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<お金が全て> NBAが12月22日に再開される「大人」な理由

コロナの影響で史上最長となったNBAシーズン終了から2ヶ月、2020年-21年シーズンが米国時間の明日開幕しようとしている。

19-20シーズンのファイナルがレイカーズによる優勝で閉幕した10月11日からすぐ、N B A幹部は翌シーズンの日程調整に励んでいた。再開日時につき様々な憶測が流れる中、最終的にはクリスマス前の12月22日に新シーズンが開幕することが決まった。NBAファイナルを戦い終えたばかりのNBA一のスター選手、レブロン・ジェームスがその開幕日が早すぎると大否定していてもだ。

レブロンの反対を押し切ってでも開幕が急がれた裏には、様々な経済的な試算がなされての結果なのである。

0)その前に

まず何故NBAが12月22日に再開するのが良いかを伝える前に、早期再開がいかにオーナーにとって苦しいかと言う点も説明したい。

過去にも何度か説明している通り、NBAの主要収入源は大きい順に、1) 放映権、2) チケット収入、3)スポンサー収入、4)グッズ収入である(最近はベッティング収入も入り始めている)。

その中、2点目のチケット収入は現在のコロナの影響から、12月22日に再開した場合も、期待できないのだ。。これは各チームの収入の40%相当であり、相当なダメージとなる。。。

つまりレブロン・ジェームスのようなスター選手のみならず、オーナー陣の中にも、コロナが落ち着き、観客を会場に入れられるようになる2月頃までシーズン開幕を待って良いのでは?という人もいたのだ。

しかし、リーグ、さらにはアダム・シルバーコミッショナーがそれを超越してシーズン再開に踏み切ったのには、今再開しないと失うものが大きすぎると判断した為だ。(そもそも2月まで待っても、コロナの状況次第ではファンを会場に入れられない可能性あるが。。)

それら失うものというのは。。。

1) クリスマス商戦という一大商機

日本では年末年始が家族団欒の時間とされ、多くのT V局がこれでもかという予算をかけて注目特番を年末年始にかけて投下してくるが、米国でのそれがまさにクリスマスなのだ。

クリスマスの日は店が多く閉まっており、多くの家庭は家に篭ってT Vを見る傾向にある。その中で行われるNBAの試合は毎年注目を集め、高い視聴率も取ることができるのだ。

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また、感謝祭(11月の第4木曜日)からその翌日のブラックフライデーを挟んだクリスマスにかけてが、米国で最も消費が激しいとされるいわゆる「クリスマス商戦」であることから、11月、12月のNBA中継時に多くのスポンサー収入が集まるのだ。

コロンビア大の客員教授で、様々なスポーツネットワークでエグゼクティブを勤めたニール・ピルソン氏に確認したところ、「その2ヶ月でリーグが得られるスポンサー収入は2 億ドル(約210億円)から5億ドル(約530億円)にも上ると言われている。コロナで経済的な大ダメージを受けているNBAは、財政面の理由から、絶対にこの収入を逃すことはできなかったのだろう。」と述べている。

なお、広告代理店大手のMedia Radar社によると、過去3年の統計を見ると、11月−12月のみでNBAは500社を越すスポンサーを例年獲得しているとの事で、この時期がビジネスの観点からいかにリーグにとって重要かがわかる。

2)オリンピックとの競合

そして、クリスマス商戦を逃す事と同じくらい厄介なのが、来年7月23日−8月8日に開催される東京五輪と日程が重なる事だ。NBAは今季を12月22日に開幕させ、ファイナル終了をオリンピック開幕前の来年7月頃と想定しているが、もし開幕が遅れファイナルという最も注目が集まるコンテンツがオリンピックと重なった場合、視聴率が劇的に下がることが容易に想像できる。

そして視聴率が下がった場合、コロナ下でも強い収入源となっているスポンサー収入(広告費用)が大幅に落ち込む可能性あり、そこを是が非でもNBAは避けたかったのだ。

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なお、米国大手スポーツメディアのESPNによると、東京五輪と日程が重複する事によるNBAへの経済的ダメージは、5億ドルから10億ドル(!!)にも上るとされている。

まとめ:

昨季突然襲い掛かったコロナという一大事により、NBAは150億ドルもの収入を失うこととなった。今季は再開こそ決まっているが、会場にファンを入れることが可能なのか、それとも昨季同様に無観客となるのかなど不確定な要素も多い。

そのため、例年にはないくらいNBAは財務状況に敏感になっており、その結果が12月22日の再開に繋がったのだ。

スポーツリーグもやはりビジネス、ビジネスありきで運営されていることがよくわかる今回の事例である。

なお、2シーズン連続で大幅な赤字とリーグ全体でなった場合、次のシーズン大きな変革が起きるだろう。その変革については次号で解説したい。。

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