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#74 緊急時の経営戦略

~三界はただ心ひとつなり,心もし安からずば,像馬七珍もよしなく,宮殿そ楼閣ものぞみなし (方丈記 第34段)~

コロナ禍で産業界を取り巻く環境は激変しています。企業規模が大きくなればある程度の体力があり,この環境変化を耐え凌ぐこともできるでしょうし,また中小零細企業であれば,身軽に事業転換することもできるでしょう。それに対して一番苦労しているのは,中小中堅企業です。中小中堅企業はある程度の規模があり,身軽に変化もできなければ,かといって余剰経営資源も多くない,という状態なのだと思います。業種業態にもよりますが,年商レベルで10億から300億程度の中堅企業が,当てはまるのではないでしょうか。

筆者は,緊急時における経営戦略の巧手を,次のステップとしています。

①リストラクチャリング:止血する,不採算部門からの撤退,コスト削減,ダウンサイジング
②新市場開拓:既存ビジネスの他市場への拡販,チャネル開拓,他チャネルを通じた販売
③ビジネスモデルの変革:既存ビジネスのブラッシュアップ,修正,転用,転換,変更など
④新規事業開発:新たな製品,商品,サービスの開発,R&D,イノベーションの推進

経営に正解はありませんが,定石はあります。人間の身体に喩えるならば,まずは体力を温存する,投薬等で恢復させるように試みる,それでもだめなら手術をする,というのが定石なのだと思います。

筆者のクライアントである飲食業務用の売上比率が多い食品製造業は,2020年4月の段階で赤字体質だったパイロット・ショップ(レストラン)を閉鎖し,年商レベルは2/3程度に下がることになりました(ダウンサイジング)。その中で,助成金や緊急融資を活用し,工場操業を維持し販路開拓を続け(新市場開拓),2021年2月の業界展示会で新商品を数種発表することができました(新商品開発)。現段階では,自社ECサイトの充実などB to C需要の取り込みに経営の舵を取り,事業継続の光が見えてきています(イノベーションの推進)

とはいうものの,筆者のクライアントの全てが上記のようなステップを踏めたかというとそういうものでもなく,ダウンサイジングをしないでコロナの荒波をしのごうとして苦労している企業や,ブランドイメージの棄損を恐れて販路開拓や商品開発に踏み切れない企業もあります。

経営は意思であり,逆張りもあるし,回り道もあるでしょう。また,嵐が過ぎ去るのを待つ,という戦略もあるとは思います。しかしそれが「座して死を待つ」ということになるのであれば,「経営は意思である」という「意思」はどこにあるのか,という誹りをまぬがれることはできません。結果的に現実が好転するかどうかは経営者本人の心ひとつ,天地神明,その時に最善を尽くしたと思えるかどうか,最良の決断をしたと思えるかどうか,にかかっているということなのではないでしょうか。

〔こありん先生チャンネル〕YouTube配信しています@(・●・)@

#経営 #コンサルタント #経営戦略 #ダウンサイジング #リストラクチャリング #アフターコロナ

正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html