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声明:私たちはトランス女性への差別を断固として許しません!

~トランス女性の権利と生存が十分に保障される社会を実現しよう~

https://transsabetsuhantai2022.wordpress.com/

Twitter上から現実の社会へと拡がるトランス女性への差別扇動

 2018年7月にお茶の水女子大学がトランス女性(※出生時に割り当てられた性別が男性で、女性としてのアイデンティティを持つ人)の受け入れを公表して以来、日本語圏のTwitter上ではトランス女性への差別的な言説がはびこり、差別を扇動するためにさまざまなデマが流され続けています。具体的には、トランス女性を犯罪目的で女性専用スペースに侵入する性犯罪者と同一視したり、トランス女性を男性として扱う、当事者を外見・容姿に基づいて中傷する、などといったものです。当初は「フェミニスト」を自称する人たちが匿名のアカウントでシス女性(※出生時に割り当てられた性別が女性で、かつ女性としてのアイデンティティを持つ人)の安全を口実に差別を正当化していましたが、次第に弁護士や学者のなかに自らの影響力を悪用して差別を公然と扇動したりする者が現れたり差別を助長する目的で活動する団体を作って、政党にトランス女性の権利保障を推進する政策を取らないように働きかけたりする人たちが出てきています。

 私たちが今年の7月にトランスジェンダー学習会を開催した際にもトランス女性に対して非常に差別的な考えを持つ人たちが場を荒らしに来るということがありました。私たちはこの社会におけるトランス女性の置かれた状況を悪化させるあらゆる差別的な言説と行為に断固として反対すると共に、トランス女性の権利と生存が十分に保障される社会を実現すべく訴え、闘います。

差別を正当化する人たちの言い分のおかしさ

 差別を正当化する人たちは、トランス女性の権利の保障が進むと、性犯罪を犯そうと企む男性が女性専用スペースに侵入して性犯罪を行っても自分は女だと自称すれば罪には問われなくなるなどと言います。これは全く嘘で、誰が加害者であろうと、性犯罪は犯罪であり、「自分は女なんだ」と言えば性犯罪が免責される訳ではありません。

 また、見た目が必ずしも典型的な女性の容姿に見えないトランス女性が女性専用スペースを利用することがシス女性にとって恐怖感を与えるという理由で、トランス女性が女性専用スペースを使うことを制限すべきだという主張もまた差別を正当化する人たちがよく言うことですが、人を外見・容姿に基づいて辱めたり、権利を奪うという行為自体がそもそも差別的であり、そして女性差別の文脈で繰り返し行われてきていることです。

 さらに、医学的な性別こそが正しい性別であり、トランス女性は多様な男性の一種に過ぎない、などと主張して、当事者を男性として扱おうとする人たちもいますが、誰を女と呼び、誰を男と見なすかということそれ自体が、社会のなかでの人間の性別の扱われ方と深く結びついたものであるということや、これまでの歴史を通じてさまざまな社会に多様な性別を生きる人がいたという事実を無視した、粗雑で差別的な考え方に他なりません。トランス女性当事者の生を無視して男性として扱うことは暴力そのものです。医学的な性別とは異なる性別で生きる人が矯正治療の対象とされ、監禁・虐待されてきた歴史を鑑みても許されるものではありません。

私たちの社会で日々再生産されるトランス女性差別

 トランス女性への差別言説が公の場で再生産されてしまう背景には私たちの社会がそもそもトランス女性の存在を軽視・無視することで成り立ってきたことが非常に大きいと言わざるを得ません。日本においては、①トランス女性が女性専用スペースを利用することが当然の権利として認知されていない、②生まれた時点ですべての人が戸籍上に自分の性別を一方的に記載され、公的な書類の性別記載が原則として戸籍に準拠し、戸籍上の性別を変更するハードルが非常に高い、③トランス女性への差別的な言説や行為がハラスメントとしてきちんと認定されることが少ない、そもそも差別それ自体を明確に禁止する法律も制度も未だに確立されていない、性暴力などの加害行為を受けた当事者への支援も不足している、④トランス女性当事者が自分の身体改変をするために必要となる医療を提供できる信頼度の高い医療施設が国内に極めて少なく、かつ必要な医療のほとんどが保険の適用外であること、⑤トランス女性への就労差別が後を絶たない、⑥トランス女性についてのきちんとした知識が職場や学校などできちんと共有されていない、などの問題があり、さらに国会議員などのような社会的に影響力の大きい人たちが差別を助長するようなことを公の場で発言したりすることが再三にわたり起きています。

 Twitter上での差別が深刻になる以前から、多くの当事者が差別社会の現実に苦しみ、少なからぬ当事者が自殺に追い込まれてきました。さらに入管に収容されている滞日外国人のトランス女性のような、当事者のなかでも特に一層厳しい状況に置かれている人たちの場合、施設内で適切な医療すら受けられない、日常的に性暴力を受ける、などということも起きています。トランス女性差別は日本のみならず世界のさまざまな国で深刻な問題として存在しています。日本のTwitter上での差別言説は海外のそれに影響されているものも少なくありません。また、トランス女性が殺される事件が多発していたり、政府の政策により刑罰が加えられている国もあります。こうした世界のあり方そのものを変えていくことが私たちには必要です。

差別を再生産する社会の仕組みを根本から問う~資本主義・天皇制・帝国主義戦争・排外主義~

 深刻なトランス女性差別が絶えない社会の在り方を根本から問い直す際に、私たちは家族制度というものと向き合わざるを得ません。今の社会では次世代を再生産する役割は主に家庭に押し付けられています。人々が結婚して、子どもをもうけて育てていく際に必要となる保育や家事といった労働を主に女性に無償で押し付ける形で、労働力の再生産が日々なされています。本来であれば社会全体で担うべき労働を家庭に押し付けることで政府や自治体、企業は労働力の再生産のための費用を極力かけずに済んでいます。この仕組みを維持したいからこそ、政府や独占資本は男女の性別役割分業や家族制度を良いものとして維持しようとします。公的な子育て支援が充実しないのも、非常に保守的な家族のあり方を称揚する右翼が日本の支配層のなかで大きな力を得ているのも、女性差別を解消するための政策が進まないのも、そしてトランス女性を含むセクシャルマイノリティへの差別が横行するのもこの仕組みと深く関連していると考えられます。

 さらに、私たちは近年「ダイバーシティ」などと謳いながら、一見するとセクシャルマイノリティにとってフレンドリーに見える態度を取る独占資本の欺瞞をも見破る必要があります。独占資本はマイノリティを労働者として搾取して使い捨てることは考えても、決してマイノリティへの差別の解消に取り組む訳ではありません。あくまでも資本の利益のためにいかに使うかしか考えません。実際、メディアでトランス女性を含むセクシャルマイノリティのことが取り上げられても、根強い差別の現実が語られることは少なく、ただ多様性を称えて消費するだけです。むしろ、「ダイバーシティ」が盛んに言われる際には、資本にとって利益になるマイノリティとそうでないマイノリティとに分断されていく危険性こそが考えられるべきです。

 また、日本の場合は、この国が帝国主義国家として侵略と植民地支配の道を進む際に、天皇を中心とした家族国家思想(※日本全体が一つの家族であり、天皇は家長で、日本の人民はすべて天皇の赤子であり、各々の家の家長が天皇の下で家を治める、とする思想)を政府が学校と軍隊を通して国中に浸透させ、家父長制を強固に定着させ、男が戦争に行き、女が家事と子育てを一手に担うのが当たり前のものとされました。アジア・太平洋戦争の敗戦後も天皇制が維持されたため、戦後においても天皇制は抑圧的なジェンダー規範を再生産しています。家の血脈を絶やさないために女性が子どもを産まなければならないとされる天皇家のあり方は性の解放とは真逆なものであり、憲法で天皇を「国民統合の象徴」と規定しながら、このような規範に基づく天皇制を維持してきたこの国のあり方は、当然ながら旧来のジェンダー規範に抵抗せざるを得ないトランス女性を含むセクシャルマイノリティにとっては非常に抑圧的です。

 加えて近年この国がますます推し進める日米軍事同盟強化や軍拡、中国・朝鮮敵視政策、それと並行してますます強まる差別・排外主義による労働者・民衆の分断はトランス女性差別の横行と決して無関係でないと考えられます。なぜなら、政府が排外主義を煽り、軍拡を推進する際には属性を問わずマイノリティは社会の秩序を乱す存在として迫害される危険が強まるからです。他国の例を見ても、極右やファシストが権力を獲得した場合には、大抵、セクシャルマイノリティが迫害されます。同質性の強い、「敵」に対して結束した社会では、異質排除の傾向が強まると共に、支配層に従順かつ権威主義的な人間を生み出すために保守的な家族のあり方が好まれるからです。

私たちが目指す社会

 トランス女性のなかにも当然のことながら多様性があり、トランス女性であるという点以外にもマイノリティ属性を持つ人はたくさんいます。ですので、トランス女性が自分たちの権利と生存を十分に保障される社会とは、トランス女性への差別を含むさまざまな差別が解消された社会です。また、差別解消には差別を再生産する仕組みである資本主義、天皇制、帝国主義国家がもたらす戦争と排外主義がなくなることが不可欠です。私たちAWCYouthはトランス女性差別反対を訴え、当事者の闘いに連帯し、それと共に差別のない社会を実現するためにあらゆる差別を許さず、国際連帯のもとで社会の仕組みを根底から変えるために闘います。みなさん、私たちと共に闘いましょう!

トランス女性の解放のために私たちが当面要求すること

 トランス女性差別解消のために、私たちは以下の実現を要求します。

①すべてのトランス女性の女性専用スペースを利用する権利を保障すること。
②公的な書類の性別記載を本人の希望により変更出来るようにする、ないしは性別記載自体をなくす。戸籍制度を廃止する。
③トランス女性への差別的な言説や行為をヘイトクライムとして違法化する。
④当事者が必要とする医療を適切に受けられるよう、医療施設を充実させる。また、それらの医療すべてを保険の適用対象とする。
⑤性暴力などの加害を受けた当事者への支援を拡充させる。
⑥トランス女性への一切の就労差別を禁止する。
⑦当事者のことを正しく知ることができるように、職場や学校でトランス女性についてのきちんとした知識を共有する。

賛同人・賛同団体

2021年12月20日 19時時点

団体賛同

LAG/ No Base!沖縄・琉球弧・奄美・薩南諸島の人々とつながる京阪労働者の会/ 京都市役所前座り込み行動

賛同人(52名)

(以下、公表承諾を得ている賛同者名、順不同)

門田晶/かん ゆうか/高石昭/千葉正隆/成尚旗/元井摩耶/権玲奈/北場逸人/中塚智彦/名波ナミ/Adrienne Hurley/篠原幸代/大谷良太/浅野順/すずきりょう/松田舞/ 鄭優希/ 池 允学/ 山田耕作/ 石川優/ 永谷ゆき子/ 田平正子/ 中沢浩二/ 中本愁子/山下 渉/峰わかば/菅沼亜由美/黒薔薇アリザ/ ほんまあきら/ ちょんかんす/ 森宮純/ 川村由紀/ かなたによしひろ/ 井上めぐみ(大也)/ 真綿純/ いはらじゅん/ 楯奈穂子/ 南野真左闘/ 中嶋有紀

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