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8月5日〜7日開催!京都国際子ども映画祭

「人を好きになることの正解って何ですか」——。
子どもたちから飛んでくる質問に、大人は簡単に答えられない。

 NPO法人キンダーフィルムフェスト・きょうとが主催する京都国際子ども映画祭。第28回目を迎える今年は8月5日(金)∼8月7日(日)の3日間、京都文化博物館で開催される。ゲストの監督や出演者へインタビューするのは「子どもスタッフ」と呼ばれる子どもたちだ。海外からゲストが来た際には、もちろん英語で行う。彼らによる冒頭のような変化球が、見どころの一つだ。

  キンダーフィルムフェスト・きょうとでは、関西を中心に子どものための映画祭や映画吹替などのワークショップを行っている。30年近く続いているこの活動だが、もとはと言えば学芸員だった初代理事長が始めたライフワークだったという。子どもたちに、良い映画に触れてほしいという思いがあったのだとか。現在は10人ほどのボランティアスタッフが運営しているが、その中心にいるのは、小学1年生~高校3年生までの子どもスタッフだ。数年前まで5人だった子どもスタッフも、子どもたちが直接関わることができるよう活動の幅を広げたことで、30人にまで増えた。映画祭では司会進行、場内案内、審査員などをすべて彼らが行う。映画祭に向けて毎月開かれる子どもスタッフ会議大人はほとんど口出ししない。まさに、子どもによる子どものための映画祭だ。

 理事メンバーである藤原杏奈さんと田勢奈央さんに、その魅力を聞いた。

取材に協力してくれた藤原杏奈さん(右)、田勢奈央さん(左)

多国籍な映画との出会い

田勢さん「同じ映画というものを共有していてもほんとに多角的な見方があるっていうことを感じてほしいかな」

 京都国際子ども映画祭では、イスラエル、スウェーデン、スペインなど、世界各国から集まった作品が上映される。テーマもLGBTQや世界情勢など様々。子どもたちが普段あまり触れたことのないような作品が多い。

藤原さん「映画もフィクションだったりドキュメンタリーだったり様々です。それが本当に正しい情報かは観ただけじゃ分からないと思います。それを観てから調べたりして、学んでいく力をつけてほしいんです。そういう学びのきっかけとして映画はすごくいい」
田勢さん「上映された映画の感想を言い合う場を設けているんですけど、人によって同じ作品でも見方や感じ方が違う。一つのメディアを捉えたときに、それが事実なのかどうか、誰かにとっては現実だけど、誰かにとっては現実じゃないのか。ちょっと角度が違うだけでそのもの自体が違うっていうことを分かってくるようになるんじゃないかな」

【上映予定作品の一部】

『ヒマラヤの通学路』(インド)

『アイヌモシリ』(日本・アメリカ・中国合作)

大人の先入観は外れる

田勢さん「これぐらいのことは、このぐらいの年齢じゃないとできないって大人は考えるじゃないですか。だけど、それってだいたい外れるんですよ。この子出来ないよねって思っていた子たちが意外にできたりするから、やりたいって手を挙げた子が小学2年生の子でも、頑張ってって」
藤原さん「これやりたいって言ってることには私たちも後押しするから、自分のやりたいことがある子にとってはいい活動なのかな」

 映画祭で上映される海外作品のほとんどは、当日、子どもたちが「生」で吹き替えをする。練習期間は3か月。練習やリハーサルで声が出なかった子が本番では抜群の演技を見せる。

田勢さん「生吹替に参加した女の子の一人は家族以外の前では大笑いもしない子で、練習の間は声がほとんど出ないから心配してたけど、ふたを開けたらものすごい上手だった。その辺は私たちも読めない」

海外作品は子どもスタッフによる生吹替で上映

 2019年には、子どもスタッフが『ぼくらのミライ映画館』という15分ほどの短編映画を作り上げた。

監督を務めたのは当時小学4年生だった男の子だ。テレビ局でディレクターの経験がある田勢さんは、子どもたちにしか撮れない映像の力を感じたという。

田勢さん「黒の背景に字幕もなくナレーションが吹き込まれている場面がいくつかあって、民法のテレビの世界では絶対にやらないことなんです。でも、常識的にそれはしないよねってルールがあっても、子どもたちにとっては全く関係ないことなので。大人は起承転結を考えるけど、子どもはそうじゃない。撮ってる映像一つに意味がなくてもなんかキラキラしてたりするんですよ。子どもたちだからこそ撮れるものを作ってほしい」

成果と楽しさ、どっちが大事?

 一度参加すると辞めていく子どもスタッフは少ない。

「司会が上手くできなかったので来年はもっと頑張りたい」
「今年は受付しかできなかったけど、来年は場内案内をしたい」
「場内整理が上手くできなかったので来年はもっとしっかりやりたい」

 それぞれが自らの役割を見つけ、来年はもっとこうなりたいという目標を自然と口にするのだという。

田勢さん「保護者の方としゃべる機会もあるんですが、今の時代、子どもを習い事や部活に行かせると、だいたいここまでできましたって成果を見せられることが多いみたいです。でも、キンダーはプロセスを大事にしてくれるからいいって言ってくれるんです。人間って成果を求められたらプレッシャーを感じるし、どこかの時点で楽しいだけじゃなくなる。仕事をしていくうえではそれも大事なんですけど、今は楽しいことの方が大事だから」

「参加したらこんなことができるようになる」と謳わないことが、子どもたちの純粋な楽しいを引き出しているようだ。
 
 コロナ禍で制限されてきた活動も、少しずつ以前の形を取り戻し始めた。今年は3年ぶりに、子どもたちの夏休みに合わせてリアルで開催される。今年も子どもスタッフの活躍に期待大だ。

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