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ティーンだった頃の

久しぶりの友人から連絡がきた「この曲、クラシックなんだけど、なんだかわかる?思い出せなくて。」という鼻歌つきの音声メッセージとともに。随分むかしに、確か高校生くらいの頃にわたしたちはとても仲良くなった。
それはわたしが人生の中でいちばん音楽と遠い場所にいた頃。いろいろなことが重なり、何よりの大好きだったものを全部手放した。大好きだった練習もしなくなりレッスンも怖くなって、先生の家に向かう途中で泣きながら走って帰ってしまったこともある。ほんとうにいつも、ナーバスな表情をしていたと思う。
だからあの頃に出会った友人たちは、音楽をしているわたしを知らなかった。まるで別人になったかのように、いままで知らなかった世界に踏み込んだ。きっとそのまま音楽だけをやっていたら気づけなかったいろいろな感情を知った、恋人もつくった。おしゃれをすることがすきになり、いろんなところへ出かけるようになった。だけどどこかすっぽり、何かを失くしてしまった気持ちになった。10代の頃の、あの、空虚感。懐かしいなあ。
それからやっぱりわたしに必要なのは音楽だ、ということに気がついた。
これは貴重な体験をした、ティーンのお話。だからあの頃に出会った人たちはいまでもほんとうに大切で、いつでもわたしのほかの側面を思い出させてくれる。そこにはいまでは信じられないような、きらきらとした、音楽から解放された、わたしがいる。じっさいはあの頃のおかげで、わたしはいま、音楽と素晴らしい関係をもてるようになった。

ところで、友人が探していた音楽というのは、バーンスタインでした。
今年は彼の没後30年。彼が生きていた頃から、果たしてクラシック音楽はどのくらい変化をしたのだろうか?

何よりも素晴らしいのは音楽が伝えることのできる感情の種類は無限だということである。言葉で表現できない深い感情までも。音楽は明確に示してくれる。
ーーレナード・バーンスタイン

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