見出し画像

ファシリテーションにおける「誘導」と「提案」の違い

ワークショップデザインやファシリテーションの講座をしていると、初心者の方によくいただく相談に「ここまでプログラムを作り込むと、誘導になってしまうのではないか」「参加者をファシリテーションによって誘導していないか不安なのですが..」というお悩みがあります。

今回の記事では、ワークショップデザインにおいて気をつけなければいけない「誘導」とは何か。建設的な「提案」と何が違うのか、ということについてまとめておきたいと思います。

前提:ファシリテーションにおける性善説と性悪説

3月に入ってから、組織イノベーションに関するアイデアメモを共有する「idearium(アイデアリウム)」というブログメディアをリリースしました。ミミクリデザインと資本業務提携を結んだDONGURIのCEOであるミナベトモミ氏と共同運営している個人ブログです。

先週の「idearium」では、組織をマネジメント・ファシリテートする側は、性善説に立つべきなのか?性悪説に立つべきなのか?という共通の問いを立て、ミナベ氏は組織デザインの観点から、安斎は組織開発の観点から、それぞれ意見を述べ、反響を呼びました。

共通している点として、性悪説といっても「従業員はどうせ学習しないので、強制的に働かせよ」と考えるものではなく、性善説にせよ、性悪説にせよ「人の可能性を信じる」ことを前提としている点。そして、すべてを性善説でやりましょう!ということではなく、性悪説で締めるべきポイントを作るべきだ、というのが両者の意見の共通点でした。

ideariumでは、毎週このように記事を配信しながら、週末にお酒を飲みながら、それぞれの記事を振り返り、ポッドキャストを収録・後日配信しています。(ちなみにWDAの会員の皆様には、裏話も含めた公開生収録を映像配信していく予定です!)

画像1

上記の記事に関するポッドキャストは以下から聴いてみてください。アプリをダウンロードすると、作業中や移動中にも聞きやすいです。

ファシリテーションにおける「誘導」と「提案」の違い

さて、話は戻り、本題です。上記のポッドキャストの27分〜くらいのところを聴いていただくと、ワークショップデザインの性悪説の話の流れで、冒頭で述べた「ここまでプログラムを作り込むと、誘導になってしまうのではないか」問題について、議論が及んでいます。

ワークショップは当日のファシリテーション任せでなく、事前の戦略的なプログラムデザインが重要であることはわかった。けれどもプログラムを性悪説で作り込めば作り込むほど、参加者を「誘導」するような設計になってしまうのではないか?それでいいのか?という懸念があるというのです。

それに対する私の考えは、ファシリテーションにおける「誘導」と「提案」は異なる、という以下のような整理が重要だと考えています。

ファシリテーションにおける「誘導」
あらかじめ「結論」を準備しておき、参加者にさまざまな問いかけや介入をすることによって、予定調和的に「結論」に到達させること。

ファシリテーションにおける「提案」
ファシリテーターにとっても「答えがわからない問題」に対して、最も効果的だと考えられる「時間の使い方」や「考える切り口」を提案すること。

もしプログラムを作り込む過程で、ファシリテーターが無意識に「オチ」を用意していて、そこに参加者を誘導するかのようにプログラムを設計してしまっている場合。それはもはや「人の可能を信じる」という前提が崩壊しているため、性悪説ですらありません。ファシリテーションに見せかけたマインドコントロール、ワークショップに見せかけたアリバイ工作です。

ワークショップは、本質的に関わるすべての人にとって学びと創発の場であるべきです。ワークショップを適切に活用できているファシリテーターであれば、そもそも設定した課題(問い)は、参加者はおろか、ファシリテーター自身も答えがわからないものが設定されているはずです。良い問いがデザインされていれば、そもそもワークショップを開始する時点では誰にも結論としての「到達点」は見えていないはずなので、「誘導」ということは原理的に起こらないはずなのです。

ideariumのポッドキャストでもお話していますが、だからといって「ファシリテーターにとっても答えがわからないので、みんなで自由に考えよう」というのは、ワークショップデザイナーとしての責務を放棄しています。答えがわからないなりに、「こういう風に考えれば、みんなで答えにたどりつけるのではないか?」というプロセスを考え抜き、参加者に提案し、合意を得ること。これが提案を軸としたファシリテーターの仕事なのです。

---
そんな切り口でミナベ&安斎で議論を深めておりますので、是非お時間あるときに記事とセットで「idearium cast」を聴いてみてください!

---
ワークショップデザインやファシリテーションについてもっと学びたいという方は、オンラインの学習環境が充実している「WORKSHOP DESIGN ACADEMIA(WDA)」に是非この機会にご入会ください!月額2980円でワークショップデザイン、ファシリテーション、イノベーション、組織開発の最新知見がオンラインで学び放題です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?