顔を上げれば涙はこぼれないんだって

空を見上げると、やけに星がまぶしい。真っ黒な夜空に、オリオン座が大きく手足を広げて輝く。

頬も耳も痛い。そう感じるくらい、キンとよく冷えた日。空気が澄んでいるとこんなにも星が見えるのか、と少しだけ驚く。

「あぁ、上手くいかないなぁ。上手くいかない。なんでかなぁ」

誰もいない夜の駐車場に、私の声だけが響く。誰かに届けたいわけじゃない。心の中に収まりきれなかった思いが、声になって漏れた。

どうにも上手くいかない。悔しい。なんで私はこんなに下手くそで何もできないんだろう。

何もできていないことなんてない、と頭ではわかっている。それでも、えもいわれぬ無力感に襲われる。

ふいに涙が溢れる。目頭にたまったそれを流さないよう、ぐっと顔を上げる。さっきまでくっきりと見えていた星が、涙でぼやける。

なぜだろう。こんなときなのに、ぼやけてキラキラと光を放つ星の美しさに見惚れてしまう。

　＊　＊　＊

自分で選んだ道だった。誰に頼まれたわけでも、そそのかされて踏み外したわけでもない。

考えに考え抜いた結果、この場所に来ることを選んだ。「好きなことをして生きる」と決めたのは、ほかでもない私自身だ。

それでも、上手くいかないことは多かった。