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記憶の片隅に残る、雛人形の姿とあの日のこと

ひな祭りを祝っていた記憶がほとんどない。ただ、雛人形が飾ってあったことは覚えている。

実際にお祝いしていなかったのか、記憶が風化してしまったのか、はたまた記憶から消してしまったのか…今となってはわからないけれど、とにかくひな祭りに対して何も思い入れがないのだ。

そんな私が再びひな祭りを意識したのは、社会人になって随分経ったあとだった。当時住んでいた愛知県で「中馬のおひなさん」という祭りが開かれていたのだ。

古い街並みが残された地区で2月初旬から3月初旬にかけて開催される「中馬のおひなさん」は、いろんな雛人形や雛飾りが家々に展示されている。それを見て回って楽しむ、というものだ。

私はそこに行って、餅花(もちばな)と呼ばれる愛らしい雛飾りを見たり、雛人形の写真を撮ったりして回った。

とっくにひな祭りをお祝いする歳ではなくなっていた。雛人形が特別好きなわけでもない。その地区に住んでいたわけでも、思い入れがあるわけでもない。

それなのにお祭りに行った理由は、当時付き合っていた人に誘われたから。それに尽きる。

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