【グラジオラスの花束 〜何度LOVE SONGの歌詞を読み返しただろう〜「村山美羽」】13話
みーんみーん。セミが鳴いてらぁ。
「めっちゃ早く起きちゃった.....」
「美羽ちゃ〜.....うわ!びっくりした!早いね!」
「目覚めちゃった」
「ちょうど今、保乃も起こそうとしてたんよ」
「朝ごはん?」
「うん、出来たから顔洗ってき」
「はぁい」
顔を洗ってリビングに向かう。
「美味しそう」
「ありがとう、今日やっけ?出発」
「うん」
「頑張るんやで!」
「がんばる」
「じゃあ保乃、保育園行かなあかんから食べたら浸けといてね」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます!」
お姉ちゃんが出た後、ぼーっとしながらご飯を食べていた。
「.....うま」
時刻は6時半。
急いで食器を洗い、着替えてなぎたちのマンションへ向かう。
「何回見ても大きいな.....首痛.....」
なぎに電話する。
[もしもし?]
[着いたよ〜]
[まじ!!?]
[どこ居んの?]
[結冬と散歩してた]
[早くしなさ〜い]
[だって約束の時間8時だよ?笑]
[.....え、そうだっけ]
時間間違えた。
[あ〜これは美羽さんが悪いですね〜]
[ごめんじゃん.....]
[うそうそ!笑 すぐ戻るからエントランスの所で待ってて!]
電話を切り、エントランスに置いてある花瓶を眺めていた。
「何の花だろう.....可愛い.....」
なんとなく調べてみた。
「へぇ.....桜小町.....かわいい名前」
「美羽〜!」
自動ドアの方を見るとなぎと沢村くんが居た。
「おはよ」
「おはよ!」
「うぃ」
「ごめんね、お待たせ!とりあえず結冬ん家入ろっか」
「なんでだよ」
エレベーターに乗り、なぎたちの階へ。
「美羽、その服可愛いね」
「これお気に入りなの」
「私、そういうの似合わないから羨ましい」
「そう?」
「なぎはジャージが似合うから」
「うるさいなぁ.....」
「笑笑」「笑笑」
エレベーターが止まる。
「じゃあ私、着替えてくるから結冬ん家でのんびりしてて」
「おい勝手に」
「はぁい」
なぎは自分の部屋に入っていった。
「部屋ちゃんと綺麗にしてんの?」
「してるよ、少なくともなぎよりは」
入った瞬間.....なんていうんだろう.....異国感?みたいな匂いがした。
「これ何の匂い?」
「分かんない。アジア系の匂い」
「なんで?笑」
「母さんがそういうの好きなんだよ」
「へ〜面白い匂いだね」
「嫌じゃない?大丈夫?」
「うん、別に大丈夫」
「はい、どうぞ」
「お邪魔します」
沢村くんの部屋には壁一面に大きな本棚があってその手前にギターが置いてあった。
「あ」
「あぁ、弾いてみる?」
「いいの?」
「うん、重いよ」
「え、じゃあいいや怖い」
「なんだよ笑」
なんとなく本棚を眺めてた。
「これなんのCD?」
「それ僕が好きなバンドのCD」
「へ〜何系?」
「ポップス?」
「ふ〜ん.....あ!これ!」
「どれ?」
後ろを向くと沢村くんは上裸だった。
「えぇ!!?何してんの!?」
「え、着替えてるんだけど」
「言ってよ!ばか!」
「あ、ごめん」
「もう.....」
「なぎの癖で」
「いいけど.....」
意外とムキムキなんだ.....なぎと殴り合いでもしてんのかな.....?
「.....これ私も知ってる」
「まじ!」
「うん、エイリアンvsアヒルの子ダック2の主題歌でしょ?」
「そう!」
「面白いよね〜」
沢村くんは着替えを終え、ベッドに座ったので私は床に座る。
「別にベッド座ってもいいよ。なぎもいっつも座ってるし勝手に」
「ありがと」
「え、誰が好き?」
「うわ〜.....グワックかなぁ」
「グワックね!確かにカッコイイよね〜」
「私、あの子の真っ直ぐな所好き」
「わかる」
「沢村くんは?」
「僕はエイリアン好きなんだよね」
「えぇ.....まじぃ?」
「違うのよ、あの無骨ながらちゃんと考えて行動してるところがエイリアンなのに人間性があるというか」
「.....まぁたしかに」
「あとさ、これたまに思うんだけどキャット居るじゃん?」
「第3勢力の?」
「うん、あれ村山に似てない?」
「えぇ!?うそ!!笑」
「ムスッとしてる感じとかめっちゃ似てるんだよね」
「悪かったですね、ムスッとしてて😑」
「いや、だから接しやすいんだよ笑」
「そう?」
「うん、楽」
「そっか.....私も」
「ねぇじゃあこのバンド聴いた事ある?」
「バンド系あんまり聴かないんだよね」
それからお互いの好きなアーティストの話をしていた。
「なぎ遅いね」
「たぶんシャワーとか浴びてると思う」
「.....覗いたりしないの?」
「しないよ笑笑」
「な〜んだ」
「僕のことなんだと思ってんの?笑」
「別に?」
「まぁでも行ってみるか」
「はぁい」
なぎの部屋のチャイムを鳴らそうとするとドアが空いた。
「びっくりした!」
「今ちょうどチャイム鳴らそうとしてた」
「行こっか!」
「うん」
「うぃ」
うるさいくらいの蝉の鳴き声がマンションの駐車場にある木から聞こえる。
まるでこの夏を後押しするように。
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