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小鳥

前に小鳥を飼い始めたのは、引っ越しをしてすぐだった。

当時は専業主婦だった。
引っ越しは専業主婦には辛い。
自分の世界がすごく狭いから、社会との繋がりなんてないし、幼稚園のママたちとの関係しか広がらない。
それに引っ越した先は、前に住んでいた鎌倉と比べると、自分一人で過ごす好きな空間が圧倒的に少なかった。

だから、小鳥を飼ったのだと思う。自分の押し殺していた気持ちをそこにぶつけた。

それは、子育てに似ている。
そこにだけ集中して、手をかけた。
お陰で、キンカチョウだったけどとても懐いた。

匂いを嗅ぐととても香ばしい穀物の匂いがした。スルスルの羽に、暖かいくちばしと脚。
手のひらの中に収まってしまうほどのとても小さい体だけど、私を癒す大きな存在だった。

今はもう死んでしまって、家には娘が飼っているハムスターがいる。

昨日、ハムスターの匂いを嗅いでみた。
香ばしい匂いではなかった。でも、憎めないような、やみつきになるような可愛らしい匂いではあった。

小鳥が飼いたい。
大きな鳥でもいい。
私の周りを飛んで、可愛らしくないて、ほっぺにほっぺを擦り付けてくる鳥をまた飼いたい。

#エッセイ #小鳥 #キンカチョウ

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