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卒業式で泣いたあの日は間違ってなかった。

「卒業式で泣いてるやつの気が知れない」

たかが式典。たかが通過儀礼。校長先生が定型分のような挨拶をして、卒業生は順番に卒業証書を受け取る。校歌を歌う。

新たな門出を祝う空気と、これまでの学校生活を省みる言葉に溢れた、まだ少し肌寒い体育館。

たしかにただの儀式でしかない。作られた空間でしかない。

それでも私は泣いていた。

悲しいわけじゃない。悔しいわけじゃない。嬉しいわけでもない。寂しさともちょっと違う。

胸がいっぱいになるのだ。

ここで過ごした月日を思い、友人との出会いや別れを思い、経験した楽しかったことや辛かったことを思い、これから先の人生を思い、私は泣いた。

胸にこみ上げるたくさんの思いが、涙腺をぐぐぐと押してくる。

ドキドキしながら過ごした入学後の一週間のこと。なんとなくお昼ご飯を一緒に食べるようになったこと。距離が近づいたときに感情をぶつけてケンカして落ち込んだこと。仲直りして一緒に部活に行ったこと。そんな友達に「また明日ね」と笑って手を振る日々がもう来ないこと…

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