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平成に実らなかった、すべての恋に花束を

なくなった瞬間寂しくなるのは、人の性だろうか。

いつもそうだ、二度と戻ってこないのだと思わされると、「もっと出来ることはあっただろうか」と後ろを振り返ってしまう。

失恋した。
31年続いた平成のあいだに幾度となく恋をして、そして失った。

心のまんなかに宿った新芽みたいな喜びを抱きしめ、友達ときゃあきゃあ想いを募らせ、ようやく蕾になったころ、泣きながらもう一度土の中に押し込めたりした。「なかったことにする恋」の痛みは、そう簡単に消えるものではない。

実ることのできなかった恋は苦しい、でも、実ったのちに、うまく愛せなかった恋愛ほど過酷なものはない。

恋愛をとおして、もっとも人が成長をするのは
付き合っているときよりも、「別れたあとの時間」だ。

胸が引き裂かれそうになる痛みを、布団のなかでひとり抱えて過ごした夜
世の中に数え切れないほどいる失恋経験者は、みんなこんな苦しみを乗り越えて今を笑顔で過ごしているのかと思うと、すべての強者に敬礼したくなる。

いつも買ってくれていたミルクティーをコンビニで見かけて、目をそらして、買えなくなる
ふたりでライブに行ったアーティストの曲を、聞けなくなる
よく待ち合わせに使っていた駅を、避けて帰るのが日常になる
同じ香水をつける人とすれ違うたび、無意識に振り向いてしまう

何度も何度もそんなことが繰り返される。
ただ甘いだけだった、嬉しいだけだった、幸せなだけだったふたりの想い出が、ひとつずつ刃に変わっていく瞬間を、共有してくれる人など世界のどこにもいない。

たったひとりで、その痛みと立ち向かいつづけなくてはいけないのだ。

「できなくなっていく」ものがひとつずつ増えていくたびに、何度だって思い出す声や温もりを、掻き消していくのがこれほど辛いなら、あんなに愛して欲しくなかった。あんなに愛したくなかった。

たまらなく切なくて、思わず優しさに期待をして、「まだ気持ちはあるんじゃないか」と自惚れて、LINEを送ってしまいそうになる。

そんなときでも、耐えなければいけないのだ。
元彼という引力に、負けてはいけない。

勝ち続けなければいけないと思うのは、「一番ツラい選択」をしなければ、ふたりで大事にしてきた時間を、愛情を、ひとつ残らず「成長」に変えられないと思うからだ。

結ばれなかったとしても、それでもめいっぱい愛を育んできた時間は、別れた後でも大事にすることはできるよ。
「別れた後の時間」は、ものすごく尊い。

どうせ、忘れてしまうから。どんなに辛くて苦しくても、時間はたしかに治癒力をもっていて、傷口を癒してくれる。
苦しみを抱きしめて、愛を問いつづけられるのは、人生のなかでほんのわずかな時間しかない。

答えのない正解を考えつづける日々の成長スピードと、学びの深さは桁違い。エゴではない「優しさ」と「愛情」を知っている人になる。

恋愛なんて、人生でたった一度だけ、結婚相手とだけうまくいけばいいのだ。

平成に実らなかったすべての恋は、令和で結ばれるために。
すべての失恋経験者に敬礼を。そして、涙と恋心に花束を。

top photo by nanono1282




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