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大切なものは変わる。

僕はLGBT。女から男に性別を変えて生きている鈴木優希 1980年生まれの42歳。仕事は同じFTMの子を主に雇用したBARを地元名古屋で2軒経営している。

僕の願いは、
昔は男になること。
その次は、彼女を作ること。
そこからは、長い間恋愛が全てだった。
小、中、高校で出来なかった「青春」を取り戻すべく、

男として遊びたい!モテたい!


23歳くらいの時、やっと家族に「性同一性障害であること」をカミングアウトしたことで、一気にタガが外れた僕は欲望のままに乱れた時期を長く過ごした。

自分さえ良ければいい。

相手の気持ちも無視した自分勝手の恋愛を繰り返したが、

30歳になる頃、「この子と結婚したい!」と思う彼女と一緒にいた。

当時、既に戸籍を変えていた僕。
憧れだった「普通の結婚が」したい。家庭を持つことへの強い憧れがあった。

そんな願いもあり、32歳の時、彼女と結婚。
入籍をして、派手に結婚式を挙げることもできた。

幸せの絶頂だった。

男としてやりたいことは全てやった気でいた。

しかし、そこからは「現実」が待っていた。
仕事、子供、生活。

仕事は水商売。
毎日、飲んで吐いての繰り返しで目が覚めれば二日酔いの日々。奥さんも僕の店を手伝ってくれていたので2人でそんな暮らしをしていた。

子供は、お互いに欲しい気持ちはあったが、自然には出来ないがゆえ、覚悟を持ってそこに進む自信が僕には無かった。

ままごとではいかない「命の責任」が、こんな僕にでもなんとなくわかっていた。

新婚生活は楽しかったが、そのうち馴れ合いの生活に刺激がなくなり、僕の浮気の虫がでた。

こんな僕と結婚してくれた彼女を捨てて、次の恋に進んだ。

そこからは、紆余曲折。

バチが当たるとはこういうことなのか。

そう実感するように、いろんなことがあった。
人を泣かせて自分だけ幸せにはなれないことを学んだ。

それでも僕が恵まれていたのは、助けてくれる人がいたことだ。

ダメになりそうな時、誰かがそばにいてくれた。

そのおかげで今も僕はここにいることが出来ている。

大切なものは、変わる。


先日、大好きなおばあちゃんが救急車で運ばれた。

あんなに苦しい人間の姿を見たのは初めてだった。

母が倒れてから、僕はずっとおばあちゃんに母を求め、家族を求め、依存している。

98歳のおばあちゃんが苦しくてもう死にたいと訴えていても、「いやだ!そばにいて」と被せてしまう42歳にもなった僕。

子供みたいに、ただ泣くことしかできなかった自分。

ふと考えた。

大切な人が、もしかしたら明後日には骨になっている現実があるんだということを。

おばあちゃんに限らず、誰にでも。

目まぐるしく過ぎていく毎日にそんな当たり前のことを忘れてしまう。

喉元過ぎれば...で忘れてしまう。

でも絶対に忘れてはいけない。
自分のために。忘れちゃいけない。

大事なものは変わる。

当時も、もちろん全て真剣な悩みだったが、今となっては性別のことや恋愛で悩んでいたことが懐かしく思う。
越えてきたからそう思うのかもしれないけど今は、性別の問題も恋愛のごたごたもそんなことになった。

それよりも大切なこと。

25年越しの懺悔。

性別違和を一人で抱えきれなくて荒れていた頃のある日。

おばあちゃんが僕に1000円をくれたことがあった。
その1000円を「こんな端た金いるか!」と叩きつけた。

おばあちゃんはこの時のことを今でもショックだったと覚えていて僕に何回も話す。

僕は忘れてしまってたのに。

そんな25年も前のことを病院から戻ってきてくれた昨日僕はおばあちゃんに謝った。

今までは謝るのが照れくさいとか思っていたけど、言葉にして伝えないと...。

伝えたい!!と思った。

救急車で運ばれて、いつも寝ていたベットにおばあちゃんが居ないこと。
いつも居た場所にその人が居ないだけで、見るもの全てが悲しく思えて涙が出た。

どうか親孝行はお早めに。
おばあちゃん孝行も、彼女孝行も、友達孝行も。

後悔した時の悲しさは自分を苦しめ続ける。

後回しにせず、照れずに、正直に。

大切なものは「今」大切にしていく。
そう強く思っている。


2022.7.19(火)LGBT社会人交流会「BRUSH UP」第10回無事終了。沢山のご参加ありがとうございました!

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鈴木優希のセミナー活動関連のお知らせ、性同一性障害のお子様を持つ親御さんへのメッセージなどLGBTについてのコンテンツを掲載しているオフィシャルサイトもご覧いただけたら嬉しいです。そしてコメントもお気軽にお待ちしています。










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