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公衆トイレは偉大なターミナルだ

夏の夜の田舎の道の駅の公衆トイレはなぜにこんなに落ちつくんだろう。
王国のように思える。
建物のそばには木が植えられていて、
その足下には整えられたミニチュアの草原みたいな瑞々しい雑草の森。
車や人がほどほどに行き交い、ベンチには宿なしの旅行者が寝処をつくっていたりする。

建物の中に入るとそこにはまた別の気配があり
もう二度と会うことがないかもしれない人とぶつかりそうになりながら
カギをあけて独房のような個室に入ると
カベには何の一節かは分からないラクガキや、
誰につながるか分からない電話番号が刻まれていて、
今も昔もここは様々な日常がひととき交差するターミナルなんだと気づかされる。

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ああ自分は今、ターミナルの只中に座っているんだと思い
スマホを開くと中学校の友達から8年ぶりの連絡がきていて
まるで時刻表や地図をみている気分になる。
合わせ味噌のようにたくさんの人の常在菌が生々しく生態系をつくってるであろう
便座という不思議なベンチの上
自分もその一部として
適度な距離感をもってその他人たちの中を風のようにひととき駆けていく。

このターミナルでのひとときが
この後の日常にどう作用するのか/したのかは永遠に分からないだろうけど
ああ来てよかったなと心の底から思えた。

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