称賛か侮蔑か
すぐ、思ったことが口に出てしまう。思ったときには口をついている。世間ではこれを発達障害と名づけるけれど、私のこれは、本当に常軌を逸していた。
「えっ、同い年くらいかと思ってました」
一回り以上年上の方に、年齢を教えられて、つい口をついた言葉。若く見えることがよいことなんだと思っていた。
鼻と口は常にマスクで覆われているから顔は目しかわからない。はきはきと、でも早口でない、その通る声が好ましい。
「ありがとう」
若く見てくれて、ありがとう――たしかにその人はその意味で言った。それから少し、話をした。
普段は聞けない、プライベートな話。私が聞いてもいいのかと思ったけれど、私が聞くことに意味がありそうだと思いもした。充実した時間だった。
でも、ふと思うのだ。若く見えるという褒め言葉は、"月日を重ねたようには思えない"="薄っぺらの若造に見える/とも取れるのではないか、と。後になって、後悔した。
年を重ねたように見えないと言われたら、多くの人は喜ぶだろう。年を重ねることを忌避する価値観は浸透している。でも、その人が、相応に年を重ねることを尊いと思っていたら? 私のそれは、失礼な発言だったのではないか。
わからない。私は正解がわからない。
執筆のための資料代にさせていただきます。