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編集後記/アランニット制作日記 4月

10ヶ月にわたって、制作の日々をことばに残してゆく「アランニット制作日記」の連載がついに先日完結しました。

せっかくなので、わたくしデザイナー藤澤のことばで編集後記をすこしだけ…。

制作日記の中心となっているこのアランニットは、かれこれ8年続いてるYUKI FUJISAWAの中でも代表作といえるシリーズです。

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ニットをずっと染めていただいている染工場さんを訪問した、8月の日記。

活動を振り返っていつも思うのは、わたし自身は裏方で、そこにあるモノを繋いでゆくことが主役。自分のことばやプライベートはこれまであまり表に出さないようにしていました。

だけど歳を重ねてゆく中で、自分のきもちにも少しずつ変化があり、人生と制作を切り離すことなく、もっと自由でいいのでは?と。

なによりこの制作日記を書いてくださった橋本倫史さんというライターさんとの出会いを契機に、制作を記録する連載がはじまりました。

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3月の日記に記されていた、沖縄での撮影。その翌日に青柳いづみちゃん、初対面の橋本さんと3人でドライブ。距離が近づいたきっかけでした。

ありがたいことにサステイナブルやエシカルの風潮が追いついてきました。以前からこうした活動を続けている身として「どうして古着なのか?」と、いまの時代と結びついて興味をもっていただく機会もすごく増えました。

ほんとうに正直にいうと、最初はただ目の前にあるヴィンテージへの興味がはじまりで、当初から拠り所があったわけではないのです。

自分にとってものづくりの過程に違和感がなく、そして関わってくださる周りの人達にとっても心地よく、と考えていく中でいまのかたちにたどり着きました。

だけどインタビューなどでは自分が思うよりもかっこよく脚色していただけたり…。自分もつい、相手が求めてるこたえを口にしてしまいたくなります。

ですが、この日記を書いてくださった橋本さんは、そこにある日々や思いそのままに、刻々と記録してゆく。相手からのことばが発せられるまでじっと静かに待つ。
それって簡単におもえて、すごく難しいことだと思うんです。

他人に対して、こうあってほしいという期待を手放す勇気がある方です。

そしてなにより、足を運ぶことを少しもいとわないフットワークの軽さ!何度もアトリエや自宅までいらして時間をかけてくださるその真摯な姿勢に、わたし自身も人と向き合う時はこうでありたいなと思うばかりでした。

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わが家でお洗濯のことを取材してもらったり。2月の日記。

2019年から2020年にかけての制作の日々、いい日も、悪い日のことも。きっと何年たっても、振り返るたびに勇気をもらえるんだと思います。

アランニット制作日記を読んでくださったみなさま、本当にありがとうございました!

橋本さんにご興味を持ってくださった方は、橋本さんの著本、「ドライブイン探訪(筑摩書房)」「市場界隈 那覇市第一牧志市場界隈の人々」もぜひ読んでほしいです。

全国各地にあるドライブイン、そして沖縄の市場。その場所とそこにまつわる人たちの人生が共に語られているルポルタージュです。
タイムカプセルのように丁寧に収められた言葉たちが、またこの先の誰かへ届くようにと、心からの思いが込められた素晴らしい本たちです。

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10月の制作日記、カネコアヤノちゃんと木村和平さんとの撮影、のようすを撮影する、橋本さんのうしろ姿。ありがとうございました!

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