子に腰掛けて話してて面白いビジネスだなって。話を聞いてもらうのがカウンセラーなどの専門家でなくても気軽にただ聞いて欲しいって人がいるんだなと。

ー(ゆきこ)わたしも山根さんからクライドラーの活動について聞いて、衝撃を受けたんです。今って、作り手が飽和状態にあるでしょ。みんな「作りたい」「聞いて欲しい」。少ない席をめぐって椅子取りゲームをしなきゃいけない。私たちって作り手なんだけど、作り手っていうのは同時に聞き手でもある、あり得る。この「キク」をキーワードにした、今回のイベント、私も何を「『何を』『どう』きくのか」とっても楽しみにしています。

最後に、牛島さんが注目する「キクラボ」のおすすめポイントを教えてもらえますか?

(牛島)EGSA( Education of Gender and Sexuality for Arts Japan)の竹田さん、ジェンダー・美術史研究者の吉良智子さん、社会学者の高橋かおりさんのお話を伺えるのが楽しみです。JWCMは普段色んなトピックを扱っているんですけど、音楽家同士では気づかないことも沢山あると思うんです。外から見える音楽界について伺えたらと思っています。そして、もう一つの目玉は「山根明季子さんの ”かわいい” 音とは何なのかを実践するワークショップ」。"かわいい" って日本独特の価値観でもあるし、”楽しい“ “嬉しい”という感情もそうですが、現代音楽界の歴史の中では抑えられてきたものでもありますよね。実際に可愛らしいと言えるような作品はこれまでもあったかもしれないけど、表立ってその視点で取り上げられることはなかったと思うんです。楽しみにしています。

【日程・会場】
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2020年4月11日(土)
 Shibaura House (東京都港区芝浦3-15-4)
 JR山手線/京浜東北線「田町駅」芝浦口より徒歩7分
 都営三田線/浅草線「三田駅」A4出口より徒歩10分

2020年4月12日(日)
 浦安音楽ホール (千葉県浦安市入船1-6-1)
 JR京葉線/武蔵野線「新浦安」駅南口から徒歩1分

2020年4月18日(土)・19日(日)
 フェニックスラウンジ(東京都新宿区馬場下町18-7フェニックスビル3F)
 東京メトロ東西線「早稲田」駅より徒歩 1分

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