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今は、お客さまの進化の方が速い・・・

今のお客さまの多くは、お店の人たちや作り手たちよりも情報を沢山持っていますよね。

ご自分で積極的に、インターネットや口コミで情報を得て、直接作り手やお店や同じ趣味の友人たちとSNSなどでやりとりし、LINEなどで繋がり、お店にも顔を出し、ご自分が納得出来る、と思うものをチョイスします。

(業界人は、逆に他所のお店に行ったりしにくいので同業他社の現実的なことが分からないことが多いという事情があり、意外に情報に疎い所があります)

だから、そのようなお客さまへの対策としてファッションのハイブランドなどは、SNSの活用をしています。呉服業界でも使っておりますが・・・

なので、そういうお客さまの知的好奇心や感覚的な自由を無視して、お店が自分の商売上の都合で行う、いわゆる「囲い込み」的な行動をちょっとでもすると、お客さまは萎えるようです。(呉服業界では未だに「囲い込み」が盛んです・・・特に、地方都市の呉服店では未だにそれが強い傾向があるようです)

以前は「来店したお客さまが何か買うまで帰らせない」「自分のお店で購入したもの以外のものを身に付けているとお店のスタッフがイヤミを言ったりする」「とにかく他のお店で買い物しないように画策し、お客さまへプレッシャーを与える」方式は有効な場合も多かったようですし、現在も世代が上の方々ではそういうお店を好む場合もありますが、元々そういう「押しが強すぎる接客」が嫌いな人は「だから呉服店は怖い」と呉服屋さんへ行かなくなりますし、若い層ではそういうお店をかなり嫌います。

以前は、呉服の展示会でお客さまが試着して「あら、これ良いわね」と言っただけで買うとは言っていないのに、呉服屋さんが勝手に仕立ててしまい、そのお客さまの次の来店の際に「仕立てておいたよ」としれっとそのお客さまに押し売りしてしまうことも当たり前にありました。今もあるのかも知れません。

呉服販売において、毎月の売上を立てようとする必死の行動が、むしろお客さまを減らし、さらに未来のお客さまを大幅に失なわせていたのです。そのようなお店を許し、そこで買い物をし(娘から観れば)ムダ金を使う母親を、娘はゲンナリしながら観ているわけですから。

そして怖いのは「実際に高額品を購入されている層のお客さまの同士の繋がり」で「どこかのお店での不快な体験」があっと言う間にLINEなどで共有されてしまう事です。それは、SNSや「5ちゃんねる」で表に出て共有されるよりももっと早い段階で具体的に情報共有されます。

恐らく、それは呉服の販売の方でもご存じの方は少ないのでは?と思います。

なぜなら、そのようなお客さまたちは、ネット上でしっぽを掴ませるようなヘマをしませんし、お店での不快な体験の情報を流したり共有したりしてはいても、必要ならそのお店を活用して、いつもと同じようにお店の人間と接するからです。怖いですよ〜。知らぬは業者ばかりなり。(もちろん、私もその業者に入っているわけです)

・・・今は、高級外食でも「お客さまを囲い込まない」ようになって来ていて、言い方は悪いですが・・・提供する側は「お客様のお財布をシェアする」という姿勢になって来ているように思います。

また、お客さまの方も「どこにお金を落とすべきなのか?」を意識されているように思います。

これは、言葉は悪いですが、経済的なことにおいては本質的な言い回しだと思います。もちろん真意は「業界のみんなで良い情報とサービスとモノを、お客さまへ適切に提供出来るようにする姿勢」という意味です。

だから、例えばお客様に「〇〇のワインを知りたい呑みたい」と言われた際に、それについてそれほど自分は得意でないとすると、自分で抱え込んで浅い知識でありきたりのものを提供するのではなく「それは△△さんのお店の□□さんが得意ですよ!連絡先はこちら・・・」とお客様にお伝えしてしまう。自分は得意でなくても、得意な人を知っている、ということ。そういうネットワークを持っていること。それがそのお店の信用になるわけです。

実際、そういう知的レベルのお客様たちは「情報を聞きっぱなし」のような方が少なく、ちゃんと自分に良いことを教えてくれたお店にお礼も兼ねていらっしゃったりすることも多いわけで、結局それが良いサイクルになる。

お店同士も、以前自分が紹介してもらったから、次は自分が紹介しよう、となります。

(もちろん、紹介した、しない、という変な縛りや義理にうるさくはない緩やかなつながり)

もちろん「安売りがお店のカラー」であれば、そういう方法は出来ません。お客様も一番安いところを調べて買い物をするでしょう。

しかし「文化や適切なサービスや情報を売りにしているお店集うお客様の場合は、また違うところもあるんですね。(価格の高低は関係なく文化的であること)

そういうことを最近は実感します。

益々この傾向が強まっていると思います。

エンドユーザの事も、業界の未来も考えず、目先の自分の利益しか考えないような・・・自分だけ儲かろうとしていては、業界全体が沈んでしまう時代に入っているように思います。

自店を守ろうとするあまり、表ではキレイごとを言いつつ、業者同士にも、お客さまにも自己都合を押し付けるようなお店は、お客さまはお見通しのようです。そういう行動に対する不満は、お客さま同士で共有されています。

しかし、呉服の世界は逆のことばかりやっている気がします。

それは漁業で、枯渇寸前の魚種を、資源回復も考えず目先の利益のために取り尽くしただけなのに、最近魚が取れないのは〇〇のせいだ!と的外れな批判をして悪びれないのと同じようなものです。

そういう非文化的なことではいけない、改善しよう、というのは同業者同士ではなかなか出来ないので、それを阻止するのはやっぱりエンドユーザーの声、とも言えます。

エンドユーザーが「そんな意識が低いヤツらの作る、販売するものは買わない!」という流れになれば「非文化的に一人勝ちをしようとするところは淘汰される」わけです。

なので、やっぱり私がいつも強く言っている「文化は作り手、売り手だけでなく、お客さまも同じぐらいの比重で作っているのだ」という事を確認します。


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