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#59 消費は「倫理と共感」へ

~他人の灯火を自分の灯火によって明るくしても,自分の灯火がその分暗くなったりはしない~(キケロ「義務について」)

マーケティングは,消費者購買行動として人間の心理に着目してきました。マーケティングで頻出するニーズというワードは,何らかの欠乏状態を充足させようとする消費者の心理を表します。1970年代,日本の高度成長期にマーケティング思考は多くの企業で取り入れられ,企業側からのプロダクトアウト目線ではなく,顧客のニーズを探るというマーケットインの考え方が広まっていきました。

テレビなどのマス・メディアによって消費者の購買意欲を喚起するマス・マーケティングの時代を経て,消費者ニーズが多様化している現代となり,消費者へ個別具体的なアプローチをすることが必要になってきました。すなわち,AISASDECAX(Discovery(発見)⇒ Engage(関係)⇒ Check(確認)⇒ Action(購買)⇒ eXperience(体験と共有))というような購買行動モデルが提起されています。

ところで現代は,ある程度のモノで満たされている時代であり,生きるために特別なモノが必要ということもなく,また自分が幸福になるために特に何が必要なのかもはっきりしません。何かしら漠然とした将来への不安感や空虚感があり,それをどうすれば解消(ニーズ)できるのか,何か具体的に必要なのか(ウォンツ)はよく分かっていません。ですから現代は,消費者のニーズを探るということがとても難しくなってきている,ということができるでしょう。

一方,自分自身はある程度充足されている状態であるとしても,いずこかの他者が何らかの欠乏状態にあることを知ることはできます。そして,欠乏している他者への配慮を示す行動を選択することもできます。そのような配慮から起こす消費行動,あるいは社会的な問題を解決するために起こす消費行動が,エシカルな消費行動ということになります。つまりエシカルな消費行動のベースには,他者への配慮や共感があるのです。

筆者の私見ですが,これからの消費のキーワードは「倫理と共感」だと思います。他者とのつながりを感じる,モノやサービスのコンテクスト=文脈にそういった共感を覚えるということが,消費の選考基準になってくるでしょう。つまり販売側はモノやサービスのコンセプトやストーリーを明確にして消費者に情報提供する,そしてそれらが消費者に能動的に選択される,というのがスタンダードになってくるのではないかと思います。

他者への配慮や他者との共感やつながりといったエシカルな指向性を持った,成熟した人間性を備えた消費者像がイメージできます。消費者が能動的にエシカルな消費行動をとることで,なぜかしら空虚感が充足されより自分の幸福感が増す,ということが起こるでしょう。全ての消費者がすぐにそうなるということではないですが,そういう消費者が増えることでいつかは成熟した人間性による社会が実現することを,筆者は冀っています。

〔こありん先生チャンネル〕YouTube配信しています@(・●・)@

#経営 #コンサルタント #エシカル消費 #消費購買行動 #SDGs

正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html