コラム

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【コラム】 『モモ』に寄せて

『モモ』を読み終えて思い出したのは、アメリカのフランク・キャプラという映画監督のことです。共通するのは、理想主義が過ぎるとも言える過剰なヒューマニズム…と書くと、批判・否定しているように見えるかもしれませんが、そうではありません。なんというか、地獄を見てきた者しか持ちえない「祈り」のようなものが作品に込められていて、脆弱なセンチメンタリズムは排除されています。寓話的な、一見軽い物語なのに、受け手は

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【コラム】 『対訳 ディキンソン詩集 アメリカ詩人選 (3) 』に寄せて

人間にとって「制約」というものは必要不可欠だと思う。こんなにも「自由」が良いこととされ「自己実現」が奨励されだしたのはここ数十年のことで、それ以前は何かしらの制約が人間にはつきまとっていて、それが自然だった(だから制約をそれと意識することも少なかったはずだ)。

ディキンソンは、生前、わずか十編の詩を発表しただけで、無名のまま生涯を終えたという。そこには現代社会において是とされるような「自由」も「

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【コラム】 『はじまりの日』に寄せて

昨今「大人のための絵本」などとよく耳にする。その類の本を開いてみると、大体が安直な癒しや何となく深イイだけの、いわば「大人のマスターベーション」なことが多い。

絵本は本来「君がいま生きている世界はこんなにも豊かなんだよ」ということを、大人の理屈によってではなく、子どもの感覚に寄り添い、また自分の中の子どものように自由な感覚と対話しながら、大人が子どもに責任持って手渡していくものだ。大人が大人のた

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【お知らせ・コラム】西日本新聞 随筆喫茶

数日経ちましたが、ご報告です。

3/29の西日本新聞 朝刊「随筆喫茶」に原稿を書かせていただきました。とても良い経験をさせてもらいました。

【コラム】さよなら、『さよならテレビ』

森達也監督『FAKE』という作品がある。ゴーストライター問題で世間を騒がせた作曲家・佐村河内守氏のその後を撮影した作品で、観ていく内に、いかにマスメディアが実質以上に佐村河内氏を悪く報道し、彼を告発した新垣氏を善玉として〜挙句は使い勝手のよいタレントとして取り上げたかが見えてくる作りになっていた。そんな、この映画が写す事象すら「FAKE(偽物)」かもしれないよ…と匂わせて本編は終わるのだが、世の中

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【コラム】 2019 映画ベスト3

作品賞
1位 劇場版シティーハンター〈新宿プライベート・アイズ〉
2位 男はつらいよ お帰り 寅さん

監督賞
山田洋次 男はつらいよ お帰り 寅さん

主演男優賞
1位 山崎努 長いお別れ
2位 渥美清 男はつらいよ お帰り 寅さん
3位 池松壮亮 宮本から君へ

助演男優賞
1位 宝田明 ダンスウィズミー
2位 吉岡秀隆 男はつらいよ お帰り 寅さん
3位 安藤政信 デイアンドナイト

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【コラム】沖田総司は、Bカップ。

お題をいただいて、考え込んでしまった。俺って女優で映画を観てねえんだな、と思った。作品単位でなら浮かぶのだ。『西鶴一代女』の田中絹代『乱れる』の高峰秀子『乱れ雲』の司葉子『神々の深き欲望』の沖山秀子『犬神家の一族』の高峰三枝子『隠し砦の三悪人』の上原美佐…。

あ、一人いた。映画を観て、初めて恋をした女優。親にかくれ布団の中でセンズリこいた女優。それは、つかこうへい原作の『幕末純情伝』という作品で

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【コラム】多度へのラブレター

まちづくりには二種類あると思っている。
一つは、観光客数、来場者数、移住者数、売り上げといった「数」を求めるまちづくり。
もう一つは、その町を大切に思う人がそれぞれ町のためにやれることを考え、実行する、数値化できないまちづくりだ。

バブル崩壊から時が経ち、インターネットが発達し、人々とその暮らしからますます行間(余裕)が無くなりつつあるように見える。そんな中、結果の見えやすい数を求めるまちづくり

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【コラム】 『神々の深き欲望』の欲望

昨今、廉価で映画DVDが買えたり、WEB配信がされていたりし、ビジネスとして「映画をどう見せていくか」に多角的に取り組むことはもちろん必要だが、それでもやはり映画は「体験」の中にこそあると信じている。

 人生のある一日、ふらり映画館へ。入場料を払い、暗闇の中で2~3時間スクリーンと向き合う。やがて客電がつくと、観客ひとりひとりの中で、ささやかだけど確実に何かが変わっている。安価でDVDが手に入っ

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【コラム】カントク伊藤の巨匠への道。 道の九

冷泉荘内のシェアオフィス・引力の間に入居中のカントク伊藤です。新作映画「人情噺の福団治」鋭意編集中(来年全国公開予定)。凄い作品になりそうです、いやマジで。さあ今月のDVDはコチラ!

まちや紳士録 / 発売:株式会社グループ現代 販売:株式会社紀伊國屋書店

さて、今回で最終回。僕が福岡にたどり着いた経緯はなかなか複雑で。三重県桑名市の出身で、大学進学で東京へ(29歳まで、約11年間東京

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